第19話 4度目のクリスマス・イヴ⑤

 ガチャリと、鍵の閉まる音が部屋中に響きわたった。


「おい。何で鍵閉めたんだよ」

「邪魔が入ると悪いから」

「邪魔って……。いいから、開けといてくれ」


 内側から鍵をかけた竜胆を諫める。


 すると、彼女は徐にエプロンを脱ぎ始めた。


――なぜにっ!?


 健康的な細身の身体。肌は白く、胸部にはかわいらしい豆が二つ付いている。


「ちょっ、おまっ!」

「ここまでさせたんだから、責任とってくれるよね?」

「責任って、お前……」


 頼んでもないことに対して、どう責任をとれと言うのか。


 竜胆の肢体を見ないよう目を伏せていると、突然、彼女が僕を抱きしめた。


 そして、彼女はしおらしい態度で、僕に懇願した。


「春一のことが好きなの。私を抱いて、あんたのものにして」


 竜胆は火照っているのか、やけに温かく感じた。


「落ち着けよ、竜胆」


 常識的に考えて、そんなおいそれと「セックス」するわけにもいかない。


 それに、この壁の写真も心残りだった。


 幼稚園から大学生まで――


 ありとあらゆる場面、場所の僕を見て、「ああ、またヤバい奴だった」と、心底げんなりした。


「私じゃダメなの? 私の何がダメなの?」


 詰問するように、竜胆は僕に迫る。


「ダメとか、ダメじゃないとか、そういう問題じゃないんだよ。さっきも言っただろ? 急なんだよ、何もかもが」

「――分かった」


 僕の言葉がようやく通じたみたいだ。


 竜胆は僕から離れた。


「分かってくれたの――」


 言葉を発している最中、竜胆が僕のズボンに手をかけた。


「つまり、いいんだよね?」

「お、おまえ! ばかっ!」


 抵抗する間もなく、僕のズボンがパンツごとズルリと下ろされる。


 腰をがっちりと掴まれ、固定されると、安易に身動きが取れなくなった。


「すごい……おっきい♡」


 竜胆の鼻息が荒々しくなる。


 彼女の鼻からスーッと抜けた空気が下腹部に当たり、背筋のあたりがゾクゾクした。


「り、竜胆! やめっ――」


 制止もむなしく、「竜胆の口」に、僕は包まれた。


「はぬんっ……!!!」

「ひもひぃ?」


 ぬるぬるした感触が脳内を侵していく。


 身体中が快楽で満たされていくと、やがて僕は立ってられなくなった。


――こ、腰が……。


 ヘナヘナとその場にへたり込むと、竜胆が僕の乳首をギュッと掴んだ。


「ンギィっ!」

「痛い? 大丈夫、だんだん気持ちよくなるよ♡」

「い、いい加減にしろっ! 竜胆!」


 彼女の頭を掴み、無理矢理引き剥がす。


 多少強引だったか……?


 心配するも、竜胆は僕を見るやいなや、舌を出し「何かをアピール」した。


「レロっ……♡ 元気になったね♡ 春一♡」

「……ッ!」


 獣みたいにダラダラと涎を垂らす竜胆。


 僕がよく知る幼なじみの顔はそこになく、ただ一人の「女」の顔がそこにあった。


「やっぱり、春一も私とシたいんだね♡」


 四つん這いになりながら、竜胆が距離をつめる。


「やめろ……。くるな……」


 僕は尻餅をついたまま、後ずさりする。


 だが、追い詰められていることに変わりはない。


 トンッ。


――あっ。


 壁にぶち当たる。


 首を六〇度曲げると、そこには「僕」の顔があった。


 ただ、遠目では分からなかったが、そこでもう一つの「狂気」に気付いた。


 写真に写っているはずの「他の被写体の顔」が、のである。


 春一♡


 僕の名を呼ぶ竜胆が、身体を覆う。


 それと同時に、竜胆は僕の愚息をギュッと掴んだ。


「アッ――」

「愛してるよ♡」


 自らの蜜壺に僕をエスコートした竜胆は、舌なめずりをしながら、そう呟くのだった――

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