デート明けの学校
週が明けて月曜日になった。俺は昨日の九条さんとのデートの余韻がまだ抜けきらずにニヤケ顔で学校に登校する。昨日のデート…楽しかったなぁ。
「おい…極道の奴がニヤついてるぞ…」「ヤクでも決めてるんじゃねえのか?」「抗争中の組を潰せたから機嫌がいいとか?」「経営している風俗の売り上げが良かったんだよきっと」「好みのカキタレでも見つけたんだろ」
相変わらず周りの連中は俺の顔を見てある事ない事言ってくるが…今日の俺はそんな事は気にならないくらい気分がよかった。
自分を認めてくれる、愛してくれる存在がいるってのはこんなにも精神的に安定する物なんだという事を改めて思い知った。
俺は教室に入ると自分の席へ向かった。先に登校していた茂雄が俺の方を向いて挨拶してくる。
「おう、おはよう! …どうした? 今日はえらく機嫌がいいじゃねぇか? 目の下のクマも無くなってるし、例の件…解決したのか?」
「ああ、おかげさまでな。で、その件で報告があるんだが…今ちょっといいか?」
俺は鞄を机の上に置くと茂雄を教室の外に誘い出した。
「別に構わんが…教室の外に行くほどの事なのか?」
「頼む。他の奴にはあまり聞かれたくない話なんだ」
「…分かった」
茂雄はそれを了承し、教室の外に着いて来てくれた。
…昨日のデート後に九条さんとメッセージアプリで俺たち2人が付き合っている事を学校で他の人に言うべきかどうかを相談したのだが、俺は近しい友人にだけ伝える事を選択した。
理由は学校の人気者である九条さんと嫌われ者の俺が付き合ったと他の人が知れば騒ぎになると思ったからだ。
彼女は「極道君の誤解は私が解くから大丈夫!」と言っていたが、それでも彼女に言われのない誹謗中傷が飛んでくるのは容易く予想できた。
俺の方に誹謗中傷が飛んでくるのはまだ我慢できるが、彼女の方に飛んでくるのは耐えられない。また怒りが爆発しそうになる。なので俺たちの関係を公表して彼女が無駄に誹謗中傷を浴びる必要はないと判断した。
それとは別に友人である茂雄にはこの件で相談に乗って貰った恩がある。彼にすらこの件を黙っているのは道理に反すると思ったし、九条さんの方も俺の事を仲の良い友達に相談していたようだ。
そういう理由から俺たちはお互いに近しい友人にだけ付き合っているのを報告する事で合意したのである。
俺は教室を出て茂雄を人気のない廊下に連れ出す。そして誰もいない空き教室の前まで来ると彼の方を振り向いて話を始めた。
「それで、話を聞かせて貰おうじゃないか?」
「実はな…前にお前に相談してた子供会に来ていたキッズのお姉さんの件なんだが…俺たち付き合う事になった」
俺がそう伝えると茂雄は最初きょとんとした顔をしていたが、すぐに意味を理解したのか笑顔になった。
「おめでとう! 友人として祝福するよ! そうか…お前にもついに俺と身内以外に内面を理解してくれる人が現れたか! 良い事じゃねぇか!」
茂雄は素直に祝福してくれた。嫉妬するでもなく、まるで自分の事のように喜んでくれる。
「で、どんな人なんだ? 写真とかないのか? 教えてくれよ」
だが問題はここからだ。その相手が誰かというのを伝えておかなくてはならない。
「あのな…驚かないで聞いてくれよ」
「??? ああ」
「その…俺が付き合っている相手ってのはな。実は…九条さんなんだ」
「く…じょう? へぇ、その人『くじょう』って名前なのか。聖女様と同じ名字だな。親戚とかか?」
「だからその聖女様なんだ」
「え…?」
「俺が付き合ってる相手ってのはその九条天子さんなんだ」
「はぁーーーーーーーーーーーーーー!?」
茂雄の大声が廊下に響いた。廊下の向こう側にいた生徒が何名か「何事だ?」とこちらの方を振り向く。
…人気のない所で話して良かった。もし教室で話していたら俺たちの方に視線が集まっていただろう。
「えっ? ちょ? あっ? へっ? …マジ?」
彼はしどろもどろになりながら俺の顔を真顔で見つめて来る。当然の反応だ。学校の聖女様と嫌われ者の俺が付き合っているというのだから。
俺は彼の目を見て真剣な表情をして頷いた。
「ほ、本当なんだな…。善人がこんな事で嘘をつくとは思えねぇし。でも確かに聖女様は人を見かけで判断しないイメージがあるわ」
「ああ、本当だ」
俺は昨日デートした時に九条さんと撮ったツーショット写真を茂雄に見せた。
「信じるよ。てかお前らもうデートしたのかよ。見かけによらず行動が早えな」
「うっ…まぁな///」
「でもそれだけ仲が良いって事か。さっきも言ったけどもう1度言うよ。おめでとう! せっかく自分の事を理解してくれる女性を見つけたんだ…大事にしろよ! 泣かしたらガチで殴るからな!」
茂雄はそう言って笑った。九条さんと付き合っている事を彼に報告して受け入れてくれるかどうか不安だったが、彼は納得して祝福してくれた。
あぁ…俺は本当にいい友人を持った。
○○〇
その日の放課後、俺は九条さんと一緒に帰宅していた。
「へぇ、じゃあ九条さんの友達も受け入れてくれたんだ」
九条さんも俺たちが付き合っている事を近しい友人に話したらしい。そしてその友人も俺たちの仲を無事受け入れてくれたようだ。
「うん、あの娘たちなら絶対に受け入れてくれると思ってた。それでね極道君、ちょっと提案なんだけど、明日の昼休みにね…」
「えっ?」
俺は彼女の提案に驚いた。
◇◇◇
さて、彼女の提案とは一体何なのでしょうか?
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