第26話

 しかし近見の剣は硬い音を発して弾かれる。加護の結界に守られたアイコを斬ることはできなかった。

「残念だったわね。私は『王族覚悟』を使わないんじゃなくて使えないのよ。剣を持っていない・・・・・・・・んだもの」

「やっぱり先生が2枚持ちか。持っていたのは【2】と【10】、それが向こうには【Q】に見えたってワケか」

 苦笑いのコーセイにアイコが笑う。

「2枚持ち? 何よそれ、そんなの聞いてないわよ! それで私の「眼」を騙した? イ、イカサマよ!」

「ここでそれを言うのか? イカサマはお互い様だろうが。さてお仕置きの『天罰』タイムだぜ」

「ひっ! い、嫌よ……私にはまだこれから、きゃあぁぁぁ!!」

 落雷で黒焦げになった近見が紫の炎に包まれていく。


(フォルティス)

A● 2○ 3● 4● 5● 6● 7● 8● 9● 10◯ X○ J● Q○ K○


(グレンツェン)

A● 2● 3● 4○ 5○ 6● 7● 8○ 9● 10◯ X● J● Q◎ K●

 

『フォルティスの勝利が確定しました。これにて【ギャンビット・ゲーム】を終了します』

 審判の女神がそう宣言し、鐘が打ち鳴らされる。割れた雲の間から日の光が柱となって降りてくる。


「派手な演出だな。人が死にまくったのによ」

「生き残ったんだから素直に喜びましょうよ。ねえ、タバコちょうだい」

「清々しいくらいにブレねえな、先生は」


 フォルティス側はヤスシを含めて14人全員を生き返らせた。最後に『チーム』に加わったグレンツェン側の4人も約束通りだ。

 小林は沖島を、原田は次町を生き返らせた。劇団をやるかは決めていないという。


 鬼柳の復活はクリハラが許さなかった。組員の二人もそれほど執着はしていなかった。破門となればクリハラが面倒を見るという。


【Q】だったユキは望み通り大金を手に入れた。全員に分配しても一人あたま5億円以上だ。これでユキは奴隷ではなくなり、散り散りになった家族とまた一緒に暮らせる。


 カジミヤは分配された金でサッカーの育成団体を立ち上げると言った。【K】だったカズキは海外で自分を試してみたいとも。


 トールはリンと結婚すると言った。【夜翁】と離れて二人で暮らすという。


「あなたは生還もどらなくてよかったの?」

 コーセイにアイコが声を掛ける。

「未練は無えよ。そのかわりに妹を生き返らせてもらったからな」

 コーセイの妹は麻薬中毒になり、悲惨な最期を遂げた。コーセイはその復讐のために警察を辞め、クリハラと行動を共にしていたのだ。

 そしてコーセイは自分の代わりに妹を生き返らせてくれと頼んだ。

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