十六章 パラグラフリーディング
成海は相互監視の観点から、白い蠍が三浦を流血の金魚祭りの主犯にしたのだと説明した。そう考えれば、どちらも同時に脅迫できるからだ。しかし、三浦が主犯にもかかわらず、寺崎のほうが立場的に低いという状況は、仲違いの遠因になった。ふたりの口論は、よく目撃されていた。
その内容は流血の金魚祭りにかんすることだった。内部の者ならば、きくことができる。それが殺人に繋がったのだ。この前提は、五人の容疑者に、犯人がいることを示していた。
そのとき、沼田の携帯電話に定期報告がはいる。桜井の取り調べが切り上げられたという報告だった。警察の内規が理由だった。桜井はそうとも知らず、自由にするかわりに、自分の知っている事実を進んで証言した。その証言によって、流血の金魚祭りの全容を把握することができた。沼田は最後に、添付された記者会見を再生する。葛西署の署長が未明に回収した死体の部位を報告していた。
成海は記者会見を見終わったあと、おおきな不安に囚われた。犯人は、はじめて、ゴミ袋の回収を知った。記者会見には、かぎられたゴミ袋しか報告されていない。
もしも、ほかのゴミ袋に証拠が隠されていれば、白い蠍の拠点を探すかもしれない。あたらしい事件を予期した。しかし、成海はすぐに杞憂にすぎないと判断した。
もしも、証拠隠滅を試みたとしても、ゴミ袋のある拠点を見つけようがないからである。
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