第26話 パキラさんとの戦い

 開始の合図と同時にパキラさんの姿が消えた。

 一体どこに!?

 ゾクッ!!

 後ろから感じる強い覇気。

 わたしは咄嗟に体を逸らながら前に出た。

 ギリギリのところでパキラさんの回し蹴りがわたしの体があったところを通過した。

 あぶなかった!!

「ほう?今ので終わらせるつもりだったんだがね」

 パキラさんはおもしろいと言いながら笑っている。

 その余裕にわたしの顔はこわばる。

 武器を持っていないと思ったけれど、どうやらパキラさんは武闘家みたい。

 武闘家は自身の体を魔力で強化して戦う。

 同じ近接戦闘を得意とする剣士と比べると一撃の威力は劣るけど、その代わりに剣士よりも戦い方の幅が広くて多様な技を組み合わせて戦う。

 相手のペースにのせられたら危ない。 

 さっきのパキラさんの速さから見るに距離を取るのは難しいと思う。

 なら!

『ソリメンタム!』『ラグネル!』×6

 荊でパキラさんの動きを封じにかかりながらわたしは距離を詰め、さらにラグネルを叩き込む。

 もちろんラグネルの切れ味は落としているから水を叩きつけるって感じだけどそれでも命中したら十分な威力があると思う。

 予想通り、複数の荊がパキラさんの動きを封じた。

 これなら!

 しかし、その時、パキラさんが挑発的に笑った。

「まさかこれが全力ってわけじゃないだろうね!」

 その言葉と一緒にパキラさんにまとわりついていた荊が弾け飛んだ。

 うそでしょ⁉で、でもまだこっちには手がある!

 しかし、パキラさんはそのまま飛んでくるラグネルを全て叩き落としてしまった。

 そんなのあり⁉

 わたしは咄嗟に後退する。

 このまま突っ込んでも勝てない。いったいどうしたら・・・

 そんなわたしにパキラさんは大きな声でこう言った。

「あんたは魔物相手に手加減するのかい?あたしを殺す気できな!なあに、あたしはそう簡単には死なないよ!」

 ええぇ

 でも、確かにパキラさんの言う通りだ。

 『イェオライト』、『ティールセント』

 ここまではこの前のダンジョン探索の時と同じ。ここからさらにわたしは『イェオライト』、『ティールセント』を重ねがけした。

 最近の練習でわかったけどどうやら身体強化系の魔法は重ねがけができるらしい。

 でもその分制御が難しくなるから、わたしは今のところ二重が限界。

 さらに『イングショット』×10、小さな竜巻の球を作り出す『タールス』×10、それを物を自由に操る魔法の『イズレート』と『並列思考』でわたしの周りにとどめておく。

 さらに『ベーガリオム』で自分の姿を見えなくする。

「いきます!」

「おう!どんとこい!」

「『レイズウィンド』!『ソリメンタム!』」

 今度は荊をパキラさんめがけて張り巡らせる。

 さらにそれに合わせて『レイズウィンド』で駆け出し、イングショットとタールスもそれに続く。

 パキラさんは飛んでくる荊をかわしながら拳の風圧で飛んでくるイングショットとタールスを叩き落す。

 そのすきにわたしはパキラさんの背後に回り込んで『イングショット』と『タールス』をたたきこんだ。

 けど。

「あまいね!」

 パキラさんがすぐさまわたしのほうに振り返って、反撃の構えに出た。

 でも!

「そのことばお返しします!」

 振り返ったパキラさんの後ろから『イングルティアス』『ソウェールビア』が襲い掛かる。

 わたしに意識をとられてパキラさんは反応が遅れた。

 すかさず『ソリメンタム』を足元に出現させパキラさんの動きを鈍らせる。

 わたしが後ろに下がるのと同時に魔法がパキラさんへと直撃した。

 爆発により煙が上がったところに光の矢が降り注ぐ。

 大丈夫、だよね?

 煙が晴れる。

 そこにはあおむけに倒れているパキラさんの姿があった。

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