第24話 隠れ村で出会う八人の聖戦士
一行の大半を子供たちが占めるため、移動速度は必然的に遅くなる。
途中で
「おつかれ、キョウヤ!」
赤毛のアルバートが笑いながら、ギリギリの状態で歩いてきた僕の肩を叩いた。
子供たちの足に合わせたとはいえ、《こちらの世界》の子供たちは予想以上に
「おかえりなさい、皆さん。無事で良かった」
《
夏の太陽の光を思わせる流れるような
先頭を歩いていたツァーシュと
僕の横でアルバートが手を振った。
「おーい、アストル! 新しいお仲間が増えたよ!!」
その声に振り返る少年の顔に
《むこうの世界》でいうところの天使のような美しい
「ようこそ、私たちの《隠れ村》へ。私はアストルといいます。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「あ、あの、その……僕は
アルバートが面白そうに僕の顔を覗きこもうとするのを手で押しやる。
その様子にくすりと笑うと、アストルと名乗った金髪の少年が僕の手を取った。
「キョウヤ殿、とお呼びしてもよろしいですか? お見受けしたところ一番年長のように思えます。私たちは
「あ、えっと──」
「そうとは限らないと思うぜ」
いつの間にか近くに来ていたシリルが意地悪げに口を挟んできた。
アルバートが呆れたようにシリルの頭を小突く。
「まーた、そういう憎まれ口を叩く」
抗議の声を上げるシリルをスルーして、アルバートはアストルに向き直った。
「とりあえず、皆を休ませてやってくれ。詳しい話は夕食の時にでも」
「そうですね」
アストルは、そう微笑むと一行を村の中央にある泉の側へと案内した。
集まってきた村の住人たちに、子供たちの世話を指示するアストル。
その様子を横目で見ながら、僕はゆっくりと水辺の草むらに腰を下ろす。
「……いい村だな」
水が湧き出る泉を中心に、
住人たちも身なりは良くないが、表情は明るく、アストルやアルバート、シリルたち《
「ん、眠気が……」
さすがに疲労のピークに達していたのか、僕は身体がずん、と重くなるのを感じた。
○
「お、起きよったか」
その声に目を開くと、こちらを覗きこんでくるざんばら髪の少年、トモの顔がぼやけて見えた。
「え……?」
僕は頭を動かして周りを見る。
すると、いつのまにか建物の中で、毛布にくるまっていたことに気づいた。
近くには勢いよく炎を上げる焚き火があり、それを囲んで少年たちが食事を
「おい、キョウヤ兄ちゃん起きよったで」
「あれ、ここは……」
「キョウヤ兄ちゃん、疲れすぎたのか何度起こそうとしても目が覚めんくてな。とりあえず、村人の手も借りて、俺とラースとでここまで運んだんやが……大丈夫か? どこか痛んだりはせえへんか?」
僕は、大丈夫、ありがとうと声をかけて立ち上がる。
「……ここにいる皆、全員が《
そう問いかけながら僕が座ると、火を挟んで対面にいた金髪の
「はい、そうです」
その返事を受けて、僕はあらためて周りの少年たちに視線を向ける。
アストル、シリル、ツァーシュ、アルバート、ラース、トモ、そして、もう一人、はじめて顔を合わせる黒髪の少年。
この中のリーダー格なのだろうか、アストルが代表して言葉を続けた。
「事情はこちらのシリル殿から伺いました。あの、キョウヤ殿……と、お呼びしてよろしかったでしょうか?」
「あ、そんなに
戸惑う僕に、シリルが小さく笑った。
「アストルは誰に対してもこんな調子だから、気にしてもしかたないさ」
その言葉に苦笑するアストル。
「なにはともあれ、ご無事で良かったです。聞けば危ないところだったとか。シリル殿とアルバート殿も本来の目的とあわせて、良く対応していただけました」
赤毛のアルバートが、ぱたぱたと手を振った。
「いやぁ、キョウヤに関してはおれたちの手柄っつーわけでもないっしょ。
あっけらかんとした口調だったが、その二人の名前が出たことで、座の空気が少し重くなってしまう。
僕は声を押し出した。
「ピアージオさんは僕のせいで……それに、カリーナさんもひとり
アストルが僕を正面から見据えてきた。
「ピアージオ殿のことは確かに残念ではありますが、キョウヤ殿がずっと気に病まれても誰も幸せにはなれません。これからのことを考えるべきです」
「カリーナだって、頭は良いし度胸もある。女にしとくのがもったいないくらいのタマだぜ、そう簡単にくたばらねーよ」
ぶっきらぼうに言い放つシリル。
一見わかりにくいが、彼なりに僕を慰めてくれているのかもしれない。
それに気づいたのか、トモとアルバートがニヤニヤと視線を交わす。
「とりあえず、この話はいったん置きましょう」
軽く手を打つアストルに全員の視線が集中した。
「そうですね、キョウヤ殿もまだわからないことだらけでしょうし、あらためて自己紹介をしておくべきだと思うのですが、その前にひとつだけお尋ねしたいことがあります」
金髪の貴公子の顔から笑みが消えた。
「キョウヤ殿は、これからどう行動されるおつもりですか?」
全員の視線が、今度は僕へと向けられた。
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