#008.Come Together
「うう..」冷たい床の感触がひしひしと頬に伝う。
床の跡が付いた皮膚をさすり、その生を確認するように起き上がる。顔を上げる。疲れた様子のメビウスが目に入る。視線を落とすと、干からびた何かが二つ、落ちている。
カクポンタスは初めに見た時のように、鉢に収まり落ち着いている。少し数が減っている。そうだ、僕が火をつけて...そこまで思い出し、ハっとして足を見ると何の異常もない。一つもだ。
ばかな、と思いながらも僕の心には何故か妙な納得感と安心感があった。何かずっと抱えていた悩みを信頼できる誰かに打ち明けたかのような。そしてそれを受け入れてもらえたような。
不思議に思い、手の指を曲げ、伸ばしてみる。ビリビリと血液が走るさまを体感し、なぜかそれがとてもうれしかった。
メビウスはそんな僕の様子を蔑むでも、虐げるでもなく、ただ黙って見ていた。僕は彼のそんなところが気に入ったのかもしれない、と密に思った。そしてこの思いが双方向であることを心から願った。
おそらく彼がこのカクポンタスたちを治めたのだろう。一時は彼への友情を疑った僕だったが、気を失った間に彼が頑張っていたと思うと、素直に感謝の念が浮かんできた。
「メビウス、ありがとう。」少しはにかんだ僕を見て
「あァ...いいんだ。」と短く返し、その長髪をなびかせ、頭を掻いた。
数秒の沈黙の後、メビウスは徐に口を開いた。
「なァ...ハイメ、これからどうするんだ?あのォ..おまえさんがそうしたいって言うなら..だが、オレと一緒に来ないか?」
ハイメはその言葉を待っていた。上も下も、右も左も分からなくなった彼の暗闇に注いだ一筋の光はメビウス以外には考えられなかった。ハイメは運命に今一度、感謝した。
「行くよ。」
こうして目的も理由も知らない旅が、ハイメの命に訪れた。
そしてハイメは、その旅にどんな凄惨な結末が待っていようとも、受け入れようと心に決めた。
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