第13話 古傷があぁぁぁ!!

「っらっしゃあせー。」

「ちょっと、軍師!接客にそんな言葉を使ってはいけないでしょ!?」

 現在、私は貴族が経営するカフェで貴族に接客指導を受けさせられている。

 何でって?知るか。こっちが聞きたいわ。それと今のも立派な接客だろ!?八百屋の!

「私はバイトとして来たのではなく、客として来るつもりだったんだが?」

 急に呼ばれたと思ったらこれだ。ふざけやがって。

「ちょっとくらい手伝ってくれてもいいでしょ?」

 貴族が優雅そうに紅茶を飲みながら、ウィンクをしてきた。

 ………………怒りしか湧かないんだが?

「いやだからと言って…」

「良いじゃない。

 それに………似合ってるわよ?メイド服。」

「…………………」

「それにしても……よく知ってたわね?前にも着たことあったのかしら?」

「…………………」

「もう、黙ってちゃ分からないじゃない。」

「も、黙秘権を行使する…………」

「えぇ?教えてくれても良いじゃなーい?」

「黙秘権を行使する!」

 ぜってぇ、口を割るもんか!これは俺の黒歴史なんだ!

「………まぁいいわ。

 それに接客を嫌がってるみたいだけど、客として魔法少女を探るより、店員としての方が色々と分かるんじゃない?」

「………………ハァー。分かった、分かった!

 ちゃんとやりますよ!」

 こうなりゃ、完璧にやってやらぁ!

「そうこなくっちゃ!」









カフェ・雅たれ  土曜日 PM14:30




「すみませーん。」

 客に呼ばれ私は注文を取りに向かう。今日を含めてもう七組目。もう言葉を噛むという失態は起きない!

「ご注文は?」

 現在、私の容姿は金髪ロングのウィッグを着けて、声は私の裏声だ。未だにソプラノが出る私の喉と中性的な体格が我ながら恐ろしい。顔はヨシに調整してもらった手作りチョーカーで中性的に見えるようにしてもらった。

「私はローズヒップを。」

 魔法少女コメリ……かなりの手練れだが、名前をどうやって書くのか気になってしょうがない。

「私は……アイスティー。」

 魔法少女ユリ、戦闘時とは違って大人しいようだ。戦闘時はバーサーカーの呼び名が正しいだろう。

「私もアイスティーで!」

 魔法少女サクラ、こっちは戦闘時通り、仲間を励ますような笑顔が絶えない。

「あたしはブラックで。」

 魔法少女チエ、冷静沈着な判断でこいつに何人やられたか………おっと邪念は捨てねば。

「らーちゃんは?」

「………ピーチティー。」

 …………もしかして、魔法少女ラナか!

 魔法少女は変身前と、した後では髪の色や雰囲気が変わるが、ここまで違うとは。うぅむ不思議だ。

「畏まりました。少々お待ちくださいませ。」

 

 「ベニ、注文は………聞こえてるやん。」

 「当たり前じゃない、私の耳を舐めないことね。」

 「やはり、私はいらないのでは?」

 「ほら、いいから。運んで。」

   納得いかねえ。



「お待たせ致しました。」

 私は渾身の笑顔で魔法少女達の前に飲み物を置く。

「それではごゆっくり。」

 なんだ……何か話しているな……


「あの!ちょっといいですか?」

 魔法少女サクラ!?な、なんだ?

「はい!?な、何か不手際でもありましたか?」

「あ!いやいや、違いますよ!お店に入った時からその服が可愛いなって。

 ここって、あそこにいる女性一人だったじゃないですか。私もアルバイトに受かればその服を着れるのかなって!」

 これは………私は横目で貴族を見る。貴族は少し考えた素振りをしたのち、頭を縦に振る。

「そうですね、私はここのマスターと知り合いで頼まれたからここにいるので、そういうのはマスターに言っていただければと思います。」

 やりきったぞ!貴族!

 私が無言で貴族の顔を見ると貴族はサムズアップをしてきた。間違ってなくて良かった。

 後ろで魔法少女サクラがやったー、と嬉しそうに小声で喜んでいる。


 「良かったな、手作りメイド服褒められて。」

 「あの子、見る目あるわね?」

 「雇うの?」

 「そこから情報を得られるかも。」

 「……了解。」

  

 

 ピリリ!ピリリ!


 この音はもしや……

 私と貴族が音の鳴った方向、魔法少女達のテーブルに目を向ける。

「あっ!ごめんなさい!うるさくしちゃって!

 らーちゃん、行こう!」

「分かった。」

 魔法少女サクラと魔法少女ラナが荷物を置いて出ていこうとする。

 ちょっと嫌がらせをしてやろうかな。

「あの、お客様?一体どちらに……」

「ごめんなさい!すぐに戻りますので!」

「安心して。」

 二人はそういうと颯爽と駆け出していった。

 取り付く島もねぇー


「あぁ、そうだ。買い物頼んで良い?咲子ちゃん。」

 ?急にどうし…痛!?俺かよ!?

 ちょっ、やめ、ド突くなって!

「分かったよ、マスター。」

 私は"白紙の紙"を受け取って店の裏に入り、瞬時に着替えを完了させる。


「モニ…」

 いけね、声そのままだった。うっうん……

「モニター、魔法少女サクラと魔法少女ラナの居所は分かるか?」

『はい、こちらCM。分かるっすよぉー。今座標を送りますー。』

「ありがとう。」

『そういえば、軍師様。さっきの女せ…ブツッ!』

「フゥー、………急ぐか!」

 後先考えない方が幸せなことって…あるよね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る