第1話 創使者≪クリエイター≫ その2

 俺の住んでるアパートは築60年と年季が入った木造アパートである。ぶっちゃけ60年じゃ効かないはずだし建築基準法も守っていないような物件であった。

 そのおかげもあって家賃は激安、駅から10分でありながら月3万8千円。共栄費2千円。合わせて4万円。

 えっ、高いって?

 ノンノン、なんとこの物件3LDKもあるのだ。

 しかもリビングは10畳、3つの部屋も6畳ある。トイレ風呂別でトイレは水洗、しかも洋式のYOYO。下水も通っている。(田舎だと下水じゃなくって汲み取りの所もある)

 都市ガスが通っていてお風呂も追い炊き機能付きだ。

 光回線も完備。

 外観こそぼろいが中身はキレイである。

 それでこのお値段。なんかあるだろと思うだろ。

 もちろんあります。

 建築基準法を完全無視してリホームして元々2階に6部屋あったのを2部屋に魔改造したらしいのである。

 もちろんそんな物件普通の仲介業者が扱えるわけが有らず、普通の入居者は居ない。かく言う俺も前にバイトしていて知り合ったで紹介して貰たのだ。

 大丈夫、そんな物件でも住めば都だ。


 今その都に暗雲が立ち込めている。

 局所的にリビングにある食卓に座った俺の頭上だけに。

 この家は水場以外は畳敷きなので普段は座椅子に座っている。

 が、それは2脚しかなく、今は客人を入れて3人いるので俺の分は譲ってしまった。ので俺は畳にそのまま座っている。もちろん正座で。

 食卓に俺と同居人が並んで座り向かいに(招かれざる)客人が座っている。

「伯父さん、お茶はもらえないのですか?」

「あぁすまない」

 コトリと帰りに買ってきた飲み物を3人分食卓に並べた。

「……ワタシ未成年ですよ」

 何とは言わないが500㎖缶をじっと見て言われたので目線を逸らしつつ。

「ウチには今はノンアルの麦茶は無いんだ」

 あくまで礼儀としてお茶を出しただけでそれを飲んだかどうかを表現する必要はないだろう。だから問題ない。

「それで貴方は何者ですか?」

 向かいの女は無表情に隣の同居人を問い詰める。

「こいつは……」

「ワラワか?ワラワは旦那様のロリ奴隷じゃ」

「サラリとアニメの吸血鬼キャラみたいなこと吹いってんじゃない!」

「失礼、キメ顔で噛みました」

「サラリと混ぜるなよ!」

 幼女と童女と少女の原作でもあった禁断のトリプルアイス。ぱないの!

 バン!と食卓が平手で叩かれた。

 ヤバイ、怒らせた。

「……わざとでしょ」

「噛みまみた」

「ノルのかよ!」

 まあなんだかんだ言っても姪っ子で血がつながっている上に同じ趣味してるからな。

「それで旦那様よ、こ奴は誰か先に紹介してくれんか」

「いえ、まず貴方の紹介から」

「確かに自己紹介をしなきゃならんよな」

 しかし順番はどうするか。この様子じゃお互い譲るのは難しいか?

「良し、ここはワラワからしてやろうではないか」

 おっ、珍しく寛容じゃないか。

「いえいえ、ここはお客であるワタシから」

「いやいや、ワラワじゃ」

「ワタシです」

 結局張り合うのか。

「年長のワラワが先じゃろうて」

「あら、どう見てもロリ奴隷ではないですか」

「ハッハッハッ」

「ふふふ」

 2人共笑っているがこれは……

「~~~~~~、分かった。ここは俺から自己紹介しよう」


「「どうぞどうぞ」」


 お約束。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る