第22話

 コーセイは状況を整理しながら、幾つもの推理を頭の中で闘わせていた。

(あの女が狙って【相討ち】の状況を利用したとすれば、つまりはあの女には数が見えているということになる。それなら一体どこまで・・・・見えている?……『平民』は全部見えている。しかし『王族』はどうだ? 向こうの【K】を特定したのは推理の積み重ねの結果じゃないのか? だとすればそこにつけ込めば、利用して裏をかけるかもしれん……)

「おい、次はどうするんや!」

 クリハラから声がかかる。さすがに1人では分が悪い。

「ああ、じゃあ次は」「次は私が行きましょう」

 そう言ってカジミヤがコーセイに近づく。

「ここは私だけで。それで向こうがどれだけ・・・・見えているか分かるでしょう。その上でどういう手に出てくるかも……」

 カジミヤも近見が見えていると勘付いていた。そして自分の行動の意味、ここからの展開を予想しての推論をコーセイとアイコに話す。

「何だよあんた、どの口で考えるのに向いてないとか言ったんだ?」

「ここまでくればサッカーのセットプレーと同じですよ……じゃあ、行きます」

 軽く手を上げてカジミヤが審判台に向かう。


「何や、増援はアンタ一人か?」

 クリハラが怪訝そうにカジミヤを見る。

「ええ、【相討ち】覚悟で死にに来ました。でもこれであなたが望んだ結果になるでしょう。コーセイさんとも打ち合わせ済みです。この意味が・・・・・分かりますね?」

 カジミヤの言葉に一瞬驚いたあと、クリハラが破顔する。

「分かった、了解したで。しかしアンタもなかなかの食わせもんやな」

戦略いきかた戦術しにかたの違いですよ。私は司令塔には向いていない」

「ほんなら極道とかどうや? ええ死に場所教えたるで」

「ハハハ、それは誉められてるんですかね?」


 審判台にカジミヤが乗る。それを見て近見が鬼柳に頷いて、事前に打ち合わせた作戦の続行を促す。それを受けて鬼柳が、沖島の死を見て抜け殻となった小林を審判台に送らせた。


 近見は会場に来る直前にグレンツェンから密かに【神眼】を与えられていた。このイカサマを使って近見は①『平民』の数字を一度だけ・・・・見ることができる。②審判台に乗った駒の数の合計が分かる。

(さっきの向こうの合計は24、そこから沖島と同じ数が減ったんなら11。だけどあのヤクザは『王族』だから一人では見えなくなった……でもサッカーのコーチが乗って14が復活……いわばこれは最終確認。俵とコーチは【相討ち】になる。向こうのヤクザが【J】と確定する。あとは詰め将棋、そこから……)


 鐘が鳴った。フォルティス側がクリハラとカジミヤ、グレンツェン側が俵と村市と小林。

 カジミヤの宣言通り、近見の考え通りにカジミヤと俵の2人の【3】が落ちた。


 その直後に鬼柳が「王族覚悟」と宣言して剣を握る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る