第20話

 そして【3人賭け】での【ゲーム】再開。仕切り直しの1回戦、グレンツェン側は予定どおり部長と村市、俵の会社員『チーム』を審判台の前に押し出す。

 フォルティス側はクリハラと組員のシライ、チンピラのシカマのオッサン『チーム』が進み出る。

「いいのかよ、死ぬぜ?」

 コーセイがクリハラに声をかける。

「生き返らせてくれるんやろ? なら構わん。あん畜生をこの手で殺せるんならそれでええわい。……おう、景気づけにタバコ1本くれや」

「やめたんじゃなかったのかよ?」

「これ以上我慢の必要があるかい。お前もこれ見よがしに美味そうに吸いよってからに!

 ……子供らを、後を任すんや、あんじょうしたってくれや」

 最後の一服を終えてクリハラたちが審判台に乗る。鐘が鳴り【天秤】がゆっくりと上下動を始める。


 そして絶望の悲鳴をあげたのは部長だった。一人だけが奈落行きとなった。


(フォルティス)

A● 2○ 3○ 4● 5○ 6● 7○ 8○ 9○ 10◯ X○ J○ Q○ K○


(グレンツェン)

A● 2● 3○ 4○ 5○ 6● 7○ 8○ 9○ 10◯ X○ J● Q○ K○


(全員の数の合計が多い側が勝ち、それで負けた側の一番小さい数だけが落とされるということか……それにしても威張りくさった部長が【2】というのも笑える話だな。いや、だからこそ余計に虚勢を張っていたということか……)

 コーセイが隠された新ルールを解き明かしていく。


 2回戦。グレンツェン側の空いた台に誰が乗るかという時に、鬼柳が演劇『チーム』のもう一人の女、小林を指名した。

「い、嫌よ!何でわたしが……」

 小林は辺りを誰かを探すように目で追う。その先にいたのは劇団の座長、沖島だった。

「沖島さん! 嫌だよこんなの……何とかして!」

「いや、ぼくは……」

「ほら、かわいい小鳥のような小林ちゃんがまた泣いてるわよ、沖島さん。慰めてあげなくちゃ」

 目を逸らす沖島に近見が声をかける。

「近見、おまえ何を言ってるんだ?」

「あんなに夜に大きな声を出して私が気付かないとでも? 今度も『ぼくが何とかする』って言って喜ばせてあげたら?」


 沖島は伸び悩む看板女優の近見をもう一皮むけさせようと思っていた。そこで若い小林を入団させライバルに仕立て、劇団に梃入れして近見を発憤させようとした。

 しかしそれは反対に沖島が小林にのめり込んでしまう結果になった。沖島の浮気を裏切りと見た近見は、水面下で大手劇団への移籍話を進めていった。

 だからこの【ゲーム】に召喚よばれたことは、近見にとっては沖島と小林に仕返しする絶好の機会と言えた。さらにグレンツェンから恩恵・・を貰ったことで、復讐を後押しされたのだと近見はほくそ笑んだのだった。

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