第9話 問題を起こした罰


「ここであった事はもちろん、秘密にしておいてもらえると助かるよ」


なんでこんなところにフレイヤ1人でいるのか知らないけど、俺がひとりでここにいるのもあまり知られたくは無いことである。


そして、モンスターを倒してフレイヤを助けたことも。同じで誰かに知られたくない。


「全部秘密にしないとだめですか?」

「全部だな」

「なにか聞かれたりした時は?」

「適当に誤魔化してくれるといい」


俺はそう言いながら歩き出す。


「ここは危険だし帰ろうか」


そう言うとキラッキラの目を俺に向けてくるフレイヤ。


「はいっ!」



王城まで戻ってきた。


俺の事を出迎えるのはどういうわけか、アリアだった。


「お帰りなさいませグラン様」

「あぁ」


俺はフレイヤに目をやった。


「この人をよろしく頼むよ。俺の手に余る相手だからね」


王族の相手をするなど面倒極まる。


面倒なことは即他人に押し付ける。


これが俺の生き方。


「かしこまりました」


俺はアリアにフレイヤを預けて、そのまま家の中に戻ることにした。

部屋に戻るとさっそくドッグが俺に向かって飛びかかってきた。


「ハッ!ハッ!」


鼻息荒くして飛びついてくるので俺はアイテムポーチから種を取りだした。


ゴトッ。


部屋の床に現れた種を俺は【ドラゴンファング】でかち割る。


中にはたくさんの実が詰まっている。


「お食べよ」


そう言うとドッグは一目散に食べ始めた。


俺はそんなドッグを撫でながらその食いっぷりを見ていた。


「あーもふもふ」


背中とか顎とか撫でているとだんだん毛並みがサラサラとしてくる。


これが世界樹の種の効果だ。


俺がそうして触っていると、やがてドッグは動き始めた。


「ん?珍しいね。俺が触ってる時はそんな失礼なことをしないんだが」


そのあとドッグは部屋の上に置いてあったものを咥えると俺に持ってきた。


「手紙か、これを取りに行ってたわけね」

「くぅん」


俺が出ていく前にはなかったものである。


つまり俺が森にいる間にこの部屋に届けられたものだろう。


手紙を開けて中身を読んでみることにした。


すると


「ふーん。【地下会議室】にこい、か」


ここは王族の間で問題が発生した時などにその処遇を決めるために話し合いをするために使われる場所である。


普段は使われていないのだが、そんな部屋が使われるようなことになる事件が起きたという事だろう。


「面倒だが、行くしかないか」


あんまり王族としての義務を果たさないでいると王族追放ということも有り得る。


それだけは勘弁して欲しいからな。


王になるのは面倒だが、第7王子という立場は非常に素晴らしい。


期待されることもなければ、責任がのしかかることも無い。


つまり適当に生きていけるのだから、この立場を維持する最低限の努力くらいはする、ということである。


「そのまま世界樹の種を食べてるといいよ。ドッグ。今回は特にたくさん取ってきた。好きなだけ食べなさい」

「くぅん!くぅん!」


シッポを振りながら実を食べていくドッグ。


俺はそんなドッグを残して部屋を出ることにした。


廊下に出ると王城のフロントに出た。


この王城の形だが、フロントの真ん中に階段があって、途中まで上がるとそこは踊り場になっており、左右に別れてまたのぼり階段があるって感じの構造だ。


これを俺たちは【大階段】と呼んでいるのだが、その大階段の後ろには地下に通じる扉がある。


【この先、許可なき者の立ち入りを禁ずる】


という書き込みがあったが、俺は許可があるので問題なく入っていく。


階段を下っていくといくつかの部屋があるフロアに出たが、俺はその中のひとつ【地下会議室】と書かれた場所に入っていくことにした。


中の感じとしてはいわゆる裁判所ってやつに近いかな。


まぁ、違うところがあるとすれば弁護の役をする人間がいないことか。


既に中にはかなりの人がいた。

全員関係者である。


俺は空いてる傍聴席に座った。


しばらくするといわゆる裁判長が出てくる場所に現国王が出てきた。


そして被告人が立つ場所にはクズリットとクレスカスが立っていた。


(ん?なんで?)


とは思ったが、俺がそのまま見ていると。


王様が口を開いた。


「静粛に。これより大事な話を始める」


ビシッ!


王様がクズリットたちを指さした。


「この者たちへの処遇を決める話し合いである。心して聞かれいっ!」


俺は思ってた。


(あれ、思ったよりヤバい感じ?)


俺としてはもっと軽い感じの話が始まると思っていたんだが、


(あのふたり、なんかやらかしたのか?)


俺がそう思っていたら王様は横に目をやった。


「フレイヤ様。この度はご不快な思いをさせてしまったことと思います」

「え、いえ。私は」


なんとも煮え切らない態度だったが、フレイヤの側近は違った。


「そうですぞ。この国は野蛮すぎるっ!この事は帝国側に話を通させてもらうぞ!」


側近は王様にそう言っていた。


普通であれば身分の差でこのようなことは即刻処刑対象なのだが、この場では違った。


見る限りこちらが悪のようだからだ。


だが、俺としては話が見えないのだが。


「何が起きたか分からぬ者も多いと思う。そこで国王の私から一部始終を話そうと思う」



(なるほどな。全て理解した)


ワイバーンが突然暴れだした理由も、森にフレイヤがいた理由も全て理解した。


王様はしゃべる。


「今の話を聞いたな?!それを踏まえた上でクズリットとクレスカスの処遇を決定する!」


俺はそこで手を挙げた。


「国外追放でいいんじゃないですかね?俺の意見はこれで終わりです。俺は意見しました、部屋に帰っていいですか?」


普段使われない部屋が使われるという事で来てみたが蓋を開けてみたらこれか。


これ以上いる必要も感じないので俺は意見を言って帰ろうと思ったのだが。


その時だった。


「俺もそれでいいと思うぜ。父さん」


俺の意見に同意する声が上がった。


(長男のマリグナント兄さん?)


俺にはあまり関わってこない人だったが、兄さんは同意していた。


そして、長男が同意するとなると、次男も同意していた。


「兄さんに賛成だ。その2人はそれだけのことをしでかしたのだ。国の恥だ。出ていけ」


次男のゴツレスもそう言っていた。


となると、後に続く三男、四男もとうぜんのように同意していた。


「そ、そんなぁぁぁ!!」

「考え直してくださいよ兄さんたち!」


そう叫び出した2人だが誰も手を差し伸べようとしない。

それどころか、マリグナントは言った。


「王位継承権はお前らにもある。ここで消しておけば後々楽になる。というわけだ。無能は消えろ。王族に無能は不要なり」


ニヤッ。


マリグナント兄さんは静かに笑っていた。


そして、告げた。


「社会的に死ね。雑魚ども。ここで散れ。兄弟と言えど、慈悲はない」

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