第1話:服従石
視点:とある教師
「まずは……ここにきた目的はなんですか?」
私は圧を掛けながら問い詰めた。
「ぼく追われてんだ。だから逃げてきた」
「追われてきた?どうして?」
「この石を盗んだからな」
「石……?」
よく見てみると、妖狐の首には真っ赤な宝石がかかっていた。窓から入る光が反射して光っている。綺麗だ。
「そんなに高い物だったのですか?」
「いや、高いとかそういう次元じゃねぇ。これは……」
三秒間ほどの沈黙の後、妖狐が話し始めた。
「百年前に落ちてきた隕石のカケラ……
「なっ!?
ある特定の言葉を言ったあと、この石の放射線を浴びせることで、この世の全生物を意のままに操ることが出来ると言う、とても貴重な石だ。
放射線という共通点から、研究者の間では、二百年前に地球に落ちてきた隕石のカケラではないかと推測されている。
「貴方……まさかそれを使うつもりですか!?」
私は荒々しく叫んだ。
やはり、こいつが純種でも純種じゃなくても危険だ。今すぐにでもこの長銃で……
「お、落ち着けって!!逆だ、ぎゃーく。ぼくはこの石を誰かが使ったらマズイから盗んで壊そうとしたんだよ。でもぼくの力じゃ到底壊せねぇ。んでもって盗んだのもバレた。となりゃ逃げるっきゃねぇ。ってことで、はるばるここまで逃げてきたってわけだよ」
妖狐はまたもや焦りながら言った。
物陰に隠れてこちらの様子を伺っている。
「……嘘は無いですね?」
「あぁ」
また三秒ほどの沈黙が流れた。
「……分かりました。ではもうひとつ。なぜあなたは存在しているのですか?本当に純種なんだとしたら、二百年前、人間の死体と融合しているのではないのですか? 」
「いや、ほとんどの純種は人間と融合した。だがぼくは少し違う」
「違う……? 」
長銃を持つ手が少し震える。
妖狐が口を開いた。
「ぼく、突然変異なんだ」
「突然変異!?」
私は驚いてつい大きな声を出してしまった。
妖狐の毛がぶわっと逆立つ。
「あぁ。ぼくの体、どうやら突然変異みたいで、人間と融合できなかったんだ」
「なるほど……人間と融合したくてもできないから、純種のままの姿なんですね」
「そゆことだ」
妖狐は、コクコクと頷きながら言った。
……妖狐の言った事を、完全に信じることは出来ないが、現に目の前にいるのは純種そのもの。
「んで、聞くことまだあるか?」
「ええ。ひとつだけ。これに答えて頂ければ、銃は下ろしますよ。答えによっては……」
「まじで!?サンキュー!なんでも聞け!」
私は少し威圧したつもりだったが、効果は無かったようだ。
妖狐は、目を輝かせながら次の質問を待っている。
「あなた……ここに来た目的、追われているからと言っていましたよね?」
「あぁ。
「一体誰から追われてるんです?」
「……あー、聞いても多分信じねぇぞ? 」
妖狐は目を逸らしながら言った。
先程まで立っていた美しい三本の尻尾しっぽは、地面に着くまで下がっていた。
「どちらにせよ聞かせてください」
私は少し警戒を高めながら言った。
「ぼくが逃げてんのは……日本政府からだ」
「なっ!? 」
動揺してしまって、それしか言葉が出なかった。
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