第14話 聖女


 時は遡り勇者が魔王討伐に向かった頃、王城の地下牢に聖女はいた。おうが秘密裏に牢獄へと誘って投獄したのであった。


「だせぇ!私がいないと勇者は戦えないんだよ!出せよ!」

 その頃時を同じくして地下牢にいたのは馬鹿二人だった。

「うるせぇよ、ったく静かにしろ!」

「みんな勇者勇者ってよ!ったく!」

 声が聞こえたので声をかける。

「誰がいるの?私を出して!」

「出れねーよばーか」

 出る気もないけどな。

「出してくれたら御礼はします」

「なんだよ礼って?」

「…城を差し上げます」

「は?マジで言ってんの?」

「くれるんならもらうけどよ!」

「嘘じゃねぇだろうな」

「約束は守ります」

 男二人は立ち上がると。

「スーパーカッター」

“ガチンッ”

 扉が開く。

 そして、聖女の扉も開かれる。

 もう勇者は討伐に行ったことはわかっている。

「私がいないと…」

「ん?でこれからどうすんだ?」

「街の外へ出ます!」

「捕まるんじゃねーの?」

 こういう時は頭が回る馬鹿二人は、馬車を盗んで街の外に出ると聖女の言う通りに旅を始める。窃盗を繰り返しながらなんとか魔王城へつく3人はもう魔王のいない城の中へ入って行く。

 城の中の財宝は手付かずで置いてあったので二人は目の色を変えた。

「いやっほー!ここで遊んで暮らせるぜ!」

「贅沢し放題だな!」

 聖女は魔王が倒されたのを知ると踵を返す。

「おいどこへ行く?」

「約束は果たしたわ」

「まぁ。そうだけどな」

「いいさ、どうにでもなるだろ?」

「それもそうだな」

 聖女はどこかへ行ってしまった。


 それからは贅沢三昧を楽しんだ二人は王都の兵が来るまでに財宝は使い切っていたらしい。


 聖女は転々としていたそうだが何をしていたのかはわかっていない。




 さて、帰ってきたら家と仕事ができたとはいえ髪は伸び放題だし、カットしに行かないといけないな。スーツもくたびれてるから買わないと。

 朝飯はさっき買ってきたのでいいか、久しぶりにこっちのコーヒーを飲んで感動している。それに若返ったからか顔を洗ってから髭が少ないのもいいことかな?

 まぁこちらの年齢でいえば35歳になるのかな?

 それから朝飯を食い、髪をカットしてサッパリして、スーツも買いに行った。収納が便利すぎて、なかなか慣れないな。


 次の日のために履歴書も買って家に帰るとなんで書いていいのかを考えながら久しぶりに机の上で悩んでいたが嘘をかくわけにも行かないのでそこは白紙にしといた。


 履歴書を書き終え昨日は酷かったなと思い出す。スマホの充電が済むとメールが届いていて解雇通知と大家さんからの電話だった。全て物は捨てられていてもう別の人が住んでるがこれまでの家賃を払えとのことだけど賃貸物件だし賃貸会社から引かれてるはずだというとぶつぶつ言いながら電話を切られた。


 まぁ、もう会うこともないだろうしいいのだけど気持ちの問題だよな。


 まぁ、明日のためにやれることはやったのだからゆっくりしようとソファに座りコーヒーを飲みながらテレビを見る。知ってる番組がなかったりして少しがっかりしてしまったがいきなりスマホのアラームが鳴り、地震が来る!

 収まるとテレビでは津波の心配はないと言われていたが何か久しぶりの感覚がと思い『トーチ』と唱えると指先に火が灯る。


 なんでだろ?と思ってると工藤さんから電話があった。

「知念君!今から出れるかい?迎えに行かせるからすぐにきてくれ」

「は、はい」


 下で待っていると秘書さんが迎えにきたのでその車に乗る。


 豪邸の前で停車して秘書さんについて中に進んでいくと、

「こちらです」

“コンコン”

「入りなさい」

「失礼します」

 中に入ると工藤さんがソファーに座っていて対面に座るよう指示される。

「テレビは見たかね?」

「え?は、はい?地震が起きましたよね?」

「その後だ、これを見たまえ」

 とテレビをつける。学校と思われる場所に塔が立っている。

「あぁ、だからか」

「あれが何かわかるのかね?」

「多分ですけどダンジョンですね」

「なるほど、ダンジョンなんてものが出たということは」

「はい、魔法なんかが使えますね『トーチ』」

 指先の火にびっくりしている工藤さんはほかにもみせてくれといったので危なくない生活魔法を見せる。

「す、凄いな」

“コンコン”

「お父さん、あ!クオンがいる!」

「髪切った!」

「あぁ、二人とも久しぶり」

「こら、二人とも何をしにきたのだ」

「あ。ごめんなさい、魔法が使えるようになったので伝えにきたの」

「『トーチ』」

「な!お前たちも使えるのか!」

「はい」

 俺の膝の上にヨミが座り、横にはルナが座ってる。

「私にも使えるだろうか?」

「あ、はい、これを」

 魔導書がドロップしたとき取っておいたやつがある。それを渡すと、

「この古い本が、な!」

 開くと自動的にパラパラとめくれて閉じると消えてなくなる。

「わ、分かるぞ!つかえるぞ!『トーチ』」

 自分の指先の火を見つめて喜ぶ工藤さん。


 いい大人がはしゃぎすぎだろ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る