コミュニケーション技術

僕たちの評価は最底辺だった。ただ後輩達を楽しませたかったのに。

『公共の場で野球拳する人なんて初め見ましたよ。こんな人たちが私の先輩だなんて』

凄い冷たい視線だ。

『でもね、新しい環境にこれから入るから緊張してると思って僕たちは、和むだろうと思ってやったんだよ?』

『・・・』

やめて。そんなゴミ虫を見る眼で見ないでね?あと無視も良くないよ?


『そういえば雪。友達はできたのかい?』

上手く話を逸らしてくれたか兄よ。

『うるさいな。仲の良い子はいるもん』

『そ、それは男なのかーーー!?』

エイタ少し落ち着こうよ。

『ば、男の子の友達だなんていらないよ』

『雪ちゃーん。誰と話してるのー?』

教室の前の方から声が聞こえる。女の子声だ。

『あっ、百合ちゃんだ』

百合(ゆり)ちゃんと言うらしい。この子が友達なのかな?

『この人達は、バカ兄貴とバカな男ども。っでこっちの女子の先輩達は未來さんと彩さん。優しい先輩だよ』

ひどいよ。僕たちをバカな男どもだなんて。もっと良い紹介があるでしょ。

『そんなバカとはひどいよ。僕たちの事もちゃんと先輩として扱ってよ』

『変態バカは黙っていて下さい』

よりひどくなった。


『雪ちゃん。先輩達に失礼だよ?あんまりひどい事言うと嫌いになっちゃんよ?』

『ご、ごめんね!!百合ちゃーん!嫌いにならないでーー』

『よしよし。ちゃんと謝れたね。雪ちゃんの事嫌いにならないよ。ほら、ハンカチで涙拭いて』

『、、、ありがとう』

ちゃんと反省してる。百合ちゃんって子すごいな。

『雪、ほらお兄ちゃんの胸でいっぱい泣いて良いんだよ』

『バカ兄貴は引っ込んでて!!』

雪ちゃんが涙を拭き終わった。

『百合ちゃん。ハンカチ洗って返すね』

『えっ?いいよそんな事しなくても』

『ううん!ちゃんと洗って返すから!』

ムキになってるな。普通に返せば良いのに。でもなんかちょっとあの笑顔気になるな』

『私、ちょっとお手洗い行ってくるね』

小走りで教室を出て行った。

『もー雪ったら気を遣わなくても良いのに。まぁ良いか。そう言えば先輩達は二年生なんですよね?今度介護の勉強とか教えてください』

『良いわよ。私達でよければ教えてあげるね』

女子トークが始まった。でも、雪ちゃんの事気になるな。

『涼。なんか雪ちゃん、、、』

カントも気が付いてたみたいだ。僕とカントはコッソリ教室を出た。

教室の横にある階段の踊り場に雪ちゃんが居た。

『あっ雪ちゃ、、、ん!?』

カントに手で口を塞がれた。

『ちょい待ち。なんか様子が、、、変だ』

うん?様子が変?どこが変なんだ?確かにトイレに行くって言ってたのにここにいるのは変だけど。普通な気がする。

『はぁ、、はぁ、、、』

なんか息上がってるし顔も赤いけど体調悪いのかな?ハンカチに顔時折り埋めてるけど。

『なぁ、涼あれってもしかして、雪ちゃん、、、』


『百合ちゃんのハンカチ、、、めっちゃええ匂いーー!堪らないよー』

『雪ちゃんってもしかしてレズってやつじゃないか?』

『なんで、百合ちゃんってあんなに可愛いのーゆりちゃん好き好きー!!』

、、、兄がシスコンで、妹はレズ。この兄妹ヤバい。

僕たちは見つからないようにコッソリ教室に戻った。


ー僕とカントはこの事は触れないようにしようと決めたー



教室に戻ったら未來と彩ちゃんが百合ちゃんに介護授業について話をしてた。

『一年生が始めに習う介護って確か。(コミュニケーション技術)だよね?』

『はい。確か、小野先生の授業だったと思いますよ』

コミュニケーション技術か。確かに一年生が習う初めの授業だったな。

介護を学び資格を取ってから、現場でも始めに行う技術だ。施設の利用者さんとコミュニケーションを取る事で、信頼関係を築かないと援助も円滑に出来ない。他にも、その人の情報を集めてニーズを見極めて介護目標の立案にも繋がるから介護士として最も大切な技能と呼べる。

ただ、利用者さんに一方的に話をするだけではダメだ。

コミュニケーション技術には三つ押さえておくポイントがある。

傾聴、共感、受容の三つだ。

傾聴は、簡単に言えば聞き上手になるって事だ。

共感は、利用者さんが話したことに頷いたり相槌を取る事で、話をしっかりきくことだ。

受容は、利用者さんの現在の状況をありのままに受け止め、そこから新たに対応を考えていく。利用者さんの言動に介護士も理解できない事を頭ごなしに否定しないで、介護士の視点から(何か理由があっての言動なのだ)ということを意識する事だ。

他にも、コミュニケーションには様々な技術がある。たとえば目が見えない方、耳が聞こえない方、発語が上手く出来ない方、発語出来ない方など様々な利用者さんがいるから、その人に合ったコミュニケーションを取る事が大切である。

僕も意外と覚えてるものだな。実習に行くからいい復習になったな。


『なるほど、初めに習うのはコミュニケーション技術なんですね。難しそうですけど介護福祉士になるには必要なんですもんね。しっかり覚えなきゃ』

百合ちゃんは真面目だな。



『お待たせ、百合ちゃん』

『あっ雪ちゃんおかえり。遅かったね。体調悪いの?』

『う、ううん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう』

雪ちゃんもなんとか帰ってきたみたいだ。まだ少し顔が赤いけど気にしない。

『さてと、じゃあ俺らは教室に戻るか。次の授業があるからな』

カントが提案してきた。確かに、次の授業が始まるしね。

『雪。帰りはお兄ちゃんと帰ろうね。校門で待ってるね』

『百合ちゃんと帰るからバカ兄貴は一人で帰って』

『うー。雪が冷たいよ。これはもしかしてこれはツンなのか!?』

『いや、あれはただ単に嫌われてるだけだろ』

『そんなわけないだろーーー!!』




さて、バカは放っておいて自分の教室に帰りますか。


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