人を待つ

 病室のベッドから窓の外を見る。

 ガラス窓に仕切られた外の世界は、今迄通りの普通の様子であった。

 私は「ガラス世界」から隔絶された現状に、一抹の寂しさを感じていた。


 これまで、一生懸命に仕事を働いてきた。

 仕事で家族を蔑ろにしないように、努力もしていた。

 休日には「自分の為」の余暇も持っていた。

 生きている事に満足をしていた。


 ある日、ちょっとした体調不良が私を襲った。

 気にせずに日々を過ごしていたら、次第に悪化していった。

「もう無理だと」感じて病院へ行ったら、そのまま入院になった。

 今、私は病室のベッドの上で家族を待っている。


 窓の外には病院の玄関が見える。

 その出入りする人々それぞれに人生がある。


 救急車が到着した後に、しばらくしてタクシーから慌てて降りて駆け入る人達。

 きっと事故か急患で救急搬送された人の関係者だろう。

 無事だと良いが……


 赤子を抱いた男女の二人組がタクシーに乗る。

 これから家に帰って盛大にお祝いをするのかな?

 お誕生おめでとう!


 多くの荷物を持って、家族らしき集団が玄関を出る。

 みんな笑顔で話している。

 退院して家族で食事会かな?

 退院おめでとう!


 私も、あの家族と同じようにここ病院を出て行きたい……

 その為にも、先ずは家族と会って話をしなければいけない。


 私は病室のベッドの上で家族を待っている。

 ガラス窓に仕切られた外の世界は、今迄通りの普通の様子であった。

 早くあの世界へ戻りたい……


 外を見ると、肩を落とした婦人に若い男が介抱をして歩いている。

 きっと、辛い事実を知らされたのだろう……

 今は辛い時だが時間が解決してくれるはずだ、頑張って生きて下さい!



 私はを窓から見送る。


 私の家族は、まだ来ていない……




 END?

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