第19話 罰ゲーム 前編




「椎名…これはどういうことだ?聞かせてもらおうか?」


「えっと〜、これはその〜なんと言いますか…」


 はい、皆さんどうもお馴染み、椎名優です。

 今日は強制て…今日は後輩の舞山さんもとい舞山に誘われて一緒にショッピングに来ています。

 それでですね。何でだろう…何故かこうなりました。

 説明するのが難しい。

 少し前を振り返ってみようか…


______________


___4時間半前


「おい舞山。どこ行くか決めてるのか?」


『いや?特に決めてないけど?ていうかそれかみ普通じゃない?』


…そういうものなのだろうか。女子の買い物というのがよく理解できない。難しい。


「へーそうなのか〜」


『そっちから聞いてきたのに興味なさそうだね?』


「あ、あっちの店俺初めて見るかも。行ってみるか?」


『あ、無視した〜。でも気になるかも。あの服とかいいな〜。あの服とか似合いそう?』


「お前なら大抵の服が似合うんじゃないか?普通に美人だし。」


『…うわ。キッモ。恥ずかしいからやめてよ。』


「今の普通にグサリときたぞどうしてくれるんだよ。」


『知りません〜。あ、この服とかどう?似合ってる?』


「その色よりもこっちの色のほうが良くないか?そっちも似合ってるけど、こっちの色のほうが自然に見えるからいいと思うんだが…」


『へ〜意外と慣れてる?』


「何が?」


『べっつにー」


「何だよ。気になるじゃないか。」


『なんで今のでわからないの?鈍感なの?』


「失礼な。俺は鈍感とは反対に位置する男だぞ。遠くのささやき声とかも聞こえるし、匂いだってクラスで誰かがおならをしたら誰がしたか分かるくらいだ。な?敏感な方だろ?」


『サイテー。あと…意味違う…… とにかく女子の前でそういう話は禁止!』


「は?よく女子同士でもそういう話してるじゃないか。何で俺が駄目なんだよ。意味わかんねー」


『えっ?盗み聞きとかしてたの?なおさらキモいんだけど。』


「あーもう、次の店早く行くぞ」


『ごまかし方下手だぞ〜』


「うっさい」


 そして、次から次にお店を巡った。

 こいつは女子にしては1店舗1店舗の滞在時間が短いのかもしれない。

 女子の買い物ってクソ長いって聞いていたから拍子抜けだった。

 ただ全ての店を見て回ろうとしたらこのスピードで見ていく必要があるのかもしれない。

 舞山だって女子だ。

 昭和の親父みたいな威圧感を放っているがちゃんと女子なのである。

 だから普通にデパートとかでショッピングしに来たのであれば、すごい時間をかけるに違いない。


 あっという間に半分も店を回った。

 荷物を持たないといけないわ、アドバイスをしなきゃいけないわで大変だった。

 これで女物の洋服のコーナーが終わりであることに安堵した。


「次はどこ行くんだ?」


『男物の洋服見に行こうかなって』


「そりゃまたどうして。もしかして父親に渡すのか?健気だな。でもそれってファザコンってやつなのでわ…」


『勝手にファザコン認定しないでくれる!?否定はしないけどさ…』


「否定しないのか。なら正真正銘真のファザコンだな。珍しいな思春期の女子って父親嫌いなものじゃないのかよ。」


『うん、確かにいろいろ関わってくることがあるけどかなりの割合でうざいって感じるかな。普通にキモとか言ってる気がする。』


「なら隠れファザコンか。」


『何それ?』


「まんまだよ。隠れてるファザコン、つまり隠れファザコン。」


「で?男物の服、父親に買いに行くのじゃなかったのか?」


『いや?ゆう君のだから安心して!』


「いや安心してってどういう意味?あと俺の服ならいらないよ。」


『強制。』


「了解シマシタ。」


 あーあ、行きたくないんだけど。

 俺服ならあるし。


(それなりに流行りの服もあるから別にいいんだけど。)


 舞山には何言っても無駄そうだから。特に何も言わない。そもそもいえない。

_______


『この服とかいいんじゃない?似合いそうだよ〜』


「何着目だよ。いい加減にしてくれよ。財布カツカツになりそうなんだけど。」


『いいじゃん。そんなこと言わないでよ〜。あっこれ絶対に似合うから。試着室へ〜レッツゴー!』


「テンション高っ。俺そういうのいいって。だから俺もう何着か買ったしいいよ別に。」


『え〜勿体ないな〜』


「何がだよ!」


(はぁ~。こいつは俺を何だと思ってんのかな?本当になぜ男物のところまで見に来ているのだろうか。しかもさっきと比べてめちゃくちゃ選ぶの遅いし。はぁ~普通に1日が潰れそうだ。クソ。)


『てか、もうそろそろ昼だね〜何処か食べるとこある?』


「普通にフードコートでいいだろ。俺はラーメンが食いたい。」


『女子と遊びに来てラーメンとかナンセンスだね。でもゆう君がラーメンにするなら私もそうする〜』


「ただお前が食いたいだけだろ?俺のせいにすんなよ。」


『あっ、バレた?』


「バレバレだ。」


 そうして俺たちはフードコートに向かった。


「お前一人で来てるのか?何だ寂しいなwそれにしてもその服の量マジ?そんな買うお金どこから出てきたんだよ。」


 厄介なやつが来た。桐山だ。今は舞山がトイレに行っているからいいが、戻ってきたらまずいことになる。つまり誤解される。


「それはいいから。それよりお前こそ一人か?そっちも寂しいな。」


「そんなことはないぞ何せ俺の天使といっしょにきてるんだから。」


「はいはい妄想の世界に浸るのはいいけど俺を巻き込まないでくれ。」


「妄想じゃないわ!俺の妹、妹だから。」


「え?お前妹いたの?初耳だわ〜」


『ごめ〜ん結構待った?』


 最悪のタイミングである。そこは空気を読んでちょっと待ってほしかったなと思うが、舞山はたとえ頼んだとしてもそういう事はできないことを知っているので、どうしよもない。


「椎名…これはどういうことだ?聞かせてもらおうか?」


「えっと〜、これはその〜なんと言いますか…」


 そういうわけで現在に至る。誰か助けてくれ。

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