おしまい

君の後ろ姿がふいに揺れた。




正面で向き合うより、背中合わせに支えあうほうが楽な、そんなふたりだった

顔を見て確かめるより、お互いの温もりで分かり合うのが得意だった

君のこと、本当に好きだったよ


間違えた、という事実を理解することもすらできなかった

好きな君のこと、分かったつもりでいたけれど、全然そうじゃなかった

気がついた時には、君は砂のように私の手をすり抜けていた

もう手遅れだった


さよならなんて言いたくない

そうごねる私に君はこう言った

もっと前にその言葉を聞きたかった

それを理解したときにようやく気がついた

先に裏切ったのは私か

ただ自分の理想を押し付けたのは、君を傷つけたのは私か




だからおしまい。


私の後ろに、君の温もりはない。


あぁでも、とても好きだった。


今だって夢を見るの。


あのときは確かに、ふたり愛し合っていた。


でも大事な時に、君の姿は揺れて、あぁ私、一人なんだって、




背中、冷たいな。


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