第7話 【陽奈】河川敷でバーベキュー(1)

日曜日。

先週急遽企画された会社のバーベキュー大会にお呼ばれしたので、新入社員の私も参加することにした。


無職期間が長かったので貯金はないが、一発目のお誘いからお断りするのも気が引けるし、なにより私はお酒が好きなので、女性1000円という設定は「マジ神!!」状態だ。


ちなみに来週は歓迎会をやってくれるらしい。(もちろん私は無料)

同じフロアの人は10人くらい覚えたが、なにせパーテーションで区切られていてあまり顔を見る機会がない。神山部長は私にあまり仕事を振ってくれないので、稲田副部長がいない日は正直暇である。早く社内の人と仲良くなって、自分ができる仕事を増やしたい。



金曜日、社内でドキドキする出来事があった。

エレベーターで一緒になった人が、元彼にそっくりで超タイプだった上に、私の名前を知っていて話しかけてくれた。

恥ずかしすぎてすぐ目を逸らした私の態度がそっけなく見えたのか、上から目線の女に見られたようで、

「アンタあたしのこと好きなのね〜って感じする」みたいなことを言われてしまい、ちょっと困惑したけど、いやいや、むしろ、あたしがあなたを好きです!!好きになりました!今!!みたいな。


あの人、初めて見たけど何階の誰なんだろう。年は私よりも結構上っぽかったな。背が高くて、肩幅も広くて、クマさんみたいな人。なにより、頼りなさとワイルドさを足して割ったようなつぶらな瞳、タイプすぎる。


バーベキューにもあの人はくるんだろうか。楽しみすぎる。

私は会社で普段着ている服とはまた違うテイストの、ギャル系のファッションに身を固め、カラコンをいれた。彼は、何系のファッションが好きなんだろう。ギャル系は好きかな。年下は、恋愛対象かな。

てか彼女とかいるのかな。


元彼と似ていてドキドキするとか、ちょっと失礼なかんじだけど、恋する心は止められない。


ワクワクしながら私は河川敷へ向かった。

あまり早くついても、知らない人ばかりだと困るから、5分前につくように歩いた。


幸い、ついてすぐ、火おこしを手伝っていた恵(めぐ)が私を見つけて手招いてくれた。

「あれっ!陽奈!?なんか会社のときと全然雰囲気違うね!」

「そう!?‥‥てかさ、めぐに聞きたいことある!!」

「どした!?」


私は興奮冷めやらぬまま、恵を少し離れた場所に引っ張っていった。

「会社にさ、なんかすごいでかくてワイルドな人いない?」

「ワイルド?うーん、背が高い人は結構いるけど、、、」

「なんかちょっと闇がありそうなミステリアスな顔の人なんだけど」

「えー???うーん、ミステリアスなら川原さんかなあ。でも背は高くないし、、、あ!小倉さんかも!!!!」

「小倉さん!?何階の人??」

「小倉さんだとしたら、3階の部長代理の人だよ。でかくて、たしかにワイルドかも。陽奈、あーいうのがタイプなの?」

「小倉さんかどうかまだわかんないけど、、、」

「小倉さん今日きてるよ!さっき、あっちの奥のテントの方にいた。」

「マジで!!??えっ、でも違うかもだし、急に話しかけるのも変じゃない?」

「いいじゃん!いこいこ!」

恵は私の手を引っ張ってテントの方へ走り出した。

「えっ!ちょっと待って!!まだ心の準備が!!」

心臓の鼓動が身体中に鳴り響いた。

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