34. メルドの後始末
メルドは取り押さえられたけど、私たちは解放されなかった。
メルドのやったことについて個別に話を聞く必要があるということで、城の部屋に軟禁されることになったのだ。
また、メルドはコンロンにも兵士を派遣していたようで、その兵士ともみ合いになっていたグリッド君も軟禁されているらしい。
こんなことになるならレイテスに来るんじゃなかったよ。
「ああ、暇だなぁ。というか、みんな大丈夫かなぁ?」
レイテスの城に軟禁されて10日が経つ。
その間、取り調べらしきことは1回だけされたけど、そのあとは音沙汰もない。
部屋の中ではメイドがひとり、部屋の外には兵士がふたり監視につき、トイレに行くときも常に見張り付きだ。
ほかのみんながどこにいるかもわからないし、逃げ出しようもない。
本当にどうしたものか。
「こういうとき、コンロンのレシピ集があればそれを覚えることもできるんだけど」
コンロンもどうなっているかわからない。
結界を張っていれば手出しどころか動かすことさえできないはず。
それでも心配なんだよね。
なにかできることはないかな……ないか。
それからさらに10日経ち、本当に暇を持て余していたところ、急に部屋から連れ出されることとなった。
今度はなんだろう?
「あ、ミリア」
「主様、ご無事でしたか?」
「やっほー、マスター!」
「みんな!」
連れてこられた部屋にはみんなが揃っていた。
全員無事なようでなによりだよ。
それにしても、全員を集めてどうするんだろう?
「お待たせしました。皆様、おそろいですね」
「あ、ファムさん」
私が席に着いて待っているとファムさんがやってきた。
ファムさんの顔も久しぶりに見るなぁ。
でも、どこか痩せこけているように見えるけど、大丈夫だろうか。
「本日、メルドの処刑が終わりました。これで皆様を無事に解放できます」
「え、メルドが処刑?」
「はい。詳しくは話せませんが、皆様に対する言動のほか、恐喝、横領、違法奴隷売買などが確認されたため公開処刑となりました」
うわ、そんなことまでやってたんだ。
だけど、それと私たちを軟禁していたこととなんの関係があるんだろう?
そこについて聞いてみると、メルドの子飼いだった兵士や官僚が私たちの暗殺を企てメルドを解放しようと企んでいたらしい。
そのために私たちを軟禁……というか、保護していたというわけだ。
うーん、貴族の厄介ごとに巻き込まれているなぁ。
「それで、今後はどうするの?」
リコイルちゃんが厳しめの口調でファムさんに問いかける。
今後のことは私も知りたいな。
「まず、今回の件の賠償として皆様に金貨1000枚を差し上げます」
「口止め料?」
「そうとってもらっても構いません。もっとも、メルドの悪事はすべて公表しているため、外で話をされてもあまり困ることもないのですが」
「ふうん。それで、ほかには?」
「追加の依頼なのですが、エリンシア様と私をコーラル伯爵のもとまで連れていってはもらえないでしょうか?」
「却下。状況が危なすぎる」
リコイルちゃんは私の判断を待たずにファムさんの依頼を断った。
申し訳ないけど、私もちょっとこれ以上関わるのは嫌かな。
「わかりました。そちらについては諦めます。では、コンロンに積んである今回の依頼で余っている食材を売ってはいただけないでしょうか?」
「食材を?」
私は不思議に感じ思わず口に出してしまう。
すると、ファムさんは最近食糧がレイテスに届いていないと教えてくれた。
「いますぐどうこうというわけではありません。しかし、なぜか食糧の流通が止まっています。この先の状況次第では城の備蓄も放出しますが、それとて無尽蔵ではないのです。コンロンには本来兵士たちに供給する予定だった食材がまだ残っているはず、それを売ってはいただけないでしょうか?」
「……どうする、ミリア」
「それくらいなら、別にいいかな」
私としては残っている食材の処分は特別気にする物でもない。
この街で露店をするつもりはないけれど、コンロンの貯蔵庫に入れておけば腐らないから別の街で売ればいい。
でも、この街で売ってもいいんだよね。
なら、それくらいは譲るとしよう。
「ありがとうございます。それで、どれくらいありますか?」
「オーク肉、ジャガイモ、人参、タマネギは大量に、パンはそれなり、ライスも大量にありますがどうします?」
「そういえば、パンを焼いていることがありませんでしたね?」
「コンロンにはパン焼き窯は付いていないので」
機能をアップグレードすれば手に入るんだけどね、パン焼き窯。
いまのところは必要がなかったから手に入れてなかったけど、これを機に手に入れるのも悪くないかも。
まあ、いま小麦粉がほとんどないのは事実だけど。
「それではライス以外はすべて買わせていただきます。パンも城の者たちが食べる分を考えれば、傷む前に食べきれるでしょう」
そういえば、コンロンの貯蔵庫は腐らないから忘れていたけど、パンって腐るしカビも生えるよね。
本当に忘れてた。
あと、もうしばらくレイテスに滞在してもらいたいって言われたけど、さすがにそれは断った。
これ以上なにかが起こるとは思っていないけど、あまりこの街に居続けたくはない。
エリンシア様とファムさんには悪いけど、こればかりはね。
ファムさんのお願いはこれで終了、あとは食材の値段交渉だが、これは面倒なのでファムさんの提示した金額で売ることにする。
価格交渉をしなければいけないほどお金に困っているわけではないし、詳しく量るわけではないのでお任せだ。
特別損をするとは考えていないしそれでいいだろう。
ぶっちゃけ、そんなことよりこの街を離れたい。
お貴族様の勢力争いにこれ以上関わるなんてごめん被りたいよ、ほんと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます