第45話 幕間─竜の国に行く羽目になった件
竜の国にカルロンが行く羽目になったのは、ある意味奇跡的な出会いをしてしまったからに他ならない。
舞踏会の後、家に戻ったカルロンは何となく森を散歩したくなったのだ。
近くの森に入った時、カルロンはすぐに違和感に気がついた。そしてその違和感は囁き声となってカルロンを導いたのだ。
暫く歩いたあとカルロンは囁き声が集まる場所に辿り着いた。そこには──。
白銀の竜が寝転んでいた。時刻はまもなく夜を迎えそうなのに、違和感を覚える程の光り輝き方をするその竜にカルロンはゆっくりと近づく。
『キャルルルルルルル!!!!……ポセ、ポセレ!?ミキャル、ミイル、ミルル……ターシャ!』
何かを叫んでいるが、何も分からない。ただ羽を広げて威嚇しているだけなのだが……その声の衰弱具合からおそらくだがこの竜は身体に何か傷を負っているのではないか?とカルロンは推測する。
魔力探知をかけてみると、どうやらビンゴだったようだ。
身体からは魔力による攻撃……つまりは何者かの魔法による攻撃の跡が残っていた。
「竜狩り……確かに竜の素材は魔法の道具になることが多いが……しかし魔法界を離れてまでどんな魔法使いが来るのだ?」
普通魔法使いは冒険者世界に降りてこない。プライドやら非効率やら汚らしいからだの散々言ってだがね。
しかしまあ可能性があるとすれば、娯楽か後は……。
「──見つけたぞぉ!?ふへへへ銀ピカの竜!竜だ!ウヘヘヘヘこいつは高く売れるぞぉ?!幾らで売れるかなぁ?!……ああ?誰だテメェ?!」
──密猟か。
「ふむ、どこの誰かは知らないが……密猟とは腐っているな……魔法使いどの」
「黙れ小僧!金の前に法律など知ったことか?!……冒険者を仲介してわしの懐に入る金が少なくなるのであれば、そんなことさせないに決まっている!!……あんな汚らしい冒険者にわしの金は触れさせぬわ!」
すごいな。まるで自分が全ての上に立っていると勘違いしているようだな。
「はぁ…………『
カルロンは軽く手をかざし、密猟者の体内の魔力に混ざった自分の魔力を『帰還』させる。
それによる魔力の逆流現象が発生し……その結果密猟者は体内の魔力爆発により一瞬で意識を刈り取られた。
所詮ただの魔法使い程度であれば、これだけで瀕死にできる。まあこの魔法は相手の魔力抵抗が高ければあまり機能しないのだから、万能には程遠いな。
そんな事を考えながら傷ついた竜に向き直り、魔法で傷を癒し始める。
『ク、クルルルル?!!ギャキャ!……キャウウウ!!』
どうやらとても気持ちが良かったらしく、竜はすぐに飛び上がってどこかに飛んで言ってしまった。
◇◇◇
そんなことがあった次の日の事。
昼飯を食べていたカルロンの前に大量の竜が現れたのだ。
一頭一頭が化け物級の魔力を有しており、中には多分伝説とか言われてそうなレベルのやつも混じっていた。
そしてその中でも一際異彩を放つのが、その竜の頭の上に座っていた一人の女だった。
「ほぉ?コイツであっているのか?……ふむふむ、ヘカテーのお墨付きもある……素晴らしいじゃないか?──ふむ時間もない事だし、そこの坊主!わしらと共に竜の国に行くぞ!」
「だれ?と言うかいきなり押しかけてくるとは…………昨日のあれがまずかったのか?」
「ふむ?──ちょっと待て、そちらに行く……ほっ!」
さすがのシェファロですら、固まって唖然としていた。それぐらいには飛び抜けた魔力の女性。
それがゆっくりと俺を指さし、にっこりと笑いながら歩いてくる。
「んはははは!!!良いじゃないか、確か『キエス=カルロン』とか言ったっけ?……君を鍛えてやろう!──何、感謝するといいさこの『スカサハ』様の修行を受けれるなんて、羨ましすぎて全ての戦士が泣いて襲いかかってしまうぞ!?」
スカサハと名乗ったその女性はカルロンの肩を軽く掴むと、近くの竜に乗せる。
その動きにカルロンは反応できなかった。
「アンタ今次元を超えたのか?!……どうなっている……この一年、俺は化け物としか出会っていないのだが?!」
さすがにここまで強い奴らに出会いすぎると、自分の運命がトチ狂っているのではないか?とすら思えてくる。
「そこの確か……シェファロ?だっけ……君は連れて行けないんだ……まあここで待っていてくれるかな?」
そう言うと唖然としているカルロンを載せた竜はものすごい速度で飛び上がって行った。
ちなみに載せられていた間、カルロンは動くことが出来なかった。
──こうして唐突に来た『スカサハ』と言う人に拉致られカルロンは竜の国『エルドラド』に連れられて行ったのであった。
ちなみにであるがこの『エルドラド』は人外達の楽園であり、もちろん歴代の超越者達が集ういわばあの世に近しい場所にして……世界の狭間にあるもう一つの『異世界』でもあるのだ。
◇◇
こうして拉致られたカルロンは竜の国にて武術と戦術、さらに一緒に行ったヘカテーの手ほどきで魔術や魔法を……さらに『スカサハ』の手ほどきにより様々な特殊技能などの使い方、そして魔物の魔力の使い方から魔力操作の方法などを11ヶ月かけてみっちりと教わることとなった。
そして14歳、春。
スカーナリアの入学試験が幕を開ける一週間前にカルロンは竜の国より『帰還』したのであった。
◇◇◇
ここまでのカルロンは、独学による感覚的な魔法しか使ってこなかったのだが……ここに来て最も素晴らしきもの……影の女王『スカサハ』による寝る間も惜しんだ特訓により、魔法の本質を掴むことが出来た。
──ではここからのカルロンはどうなるのか?
ここまではただの化け物だったのだが……ここよりは本当の怪物として記録される事となる。
▽◇
───次回、学園編開幕。
『帰還』してすぐにシェファロと再開した後、何が起きたのかを振り返りながら試験の準備をすることになったカルロン。
シェファロの話によるとこの一年、魔法界は動乱の一年であったことを知る。
◇◇◇◇─────◇◇◇◇◇───◇◇◇
『やれやれ、やっと物語が進み始めるよ……まあ下積みはこのくらいにしておかないとね……いやしかしさぁ……全く力を与えた側としては見ていて楽しい限りなんだけどさ?───さすがに力の使い方を覚えた化け物って……物語ブレイカーすぎるよねぇ……全く』
『帰環』の主はそう言うとカルロンの体内に存在するブラックホールの中身を整理し始めた。
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