隣の幼馴染は黒ギャルビッチ

@Fechi_tarou

第1話

俺には幼馴染がいる

同い年で、お隣さんで、関係もそれなりで

中学まではクラスも大体一緒だった

そんな都合の良い境遇は言ってしまえば勝ち組だ、そのはずだ


なのに……


「解せない……」


そう呟き、俺の部屋のベットの上で寝転がりながら漫画を読むクソ幼馴染を

恨めしく睨む。暑い夏の日、エアコンの効いた部屋の中でのんびり読書を

していた所、隣の部屋から乱入してきた幼馴染にベットの上を占拠され

本来の主は小さなちゃぶ台を使って漫画を読むことになった


「毎回言うけどな、うちは漫画喫茶じゃねぇぞ」

「本いっぱいあるし、エアコン効いてるし、パソコンもあるし、漫画喫茶じゃね?」

「違ぇよ」

「いや~隣にあるから通い易くて便利だわ~」


インドアとは程遠い、バッチリ日に焼けた生足をぶらぶらさせながら

人の話を聞かない幼馴染はこちらを見る事もなく答える


「後、人のベッドで寝転がるなよ」

「マーキングしてるの」


そう言ってわざとらしく身体を左右に揺らすリオ

本来、女の子が自分のベッドに居ると言うのはとても魅力的な

シチュエーションだが、こいつの場合普段から化粧をしていることもあって

毎回俺のベッドをマーキングしていくのは化粧臭くてうんざりさせられる

残念ながら女の子の匂いにドキドキ、みたいな喜びはない


「犬かよ」

「アタシ猫派だから」


そんなしょうもないやりとりもいつもの事だ

こいつ俺の事好きなのか?と言いたくなるくらい入り浸りやがる

これが普通の幼馴染であればこちらとしても歓迎なのだが

あいにくこいつは普通の幼馴染ではない


「タクヤ、お茶取って~」

「横着すんな、ちゃぶ台の上に置いてあるだろ。あとちゃんとこっちで飲めよ

 前ベッドにこぼしたの忘れてないからな?」


はいはい、と仕方ないと言った様子でようやく体を起こすリオ

ベッドに腰掛けると、俺からは高さ的にリオのミニスカートの中が見えてしまう

リオのズボラさもあるけど、幼馴染のパンチラなんて何度も見ているのに

毎回見てしまうのは男の性と言うやつだろうか

そんな俺の視線など気にする様子もなく、ちゃぶ台からペットボトルのお茶を取って

くつろぐリオ


「異性の幼馴染で、同い年で、お隣さんで

 こんな勝ち確定の状態からなぜ黒ギャルビッチ……

 これじゃ純愛モノじゃなくてエロ本のシチュなんだよ」


「毎回言ってるけどアンタも飽きないねぇ」


そう言ってどうでも良さそうにツッコミを入れてくる幼馴染

パンチラしているのも気にしていない


「羞恥心のかけらもない女め」

「そう言いつつパンツしっかり見てるじゃん」


そう指摘してくるリオだが、足を閉じる様子はない

幼馴染で気心知れた間柄だからか、そもそも男として見られてないか


「そりゃ目の前にパンチラがあるなら見るだろ、男としては」

「他の女相手だとそんな度胸もない癖によく言うよ」


カウンターを食らい思わずひるむ、こういう所はさすが幼馴染だ

なおも堂々とパンチラをしている幼馴染に敗北し、俺は手元の漫画に視線を落とす


「ウチのセフレくらいグイグイ行くタイプなら、今頃タクヤも童貞じゃ

 なかっただろうに……オヨヨ」


「嘘泣きはよせ、あと幼馴染のエッチ事情なんて聞きたくないぞ

 変な性癖を植え付ける気か」


「植え付けてあげよっか?」

「俺は男女平等主義だ、ぶん殴るぞ」


その後、リオはつまらなさそうに再びベッドに寝転がり読書を再開し

こちらも再び読書へと戻る。たまに雑談を交わしたりするけれど

こうも頻繁に入り浸っていると流石に話のネタもないため

こうして静かな空気と言うのも慣れたものだ


「飽きた~……よく考えたら大体読み終えた奴だし、タクヤ新しい本は~?」

「図々しい奴だな、本の仕入れはまだ先だぞ」

「ちぇ~、それじゃゲームしようよゲーム」


と、先ほどまで再び本を読んでいたかと思えば、いつの間にか部屋のパソコンを

つついているリオ。猫派らしく本人も気分屋だ


「タクヤはノートパソコンの方ね」

「部屋の主にサブPCを使わせやがって」


と、文句を言いつつこちらもパソコンを起動して準備をしていく

リオは人気の物が好きで、最近はチームを組んで競うFPSタイプのゲームに

ハマっている、そんなリオに付き合わされる形で俺のパソコンにもそのゲームは

インストール済みだ


「だ~、また負けた~」


人気の物が好きだけれど、必ずしも上手いと言う訳ではない

ムキになるリオに付き合って何戦かやっていく

このゲームはあまり時間を使うタイプのゲームでもないため

こうしてちょっとやる分には良い気晴らしになる

リオは2時間くらいずっとやってるらしいけど

こういう動きの多い3Dゲームは俺には合わない


「うっ、3D酔いしてきた……ちょい休憩」


ゲームを続けるリオをよそに、自分のベッドに倒れる

……やっぱり化粧臭い


「タクヤ相変わらずだねぇ。腕は良いんだけどね~」


そう言って笑うリオ


「今度ウチらのチームに協力してよ、一戦くらいなら平気でしょ?」


「このゲームどちらかというとリア充も多くプレイしてる奴だろ?

 そんな輪に入りたくはないぞ」


「チッ、セフレと組ませてやろうと思ったのに」

「お前なぁ……」


あまり突っ込む気も起きず、ため息をつく

リオの言うように、こんな風に言い合えるのはリオだからで

リオ以外の女子相手だとどう接したものかと困ってしまう

……まぁ、そもそも陰キャだから基本的に女子とは関わらないんだけど


だからこそ、惜しいなと思ってしまう

異性の幼馴染で、同い年で、お隣さんで

これで黒ギャルビッチじゃなければな、なんて毎度同じ事を

ゲームを続けるリオを横目に見て思う

そんな事をぼんやり考えつつ、化粧の匂いに包まれながら少し休むことにした……

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