病院に行ってもらう

僕は、誠一に病院に行ってもらう事に決めた。

それから、誠一がやってくる度に引っ掻いたり、噛みついたりしたのだけれど……。

誠一は、全く病院に行ってはくれなかった。


あれから、二ヶ月が過ぎて。

沙羅ちゃんと誠一は、一緒に住み始めた。

最初に嗅いだ時よりも匂いが濃くなっているのを感じる。

早くしなきゃ!

手遅れになる。


僕は、必死だった。

必死で、教えてあげたのに……。

沙羅ちゃんと住んで二週間。


僕と誠一が留守番をしている時に事件が起きた。


「おはよう、メメ」


誠一は、僕を撫でようとしてバタンと倒れたのだ。

僕は、何もしてあげられなくて。

ひたすら、鳴き続けていた。


誠一が倒れてから、30分が経った。

ガチャと玄関の扉が開いて、沙羅ちゃんが走ってくる。

僕は、沙羅ちゃんに鳴いて訴えて。

沙羅ちゃんは、すぐに救急車を呼んだ。

二人は、救急車に乗って行ってしまい。

僕は、ひたすら待つしか出来なかった。


《お腹減ったなーー。誠一は、どうなったかな?息はあったから大丈夫だ》


「ただいま」

「ニャーオ、ニャーオ」

《沙羅ちゃん、誠一どうだった?》

「お腹すいたよね。今、ご飯いれるね」

「ニャーオ、ニャオ」

《ご飯なんかいいから。誠一は、どうなったの?》

「はい。メメどうぞ」


沙羅ちゃんは、いつもの缶詰を入れてくれる。


「メメ……わかってたの?」

「ニャオ?」

《何?》

「誠一さん。余命二ヶ月だって」

「ニャオ、ニャーオ」

《だから言ったのに》

「誠一さんがいなくなったら、私。生きていけないよ」


沙羅ちゃんは、大きな声で泣いている。

僕も悲しくて沙羅ちゃんに寄り添った。

やっぱり、初めて会った時に病院に行ってたら大丈夫だったんだ。

誠一は、大丈夫って行かなかったから……。


どうする?

どうする?

僕に何が出来る?


何が出来るかわからない。

だけど……。


月明かりに照らされながら、沙羅ちゃんは眠った。


「猫神様……どうか僕の寿命を誠一に分けてください。お願いします」

《お前の寿命など分けた所で人間は長生きしない》

「じゃあ、じゃあ。どうすればいいですか?誠一がいなくなったら、沙羅ちゃんは生きていけないんです」

《そうじゃな。お前のそれをくれたらわしが手伝ってやってもいいぞ》

「これですか?これがなくなったら、僕は……」

《可愛がってもらえないか?》

「だって、沙羅ちゃんは僕の」

《じゃあ、この話しはなしだ》

「わかりました。わかりました。差し上げます。だから、どうか誠一を助けて下さい」

《よかろう》


猫神様が、本当にいるとは思わなかった。

でも、よかった。

これで、誠一が助かるんだ。

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