拭えぬ手

 君が僕に会いたいと泣きながら表に来ていると聞いた時には大層驚いた。

即刻追い払うように指示を出し、物理的に無理やり君を遠ざけた。

それなのに君はいつも泣きながらやって来ては僕に一目会わせて欲しいと懇願する。

部下の顔は日に日に気まずそうになっていく。僕はと言えばそんな部下を気にもとめない素振りをして、君を追い払う。


 嗚呼、嗚呼、愛しの君よ、君の涙を拭えぬ手など、どうか忘れておくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る