懐かしく久しくない再会

「…」


俺は言葉に詰まった。俺から見たらあいつらはあいつらだがあいつらから見たら俺は知らない人間だ。どう声をかければいいのやら。


「お前は誰だ?というよりこれはなんなんだ?夢なのに妙に意識がはっきりしてるというかちゃんと自分で体を動かしてるような感じがする」

「俺も同意見だそしてここにいる全員がまるで同じ夢を見ている。そんな気がする」


あいつらから話しやすいように誘導してくれた。本人たちはそんな気は毛頭ないだろうがありがたい。


「お前ら、生きててくれたんだな」

「何を言ってんだよ。それよりお前は誰だよ」

「ははw。そうだね、自己紹介をしようか。俺は神だ、そして人間だ」

「元?」

「そう、ついこの前までは人間だった。神憑きだった」

「「「「「…」」」」」


その場の全員が黙りまさかありえないと思考を巡らせた。だが俺の口は動く。ちゃんと自己紹介をしなければな。


「現代償の神、正道 幸春だ。久しぶりに感じるな」

「何言ってんだよ。あいつは死んだんだ!」

「死んだよ!死んで代償の神になったんだよ!人の話を聞かんかい!愚か愚かしい」


そして俺は代償の神になった経緯を説明した。


「それがでたらめでお前が幸春じゃないことを証明するためにいくつか質問をする」

「いいよ」


紅音がそんなことを言いみんなと少し話し始めた。


「…行くぞ。まずはジャブから。ここに並んだ4人の名前を答えろ」

「右から相楽さがら りん夢白ゆめしろ はかね白崎しろさき 紅音あかね。で、最後が狩岩かりいわ せいだろ」

「次だ。海頼みらいの誕生日は?」

「10月7日」

「…最後だ。俺の家の住所はどこだ」

「知らねぇよカス。わざわざ自分の家を通り越してまで探すかアホ」

「辛辣すぎてワロタw」

「こりゃ本物だわ」

「…よかった。別れの言葉も言えなかった。だから話せてよかった」


何人か泣いてしまった。まったくこういうシリアスなのは面倒くさい。


「シリアスはもちろん?」

「全カット。だろ」

「わかってるぅww」


これだけで全員が泣き止んだ。恐るべしカットの力。


「お前ら俺が死んでどうだ?」

「学校休んで引きこもってる」1hit

「自殺しようとした」2hit

「家のもの破壊しまくった」3hit

「明日辺りみんなと無理心中でもしようと思ってた」4hit critical!!

「グフッ、いや死んでごめんって。でもお前ら重いよ」

「www」


死んだからこそ知れたこいつらの本心に俺は少し泣きそうになっていた。それをこらえて俺は言う。


「明日、登校しようと思う」

「その体で?」

「いや、登校とは言っても学生とか教師とかで行くわけじゃない。どんなふうに行くかは明日を楽しみにしててくれ」

「ほ~ん。お前ホント焦らすの好きだな」

「まあ楽しみにしとくわ」


そこから俺が死んでからの他のみんなの事や俺の神憑きの事についてしばらく話した。そして少し、みんなの体が透け始めた。


「もう限界か」

「えぇ。まだ話したいことあったのに」


そうして話す間にも体はどんどん透過して行っている。


「あ、最後に一つ。フレ申は俺から送っとくわ」

「え、あ、うん。…うん?!」

「ゲーム出来んのかい!」

「「「「「それな」」」」」

「まあ今全然下手だけどよろしくね。グッバイ」


そして視界もボヤケてベッドの上で目が醒める。俺は目から塩分を含んだ水をゆっくりと流す。水は頬を伝ってベッドに滴る前に腕に搔き消される。そして体を起こし準備をする。会いに行こう。夢の中だけじゃ不満だ。あいつらと実際に合わないと俺は満足しない。


部屋を出てセウスもいるリビングに行く。リビングではテレビがついておりあるニュースが俺の目を奪う。そのニュースは一昨日起きたおれのいた中学校でテロが起きたという事、そして一人の少年の命で被害者ゼロ名でテロ実行犯全員が死亡、行方不明となったことだった。


「俺が死んでる時点で被害者1名だろ」

「おはようございます。寝起きのキャラメルラテです」

「なぜキャラメルラテ?まあ好きだからいいけど」


矛盾したニュースを見ながら俺は手渡されたキャラメルラテを喉に通し頬が緩む。


「さて、今は約7時30分だがいつ行ってやろうか」

「今日もお出かけですか?」

「まあそんなところだね」

「いったい今度は何を買ってくるのやら」

「強いて言うなら“涙”。かな(ボソリ」

「え?」


俺は自分の部屋に戻って時間を潰しのためにゲームを始める。時間には十分気を付けて。

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