第24話

(まだよ! 私の「眼」の力は健在、もう間違ったりしない。ここから巻き返すのよ!)

 近見は気合いを入れ直す。しかし自分が神眼に頼りすぎている危険性には思い至らない。


 審判台の上はフォルティス側がコーセイ1人、グレンツェン側が村市と小林の2人。

 コーセイの横にサッカー『チーム』のセージとエントモが乗る。本当はアイコが乗る予定はずだったのにだ。

「お前ら……どうして」

「ここは僕らの出番です。コーチが言ってました。相手の武器がまだ通用すると思っている時がカウンターのチャンスだって」

「向こうは数字が見えていて、【相討ち】に持ち込もうとしてるんでしょう? 見えているならきっと狙って来るはずだって」

「あの会社員の人がたぶんエントモと同じ。そしてあとダブってるのが【7】と【10】……」

 カジミヤは近見の考えを正確に見抜いていた。そして2人はカジミヤの言葉を信じて役割を果たそうとしている。文字盤を見て逆に【相討ち】で相手の『平民』を狩るつもりなのだ。確かに駒が減れば、向こうをさらに追い詰めることができる。

(ここでダメ押ししておけば、あの女は余計見えていることに縋ってくるだろう。敗残の将が鋼の鎧を捨てられないのと一緒だ。たとえそこが泥沼だったと分かっていてもな)

「……いいのか、それで」

 コーセイの問いに2人が頷いて応える。

「僕らを気遣ってくれてありがとうございます」

「でも勝つにはここでもう一押ししないと……でしょう?」

「ああ……じゃあ頼んだぜ」


(むこうの2人は【7】と【9】ね、ちゃんと見えているわ。ならこっちは……)

「次町君、出てちょうだい」

「……仕方ないですね。ちゃんと約束は守ってくださいよ?」

「分かってるわよ。念には及ばないわ」

 近見は餌として、次町ともう一人の男の劇団員にも大手移籍を持ちかけていた。

(ここで『平民』を切って・・・【相討ち】にすればまだ勝ちの目はある。この一巡さえ凌げれば、そこからあとは……)


 審判の【天秤】が揺れる。そして予定調和のように【7】のセージと次町、【9】のエントモと村市が落ちていった。


(フォルティス)

A● 2○ 3● 4● 5● 6● 7● 8● 9● 10◯ X○ J● Q○ K○


(グレンツェン)

A● 2● 3● 4○ 5○ 6● 7● 8○ 9● 10◯ X● J● Q○ K●


 次にフォルティス側の審判台に乗ったのはアイコ1人だった。その数を見た近見は思わず「眼」を疑った。

(えっ、【12】って……そんな……どういうこと? 本当なら『王族』で見えないはずの数字が見えている・・・・・なんて……だったら『平民』ってことなの? おかしい、矛盾しているわ!)

 近見の混乱をよそに、コーセイが敵側のはずの小林たちに呼びかける。

「オレからひとつ提案がある。お前らこっちの『チーム』に入る気はないか?」

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