第17話 【陽奈】歓迎会(1)

今日は18時から私の歓迎会だ。

別の部署の、外山さんという人と、谷口さんという人も最近入ったらしく、3人あわせての歓迎会ということで、かなり大規模な会だ。


知らない人ばかりで少し緊張するが、めぐと、いつもランチをご一緒しているめぐの親友的おじさん、秋山さんも一緒だから、少し安心。近くに座れるといいな。


定時になり、めぐと秋山さんのいる2階へおりた。

エレベーターを出ると、3階から階段でおりてきた奏多さんと遭遇した。

「あれっ、ひなちゃん!社内で会うの珍しいよね!今日、場所知ってるから俺も一緒にいくから!」

「奏多さん場所わかるんですね!よかったです。私、方向音痴で。。」

奏多さんは少し鼻の穴を広げて、まかしとき!といいたげなポーズをとった。


2階には業務でよく出入りするので、メンバーともそこそこ面識がある。

「お疲れ様でーす」

ドアを開け、フロアに入る。


「あ!陽奈!奏多さん!ちょっと待ってね、すぐ出るから。秋山!いくよっ!!」

「あいよー」


秋山さんは40代くらいだと思われるが、穏やかで聞き上手、物腰の柔らかい人だ。馴れ馴れしいところのあるめぐだが、年上の社員で呼び捨てにしているのは秋山さんだけである。

毎日毎日ランチにいっているわけだし、それだけ仲が良いのだろう。


奏多さんの案内で、無事会場に辿り着いた。

座席は掘りごたつになっており、1フロア貸切だ。


めぐの上司である2階のボス、太田部長が私たちを見つけ、真ん中に案内した。

「君たちこっちねー。6人席だから、あと神山部長と稲田副部長きたら、同じテーブルに案内して」


立ち話がすんで、どこに座ったらいいか見渡すと、奏多さんがすでに、私の立っている後ろにコートとカバンをおき、深く腰を下ろしていた。前にもめぐがいて動けなかったので、とりあえずそのまま座ることにした。


「ひな、何飲みたい??」


奏多さんが急に呼び捨てにしてきてびっくりしたが、チャラい人あるあるなんだろう。


「私はビール苦手なので、カシオレで。。」


「わかるー!俺も、ビールとかより、バーのカクテルとかの方が好きなんだよね。ひなは、おしゃれなバーとかよく行く?」


「いえ、あんまり、そういうタイプの人が周りにいなくて、居酒屋とかが多いですね〜。」


「そーなんだ!意外。俺、バーとか詳しいんだよね、女友達とかもよく連れてってて。最近できたダーツバーが気になっててさ、今度一緒に行かない?」



奏多さんはチャラそうだけど、女友達も多そうだし、普通に友達として誘ってきてるんだろうな。せっかくだし、誘いに乗ってみよう。


「ダーツバー、楽しそうですね!行きましょう!」


私がそう答えると、奏多さんは急に真顔で顔を近づけてきて、耳元で小声で囁いた。


「この後!!解散になったらまっすぐ行こうよ!!ここからすぐ近くだから!!」


私はグイグイこられるのは苦手なので、一瞬戸惑ったが、行きましょうといったのに断るのも気まずいので、了承した。


「いいですよ。」


目力があまりにも強すぎて、普段は鼻から下の動きだけで喋っているようにみえる奏多さんが、虹のように目を細めてにっこり笑った。

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