第4話 苦しむ人々
プリシラは青ざめた顔のエミルの手をきつく握り締めたまま、
するとそこはぐるりと天幕の外周に沿って
彼らの前には上等な小型の円卓が置かれ、良い香りのする茶が湯気を立てていた。
そしてその男女らに囲まれるようにして天幕の中心には、
「やっぱり……そういうことね」
プリシラは怒りに顔を赤く染め、天幕の中心を見やる。
そこには先ほどここに入って行くのを見かけた、
エミルが
「姉様……苦しんでいるのはあの人たちだよ」
見ると腰に
そして一様に抜け
まるで苦痛の果てに生きることを
そんな者たちを
プリシラは怒りのままに彼らを
すると背後で天幕の戸布をめくり上げて先ほどの受付の男が入って来た。
「どうですか? お嬢さん。1人連れて帰ります? まあ、あんな連中ですから、まともな給仕は出来ないかと思いやすが……」
プリシラは即座に
「人身売買は違法行為よ!」
共和国では
それに
だが男はそんなことは百も承知とばかりに肩をすくめて見せた。
「人身売買だなんて、とんでもない。あいつらはあの体のせいでどこにも雇ってもらえない。我々はそんな
そう言う男の横にはいつの間にか小さな人影があった。
それは先ほど
受付の男はその老人の
「おまえからも何か言ってやれ。この正義感に燃えるお嬢さんに」
「へえ。お嬢さん。わしらはこんな体じゃから、働ける場所は無い。ここで雇ってもらえてお給金ももらえて助かっておる。それにあそこにいる若いのは、その中でも
そう言う老人にプリシラは困惑し
そして振り返り、
彼らはとても幸せには見えない。
生きる希望を失った者たちの顔だ。
何よりエミルが彼らの不幸な心を感じ取っているのだ。
「あれが幸せ? そうは見えないわ。それにただの職の
そう言いかけたその時、プリシラは突然後ろから麻袋をスッポリと顔に被せられ、視界を
そして背後から太い腕に組み付かれた。
麻袋のカビ
「放して!」
「うおっ!」
思わぬプリシラの力強さに振りほどかれた男が
するとプリシラよりも背の高い屈強な男が目を丸くして
まさか女に振りほどかれるとは思わなかったのだろう。
だが男は知らない。
プリシラがダニアの女王ブリジットの娘であることを。
その体には女王の系譜に脈々と受け継がれる異常に発達した筋力が備わっている。
まだ13歳でありながら、その腕力はすでに同じダニアの女戦士らですら
いかに
「アタシに
プリシラは怒りのままに男の顔面を
「ブホォッ!」
男は鼻血を撒き散らしながら天幕の戸布を突き破って外まで吹っ飛んだ。
それを見た受付の男は表情を
「ひゃあああ!」
その騒ぎに何事かと奥にいる富裕な身なりの男女らからどよめきが上がった。
受付の男が声を荒げる。
「おい! その娘をとっ捕まえろ! 何か分からねえが妙に力が強いから用心するんだぞ!」
受付の男の怒声に
プリシラはエミルを背中に守りながら、男たちを
男たちを目の前にしても臆した様子は
「この共和国で汚い商売して、イライアス大統領が
そう言い放つプリシラに男らの魔の手が伸びるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます