Secret village~開放か秘するか。不老不死を巡る精霊兄弟の対立と和解~(コーヒーの香りを添えて)

一華凛≒フェヌグリーク

第1話 コーヒー3杯分の世界

 世界が終わるなら、何をする?

 コーヒー3杯分だけ、世界の終わりに話ができるなら【誰】と【何を】話す?


 俺はどうしようもできないから、知り合いを眺めている。


 あいつの名前は『ハイシア』。

 さざなみ色の髪と、よく晴れた日の海みたいな目を持っている。

 性別はどちらとも分からない。


 種族は精霊だから、人間じゃない。

 精霊は現象や概念――例えば海や流転――に信仰が結びついて生まれる。不老不死で、ハイシアも何億年と生きている。代わりに、精霊種に生物のような自由はない。


 例えば今、あいつは床に落ちた時計を見ている。

 何回も、何回も視線を外しては元に戻すを繰り返して、ガラスが割れてバネの動きも悪くなった時計を見つめている。

 でも拾わない。拾う自由が自分にあるのか、ハイシアには分からない。


 ドアベルの音がする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る