チェルボ

 何日か後の昼。


例の空間で大和の修行をしていた時、エレジデンから連絡がきた。


どうやら俺たちが選んだ魔法書の中から三冊に使用許可が下りたらしい。


俺たちは五冊の魔法書を選んでいたので二冊断られた形だ。


「何が選ばれたんですか?」

大和が興味津々で日向に訊いた。


「精霊的なやつを召喚するやつと魔法を反射するやつと魔法使う時に魔力の消費を抑えるやつ」

「毒のやつと爆破のやつは駄目だったんですね」


「まぁ危ないしな。あの二つは正直自爆みたいな使い方しかできんやつやし」


「先生相手なら自爆でも何でもしないと勝負にならないと思うでゴザルが、致し方ないでゴザルな」


「三冊許可してもらえただけでもありがたいですね」

「そうでゴザルな」



 俺たちは荷物をまとめて旅館を出た。


「よし。んじゃ大図書館にテレポートするで」

「今回もマーカーを置いてきたんですか?」


「いや、あの場所はデカい魔力の塊みたいなもんやから」


「図書館自体がマーカーの役割を果たすんですね」

「せや。ほないくで」


日向はいつものように指パッチンをした。



 大図書館にテレポートした後、エレジデンから魔法書を受け取った。


エレジデンは俺たちに

「本当は五冊すべて許可を取りたかったんですけど、申し訳ないです」

と謝った。


「いやいや三冊も許可取ってくれたんや。十分やで」

「そう言ってもらえるとありがたいです」


大図書館を去るときにエレジデンは

「では、頑張ってください勇者クインテット様!」

と笑顔で見送ってくれた。



 大図書館を後にした俺たちはチェルボに向かうことにした。


大和が不安とも期待ともいえないような絶妙な表情で言った。


「いや~なんか怖いですね。チェルボってコザクラさんの故郷で結構危ない感じの国でしたよね?」


「うむ。いきなり襲われても不思議じゃないでゴザルからいつでも戦えるようにしておくでゴザルよ」


「はーい。そういえばチェルボって結界がないんでしたっけ。今回は何を目印にテレポートするんですか?」


「チェルボの国民って基本的に魔力量が多いやつばっかりやから結界がなくても国民が目印になるんや」

「すごいっすねー」


「ヴォルペからここに来た時と同じように、一回チェルボの近くにテレポートしてから二回目で国内にテレポートするんやけど、どないする? すぐにチェルボに入ってもええけど、ちょっと散策してからでもええで」


「それって魔物に喧嘩売ってもいいって意味ですよね?」

「せや」


「もちろん散策します。雪辱を果たしてやりますよ」


「お、やる気やな。まぁでもこの前の犬っぽい魔物はチェルボの周辺にはおらんと思うけどな」


「もしかして魔物って気候によって生息地が違う感じですか?」


「なんでか知らんけどこのゲートからはこの魔物が出る、みたいなのがあるんや。チェルボ周辺っつったら、そうやな~。なんがおったっけ? 確か鹿みたいな魔物がおったと思うけど」


「鹿ですかー。まぁいいや。頑張ります」


ということで日向の空間魔法でチェルボの近くにテレポートした。

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