白銀の大剣よ、舞え

賢川侑威

プロローグ

 闇の中、火の粉が散り、一人の少女が浮かび上がる。名は、ハンナ。金髪碧眼の小柄な体躯の少女で、これと言って特徴はない。


  丑三つ時、圧倒的な闇の中、数人の男と共にハンナは居た。辺りは草原で、背の高い草木が風で揺れている。今は小さな篝火だけが光源だ。


 ハンナは茂みの中で、石に腰掛け、腕を組み、闇を睨み付けている。その横顔は、戦場(いくさば)には不似合いであった。


 鮮やかな金髪、白い肌、小動物を思わせる顔立ちと大きな瞳―まるで精巧に造られた人形。


 ハンナの居る場所から数百メートル先、吸い込まれそうな闇の奥から、ガラス片を擦り合わせるような嫌な音が聞こえた。それは少しずつ近くなってくる。


「きました」ハンナは言い、石から立ち上がる。


 その背には巨大な鞘。大きさは自身の背丈ほどもある。それから両手剣を軽々と抜く。そして、刃先を音の鳴る方へ向ける。


  がしゃがしゃ、と音は少しずつ大きくなっていき、音の正体はその歪な形を晒した。巨大な人型の怪物。その身体は小山のように大きい。


「行きます」


 その声と共に、ハンナの片手が輝く。右腕に付けた籠手が白い閃光を放ち、剣が光を反射、光が周囲を切り裂くように照らす。


 光に反応したのか、怪物が咆哮する。その瞬間、ハンナは跳んだ。

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