ダークウルフ

山ピー

闇の狼

第1話「狼の戦士」

18年前ーー


ここはとある研究所……。

「よし……この薬の実験が成功すれば私は……」

1人の研究者が被検体に何かの薬を注射しようとしていた。

「博士、本当に大丈夫なんでしょうか?」

研究員の1人が尋ねる。

「何を今更……ここまで来て実験を中断する訳にはいかんよ……私にはもう後が無いんだ……」

博士と呼ばれるこの男は被検体に薬を注射する。


「どうだ?」

「薬の投薬を確認……こ……これは!?」

「どうした?」

「被検体のバイタルに異常発生!!心拍数がどんどん減少して行きます!」

「何だと!?急いで蘇生処置を……」

しかし、研究員達の努力も虚しく被検体の心臓は停止。

「そんな……私の……研究は……」

だが……

死んだはずの被検体が突如動き出した!!

「うわぁっ!?」

「こ……これは……成功……していたんだ……」

被検体は暴れ出し研究員達を次々に襲う。

「う……うわぁぁぁっ!?」

被検体は死してなお動き出しゾンビの様に研究員達を襲い続けた。

そして、研究所は大爆発。

この事件は後にゼロクライシスと呼ばれる大事件となった。


現在ーー


ゼロクライシスにより研究所から脱走したゾンビは人を襲っては仲間を増やしを繰り返し政府はこれをゾンバットと命名。

被害を広げない為に一部のエリアを隔離した。

ここはエリアゼロと呼ばれ取り残された人々はゾンバットと戦いながら必死に今日を生きていた。


この物語の主人公、夜月 大我(やづき たいが)(18才)もエリアゼロで育った1人だ。

大我は今日もパソコンで何かをしていた。

その横に食料を置く。

「はい、これ、今日の分」

「……いつもすまない……」

やって来たのは中崎 愛(なかざき あい)(20才)。

「なーに言ってんの!私と大我の仲じゃない!」

「いや……それはそうなんだけどさ……愛姉にだけ仕事をさせて……今日も工場だったんだろ?」

「私は大丈夫よ。まぁ、工場も何とか稼働してるし、しばらくは食い繋げるでしょう。それにゾンバットと戦う為にはあんたに頑張ってもらわないとね。で、今は何やってるの?」

「ん?ああ……この前の戦いで損傷した所の修復をしてたんだ……だが、必要なパーツが足りなくて……」

「ふ〜ん……ところで貴明は?」

「その必要なパーツを探しに行ってる」

「って事はまた闇市?」

「いや、金が無いからジャンク品でも拾って来るんだろう」

「そう……ゾンバットもどんどん増えてるし……私達これからどうなるのかしら……」

「愛姉、心配するな。ゾンバットは俺が全部倒す!」

「フッ……そうね、その為のダークウルフだもんね」

そこに戻って来たのが……。

岡野 貴明(おかの たかあき)(18才)

「ただいま〜、いや〜悪い悪い、探すのに手間取っちまって……」

「貴明、お帰り」

「あっ、愛姉も来てたのか!大我、必要なパーツってこれだろ?」

貴明が大我にパーツのチップを見せる。

「ああこれだ。助かった」

大我は早速貴明が持ってきたパーツを破損したパーツと交換する。

「よし、これで良い」

「しっかし……大我は本当器用だよなぁ」

「そんな事ないさ、皆が協力してくれるお陰だ」


と、そこへもう1人……。

「アニキー!」

「光か……」

やって来たのは橋本 光(はしもと ひかる)(13才)

「よぉ、光。どうした?そんなに慌てて」

「皆来てたのか。大我のアニキ、コレ見てよ!」

と光が大我に見せたのは……。

いくつかの機械のパーツだった。

「おい、これどうしたんだ?」

「ジャンクの中から見つけたんだよ。何か役に立つ物ある?」

「どれどれ?……」

大我が光が持ってきたパーツを漁る。

「おっ!これは使えそうだな!ダークウルフのパワーアップを考えてた所だ。これは役に立ちそうだ」

「やった!」


とそこへパソコンから警報音が鳴る。

「!!」

「ゾンバットサーチャーが反応した!ゾンバットだ!」

と貴明がパソコンの操作して言う。

「よし、行ってくるか……」

「場所はここから南西に5キロだ」

「分かった……」

「アニキ、気を付けて」

「ああ……」


大我は格納庫から移動用バイクの『マシン·ウルフダッシュ』を持ってくる。

ヘルメットを被りいざ出撃。


アクセルをふかせ発進する。


その頃、エリアゼロの外では……。


大都会の中に聳える高層ビルの一室。


窓の外を眺めている1人の男。

そこにまた1人入って来る。


「長官、エリアゼロ内にまたゾンバットが現れたそうです」

「……隔離区画から出る恐れは?」

「それは無さそうですが……」

「ならば放っておけ」

「はっ!」


エリアゼローー


ゾンバットの出現に街の人々は逃げ惑う。

「うわっ!?」

1人の男性が転びゾンバットに襲われる。

「う……うわぁぁぁっ!?」


そこへ大我が到着。

「くっ……被害が出てしまったか……」

ゾンバットが大我に気付き大我の方を向く。


大我は『ウルフダッシュ』から降りる。

大我は左腕に装備された変身アイテム『ウルフチェンジャー』を構える。

「変身……」

大我は黒き狼の戦士『ダークウルフ』に『変身』


ゾンバットがダークウルフに襲い掛かって来る。

「ガッー!!」

ダークウルフはゾンバットの攻撃を受け止め反撃のパンチ。

「はっ!」

ゾンバットを殴り飛ばす。

だが、ゾンバットは再び立ち上がり襲って来る。

ダークウルフはゾンバットの攻撃をかわしながら自分の攻撃を着実に当てている。

ゾンバットに回し蹴りで蹴り飛ばし、距離を取る。


だが、ゾンバットは姿を変えコウモリの力を持つコウモリゾンバットとなった。

「チッ……進化したか……」

コウモリゾンバットは飛行能力を得て空からダークウルフに襲い掛かって来る。

「はっ!」

ダークウルフは高くジャンプしそれを迎え撃つ。

空中で交えダークウルフの攻撃がコウモリゾンバットにダメージを与える。

コウモリゾンバットは地面に落下。

ダークウルフも着地。


「悪いな……闇に帰れ」

ダークウルフは両手の拳から鋭く長い爪を伸ばす。

そして、必殺技『ダークブレイククロー』を放つ。

「はぁぁぁぁ……はっー!!」

鋭い爪でコウモリゾンバットを斬り裂く。

「うぅ……ぐわぁぁぁっ……」

コウモリゾンバットは消滅し倒された。


ダークウルフは襲われた男性の方を見る。

男性は既に亡くなっていた。

「この人もいずれゾンバットに……」

そこに貴明から通信が入る。

「大我!直ぐにそこを離れろ!安全保安局の奴らがやって来る!」

「何っ!?チッ……厄介な事になりそうだな……」

ダークウルフは変身を解除し大我は急いでその場を離れる。


しばらくして国家安全保安局の人間が数名やって来る。

「こちら302部隊、現着した。ゾンバットは既に居ない様だ」

「班長、男性が1名死亡しています」

「ゾンバットに襲われたのか……仕方ない、その遺体を回収だ」

「了解」


その様子を物陰に隠れて見ている大我。

遺体を回収?奴ら、何を……。

大我はそう思いながら様子を見ていた。


「せーの!よいしょっと!」

隊員達は男性の遺体を乱雑に扱いトラックに荷台に投げ入れる。


奴ら……人間としての想いとかないのか……。

大我はまたそう思った。


隊員達は現場を立ち去った。


「仕方ない……帰るか……」

大我は仲間達の元へ帰って行く。


遺体を運ぶ隊員達は……。

「なぁ?あの遺体どうするんだ?放っておいたらゾンバットになっちまうぞ?」

「浅間重工に運ぶらしい」

「え?何で?」

「何でも浅間重工の会長さんがゾンバットに対抗する為の装備を開発するからゾンバットのデータが必要なんだとよ」

「へぇ〜、なるほどね、人体実験って訳か」


国家安全保安局の車は男性の遺体を乗せ浅間重工へと向かう……。


そして、浅間重工本社で待ち構える会長の浅間 重俊(あさま しげとし)(76才)は……。

「フフッ……いよいよ計画に着手出来る……」

ワイングラスを片手に不敵な笑みを浮かべるのであった。


続く……。

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