第28話

 それから、どのくらいの時間が過ぎたのだろうか。グラントはようやく目を開いた。

(暗い。ここは…?)

 固く冷たい床。高い天井。そして、厚い金属の扉。

(閉じ込められている!?)

 彼は、はね起きた。

 周りに他の4人も倒れていた。

「う…。あ、グラント、ここは?」

 ラディが気がついた。グラントは黙ったまま首をふって、目で監視カメラと盗聴マイクの存在を示した。


 やがて、他の3人も気がついた。誰も怪我ひとつなかったのは、幸運だったとしか言いようがない。

「たぶん僕達は捕虜ということなんだろうね」

 グラントが言い、ディープがうなずいた。

「いずれは解放されるだろうけど、それまで待っていたんじゃ意味がない」

 すぐに処断される、そのようなことはないと5人は考えていた。

「問題は、どうやってここを出るか、だね?」

 モーリスは扉を調べはじめた。その間、ラディはさりげなく、監視カメラからモーリスの姿を隠すようにした。

「たぶん、ごく普通の電子ロックだと思うよ。開けることはできるけど、警報装置がついてるから…。あ、そうか!」

 モーリスは何か思いついたらしかった。

「むこうに開けてもらえばいいんだ」


 監視カメラにわざとうつるように、倒れるフリをしたモーリスをディープが受けとめた。

 グラントが扉を叩く。

「開けろ!病人がいるんだ。聞こえないのか?開けるんだ!」

 ステフはすばやくラディの肩に乗って、監視カメラのレンズの向きを変え、室内の様子が映らないようにした。

「OKだよ」

 モーリスは飛び起きた。5人ともすばやく扉の陰に身を寄せる。

 やがて近づいてくる数人の足音が聞こえた。


 反応があった!


「うるさいぞ!何をしている!」扉が開きはじめた。

 入ってきた最初の男が、ラディの足に引っ掛けられてつまずいたところを、グラントが組んだ両手の拳で、後ろから殴りつけた。2人目の男は、ステフの体当たりで壁に激突し、3人目はラディのヒザ蹴りとディープによって、あっけなく床にのびた。

「早く!」ラディが叫ぶ。

 5人は外に出た。モーリスが倒れた男の手からスイッチを取り上げ、扉をロックした。

「どっち?」

 ステフが尋ね、モーリスが答える。

「とにかくどこか近くのコントロールルームで、コンピュータにアクセスできれば、情報を引き出せると思う」

 5人は走り出した。


 なんとか近くのコントロールルームに潜り込むことができた。モーリスがいつも持ち歩いている小さな端末は、幸いなことに没収されていなかった。さっそくシステムに繋ぐ。

 そのとき警報とともに、

「脱走者あり!警戒せよ!繰り返す。脱走者あり!…」

 放送が流れ出した。

 入口で外の様子をうかがっていたラディが、ふりむいた。

「モーリス、急いで」

「あとちょっと。今、データを取り込んでいるから」

 やがて、基地の情報が端末に流れ込んできた。

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