第7話 すべてグランディの仕業に違いない クロード視点

【クロード視点】


「いったい何があったんだ……?」


 わたしはグランディの肩を借りて、寮の部屋へ戻った。

 クッキーを食べた途端、強烈な眠気が襲ってきた。

 まだ頭がガンガンする……


 (まさかアリシアがクッキーに仕込んだのか……?)


 あのクッキーはアリシアが作ったと言っていた。

 ただアリシアが何か仕込んだとしても、いったい何のために?

 ――違う。

 わたしの愛するアリシアがクッキーに睡眠薬を仕込む……なんてあり得ない。


「グランディの仕業だ……っ!」


 絶対にそうだ。

 きっとグランディが隙を見て、催眠魔法をかけたに違いない。

 わたしからアリシアを奪うために……


 (なんて酷いヤツなんだ!)


「必ずグランディから、アリシアを取り戻す……っ!」


 あんな準男爵ごときに、王族であるわたしが負けるはずない。

 絶対に潰してやる――

 と、思っていた時。

 わたしは部屋のカレンダーを見た。


「そろそろ魔法祭の日か……」


 今は7月1日。

 2週間後、7月15日に行われる魔法祭。

 学院生がチームを組んで、魔法の腕を競い合う。


 (よし……魔法祭が使えるな)


 魔法祭で、グランディに「格の違い」を見せつけてやる。


「ふっふっふ……待っていろよ。グランディ」

 

 ★


【シド視点】


「今日は魔法祭のチーム分けを行いたいと思います。【統率者】になりたい学院生は挙手してください。あるいは、統率者にふさわしい学院生を推薦してください」


 ここは教室――


 魔法祭のチーム分けをするらしい。

 魔法祭は学院の重要行事のひとつだ。

 チームに分かれて魔法で決闘を行う。

 原作では、アリシアは攻略対象とチームを組んで優勝を目指すことになる。

 優勝したチームには、五大魔法祭の出場資格が得られる。

 五大魔法学院が集まって戦うのだ。

 その五大魔法祭で優勝すれば、【賢者の石】が手に入る。

 賢者の石は味方全員の魔力を増幅させる。

 ラスボスを倒すためには、必須のアイテムだ。


 (どっか適当なチームに入るかな……)


「誰か……統率者になりたい学院生は?」


 統率者はチームの学院生を指揮する役割だ。

 あと、チームに魔力を供給する役割もある。

 だから魔力の多いヤツが適任だ。


 (原作だと、クロード王子がアリシアを統率者に推薦するだよな……)


 すっと手を挙げたのは――アリシアだった。


 (な……っ! ここはクロード王子が手を挙げるはずじゃ……?)


 まさか、自ら立候補する気か?


「……あたしは、シド・フォン・グランディ準男爵令息を推薦しますっ!」


 (えっ? お、俺……!?)


 ざわ……っ!

 クラスメイト全員が、かなり驚く。


【準男爵令息なんかを推薦……?】

【マジで意味わからん】

【あんなヤツ、クラスにいたんだ……】


「……わ、わかりました。グランディさんを統率者としましょう。他に統率者になりたい方は……?」


 教師も戸惑っているようだ。


 すっ――

 ひとりから、手が上がった。


「クロード殿下……?!」

「わたしが統率者に立候補する。何か問題でもあるか?」

「そんな滅相もごさいません……っ!」

「ならばよし」

「……他に立候補したい人は?」


 しーん……

 誰も手を挙げようとしない。

 それも当然だ。

 なぜなら誰も、クロード王子と争いたくないからだ。

 王族と戦うなんて、貴族として絶対にあり得ない。


「……他に立候補はないようですね。このクラスからは、殿下とグランディさんが立候補となりました」

「そのようだな。では、【統率者の決闘】を行う」


 クロード王子が宣言する。

 各クラスの代表は1チームだけ。

 統率者の決闘は、クラス代表をひとつに絞る戦いだ。


「我がチームに参加する者は、挙手せよ!」


 クロード王子がそう言うと、クラスメイトたちが一斉に手を挙げた。

 俺と、ただ1人を除いて――


「アリシア……なぜ手を挙げない?」

「殿下。あたしは殿下のチームには入りません。シドさんのチームに入ります」


 (な、なんだって……?! 俺はモブだぞ……)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

★あとがき


連載決定しました!


毎日更新のモチベになりますので、フォローか★をお願いしますっ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る