第32話 晴人の愛の深さと強さ Ⅰ

「晴人さん、キリマンジャロを持参しましたので、れますね。」


「うん。」


「晴人さん、ロンバルト国王陛下と女王陛下が長期滞在をして、ゆっくり考えるようにとオオせですので、そのように致しましょう。」


「うん。」


 それから1週間が過ぎ、10日が過ぎた。晴人には何の動きもなかった。そして、ちょうど2週間目になった。遂に晴人が動いた。ロンバルト国王陛下と女王陛下からヴァイオレットの外出の許可を取り付けた。


 すると、城の大きな中庭が大騒ぎになっていた。


「ギャァァァァー!ウワァァァァー!」

「ウワァァァァー!ギャァァァァー!」


「虎の化け物だ!虎に羽の生えた化け物だ!すぐに近衛兵を呼べ!」


「城が、城が破壊されるぞ!軍隊だ、軍隊を呼べ!龍よりも大きな化け物だぞ!」


 しばらくすると、2百人ほどの近衛兵たちが剣を抜いて、晴人タイガーを取り囲んでいた。


「あのお~、晴人タイガーです。我がアルジに呼ばれて飛んできました。」


 近衛兵の隊長が驚いて叫んだ。

「しゃべった!しゃべったぞ!白い羽が生えた大きな虎の化け物がしゃべったぞ!」


「あのお~、大和晴人国王陛下の部下で、晴人タイガーといいます。そんなに怖がらないで下さい。何もしませんから。それより、大和晴人国王を呼んでください。」


 この大騒ぎに、セオドア上皇とエリス上皇后、ソフィーナ、ロンバルト国王陛下と女王陛下が駆けつけて来た。


「なんだ、晴人タイガーじゃないの。どうしたの?」


「我がアルジから呼び出されました。このままの大きさで来るようにと。」


「みなさーん!ご安心ください。晴人国王の部下で晴人タイガーと言います。見かけは大きな羽の生えた大きな虎ですが、彼も『天』の使徒ですよ。」


 そこへ、ヴァイオレットと手をつないで走ってくる晴人の姿が現れた。


「みなさーん!私がヨロイ姿になるのでカブトと背中の甲冑カッチュウの模様を見て下さい!」


「白い文字で丸に十文字のマークが入っていますでしょう!晴人タイガーの大きなヒタイを見て下さい。黒い文字で丸に十文字のマークが入っていますでしょう。私の部下は死の『頭蓋骨の森』の30万の部下たちです。人に危害は加えません。彼らが、『万里の長城』も『大型貨物列車』の線路も造ってくれたんですよ。彼らにも

体の目立つところに白か、黒い文字で丸に十文字のマークが入っています。それは全て私の部下だと確認してくださいね。」


「おいおい、マジかよ。死の『頭蓋骨の森』の30万の魔獣や魔物が部下かよ。」

「晴人国王は、列車の開通式でもそう説明していてじゃねえか、ちゃんと聞いておけよ!7か国軍事同盟の最高最強の部隊なんだぞ!」


「晴人タイガー、伏せをしてくれ、首筋に乗りたい。さあ、ヴァイオレットさん、手をつないで。」


「は、はい。」


「着替えのバッグはもったの?」


「はい。」


「じゃあ、次元収納ストレージにいれちゃおう。」


「ヴァイオレットさん、晴人タイガーから振り落とされないように、僕の腰のベルトを握っておいてね。ロンバルト国王陛下と女王陛下、セオドア上皇とエリス上皇后、ソフィーナ、ヴァイオレットさんを連れて、1週間ほど旅に出てきます。Hなことは致しませんので、ご安心ください。」


 その最後のセリフを聴いていた近衛兵やメイドさんたち、軍の兵隊たち、セオドア上皇とエリス上皇后、ロンバルト国王陛下と女王陛下は思わず噴き出してしまい、大爆笑となった。

「ワハハハハ!ワハハハハ!ワハハハハ!ワハハハハ!ワハハハハ!ワハハハハ!」


 その場で一人、笑わなかった者がいた。ソフィーナだった。


「ねえ、晴人さん、どこに行くのよ!」


 すると晴人は、大きな声で仕草も入れて、アッカンベーをしたのだ。

「アッカンベー!」


 起こったソフィーナは、晴人に言った。

「晴人さんのバーカ!バーカ!アンポンタン!」


 二人のやり取りに周囲の者たちはまたもや大爆笑となった。


「では、行ってきまーす!晴人タイガー、レッツゴー!」


「バサッ、バサッ、バサッ、バサッ、バサッ、バサッ、バサッ、バサッ。」


 空高く舞い上がった晴人タイガーは晴人とヴァイオレットを載せて、西の方角へ飛んで行った。


 5分ほど上空を飛んでいると、ヴァイオレットが晴人の腰のベルトではなく腹部に抱き着いて来た。晴人は内心、「うわぁ、まだ16歳なのになんでこんなに胸が大きいんだ。あまり押し付けてこられると困るなあ。」と思った。すると、ヴァイオレットの腰と足が小刻みに揺れ出した。


「ヴァイオレットさん、どうかしましたか?あのお、おトイレに行きたいです。」


「アハハ。いいですよ。一度、地上に降りましょう。晴人タイガー、地上に降りてくれ。」


「ハハーッ。」


「よし、ここらへんが安全そうだな。ヴァイオレットさん、降りていいよ。待っているから。」


「晴人さん、茂みの中でおしっこをするのが初めてで怖いです。」


「分かった。俺が見張りをしておくから。安心していいよ。」


 その5分後、

「キャー!キャー!キャー!」

 ヴァイオレットの悲鳴を聞いて晴人が駆けつけると、ヴァイオレットが指をさしていた。よく見ると、青ヘビが自分の体の5倍以上のカエルを飲み込んでいる最中だった。

「アハハハ、アハハハ、ヴァイオレットさん、怖かったの?」


「はい、こんな怖いものを見るのは初めてです。ソフィーナさんは、怖がらないのですか?」


「うん。あいつなら、ヘビのノドを棒で突っついて、カエルを助けるよ。」


「へえ~、ソフィーナさん凄いですね。」


「さあ、行こうか?」

 すると、ヴァイオレットは、晴人のソデを引っ張った。


「晴人さん、私は高所恐怖症なんです。だから、10mの高さで飛んでもらっていいですか?」


「アハハ、アハハ。いいよ。正直者でヨロしい。これから何でも正直に言うんだよ。」


「あのお~、ソフィーナさんって、いつも高い所を飛んで怖がらないのですか?」


「ソフィーナはね、晴人タイガーが10kmの高さで、猛スピードで飛んでも、平気だし、晴人タイガーに指示を出して、魔物や魔獣狩りが得意なんだよ。戦争になったら、晴人タイガーに乗って、敵をやっつけると意気込んでいるよ。それにねえ、キムジョン帝国が侵略戦争を仕掛けて来たときに、俺が一瞬で敵を斬り殺して、ヴァイオレットさんを救っただろう?あの剣技は、薩摩示現流というんだけど、ソフィーナも習い始めたんだ。セオドア上皇とエリス上皇后とまだ赤ちゃんの妹を自分が守るんだって。」


「ソフィーナ女王様は、とってもお上品でお優しい方なのにとても心の芯が強いのですね。」


「うん。そうだよ。正義感も人一倍強いしね。」


「それじゃあ、行こうか。」


「はい。」


「晴人タイガー、高さを10mにして飛んでくれないか。」


「了解いたしました。」


「ヴァイオレットさん、高さは10mにしたからね。それから、もっとスピードをあげてもいいかな。」


「はい、でも私が『ストップ』と叫んだら、スピードを緩めて下さいますか?」


「うん、いいよ。」


「じゃあ、晴人タイガー、少しずつ、少しずつスピードをあげてくれるか?」


「了解いたしました。」


 その30秒後、

「ストップ!」


「ヴァイオレットさんは、高所恐怖症だけじゃなくて、スピード恐怖症でもあるんだね。」


「そうみたいですね。ごめんなさい。」


「謝る必要なんてないよ、気にしない、気にしない。」


「森の皆が待っているから、晴人タイガーに乗ったままで転移しよう。」


「じゃあ、晴人タイガーよろしく。」


「はい、では転移したします。空間転移!」


「スッ。」


「パッ。」


「ギャァァァァー!ギャァァァァー!ギャァァァァー!」


「ああ、もう泣いちゃっているよ。ヴァイオレットさん、ここはねえ、死の『骸骨の森』なんです。」


「エエッ!し、し、死の『骸骨の森』なんですか!怖い、怖い、怖い!」


「大丈夫です。全部私の部下なんですよ。私の家来です。僕が『天』の使徒だから、死の『骸骨の森』の魔獣も魔人も全部、天の使徒に転身させたのです。怖がらないで下さい。彼らが、『万里の長城』も『大型貨物列車』のレールも鉄橋も造ってくれたんですから。怖がったら失礼ですよ。さあ、挨拶アイサツしてください。」


「み、み、皆さん、こ、こんにちは、ロンバルト共和国のヴァイオレットと言います。よろしくお願いいたします。」


「ハハーッ。」


「こちらこそよろしくお願いします。」


「おい、皆、『万里の長城』も『大型貨物列車』の作業も済んで、腹が空いているだろう?俺の故郷フルサトの惑星でいちばん美味しい黒毛和牛の肉とビールなどの酒をお前らの次元収納ストレージに入れておいたから、また、今夜から宴会しろよ!

お前らは、物体再現魔法を使って増やしてから食べる習慣を身に付けろ!だから、直ぐに次元収納ストレージが空っぽになるんだぞ。黒毛和牛の肉は、必ず物体再現魔法を使って増やしてから食うんだぞ!いいな!」


「ハハーッ。」


「大和晴人国王陛下に献上したいものがあります。極上の鹿をつかまえて、次元収納ストレージに入れてあります。ソフィーナの姉さんは、さばくのがとてもうまいのでそのまま持ってきました。ささっ、どうぞ。」


「おおーっ、これは上肉だなあ、晴人ハイオーク。ありがとうな。」


「あれれ、ソフィーナの姉さんはいないのですか?」


「ああ、今日は急用があって来られなかった。」


「次元収納ストレージに入れて、ソフィーナに晴人ハイオークからのプレゼントだと言って渡しておくからな。本当にありがとうな。」


「ハハーッ。」


「おい、解散した途端にどんちゃん騒ぎか!ちゃんと物体再現魔法を使って増やしてから肉を食べるんだぞ!」


「それでは、以上で、解散!」


「スッ。」

「スッ。」

「スッ。」

「スッ。」


「晴人国王陛下、今、私は夢を見ているのでしょうか?」


「ヴァイオレットさん、夢じゃないよ。現実だよ。」


「ほら、ここは、俺の秘密基地のログハウスだよ。」


「キャアアアー!キャアアアー!キャアアアー!晴人さん、助けて、晴人さん!」


「何だ、シカじゃないか。ソフィーナは、戦争で生き抜くには、野生の動物も食べないといけないからって、俺に動物の解体の仕方を学んだんだよ。いま、シカの毛皮を全部はいでいるところ。これから、内臓を取り出すことを教えるから、そのナイフを2本持って来てくれるかな?」


「・・・。」


「ナイフをって、あれ?」


「晴人国王陛下、怖くてできません。申し訳ありません。」


「ヴァイオレットちゃん、このチェアーに座ってごらん。」




はてさて、この話の展開はどうなっていくのでしょうか?第33話をお楽しみに。



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