第16話 秘匿されるダンジョンの面々

 ゴセキの山頂付近にある、竜王の居城。険しい地形を利用して築かれた城は、誰の手によって築かれたは定かではない。

 今俺とブランシュは玉座の間にいる。目の前にはゴセキの山の主だった竜族が集まり、ひれ伏し服従の意を示している。


 ザキーサがブランシュの肩に居座るため、玉座にはブランシュが座らされ、それが気まずくて仕方がない。


 その竜族の先頭にて跪く竜人。ザキーサが地中に逃げ出した後の、この竜族を取り仕切っている実質竜王のラドル。

 本当の姿は、ミショウの倍以上の大きさがあるが、ザキーサと同様に肥大化した体を小さくしている。銀の翼と長い尾だけが、元の姿を感じさせる。


「ラドルさん、本当に大丈夫なのか?」


「実にめでたい。誠にめでたい。数百年ぶりに、地下から居を移すのです。それが生まれ故郷の始まりのダンジョンなら、我も大歓迎。やっと竜王代理の職責からも解放されるというもの」


「でもな、ダンジョンの中だぞ。それにブランシュとの契約にだって縛られている」


「それで生まれ故郷に戻れるのなら、実にありがたい。やはり、故郷の魔力が体に一番馴染む。ザキーサ様が実力を示せば、竜族の棲む場所くらい借り受けれるでしょう。そうですね、ザキーサ様」


 ラドルは笑いながらも、時おりザキーサに向ける視線は鋭い。


「うっ、うむ、そうだな。いずれは、そうなるやもしれん」


「それでは、是非この者達をお連れ下さい」


 ラドルの言葉に、2人の竜人が現れる。赤角のあるレンファと青角のあるリリカ。どちらもヒト型の形態で、ミショウ以上の力があることを示している。


 俺達がゴセキの山を訪れた理由は、魔力を消費してくれる魔物を借り受けること。それを受けてのラドルからの提案であり、拒否することは出来そうにない。


「ザキーサ様、再びお仕え出来る日を心待にしておりました。ねえ、リリカ」


「はい、ザキーサ様をお守りするのが、我ら夫婦となる者の使命ですわ。ねえ、レンファ」


 そして、俺達の周りに多重の結界が張られる。ザキーサを守るのではなく、逃がさない為の結界。ザキーサが地中に引きこもっていたのは、この2人から逃げるためなのかもしれない。


「さあ、レヴィン殿。先に私たちをダンジョンへとお連れ下さいませ。ねえ、リリカ」


「そうですわ、私たちが転移魔法陣をつくってしまえば、後はお手を煩わすこともありませんわ。責任を持って管理させてもらいますので、ご安心下さい」


 何れはダンジョンの一部は、ゴセキの山の竜達に占拠されるかもしれない。ただ出来たばかりのダンジョンには、分不相応であり、絶対にバレてはいけない者達だけが増えてゆく。


 リリカが差し出すマジックポーションで、俺の魔力が強制的に回復され、第6ダンジョンの最下層へと転移が始まる。




 ゴセキの山に居たのは半日ほど。しかし戻ってみれば、第6ダンジョンの最下層にある指令室は、様変わりしている。

 大量に並べられた、大小様々な容器。それが、部屋の中を所狭しと埋め尽くしている。


「マリク、どうした。何があったんだ」


「大量に出てくるんっすよ。まだまだ、これもほんの一部。ヒケンの森のドライアドやトレントとも仮契約したから、後で対処お願いしますよ」


 始まりのダンジョンから、大量に見つかるラナのつくったサプリ。5階層までの隠し部屋の全てがサプリで埋め尽くされていた。

 それが次々と、第6ダンジョンへと運び込まれてくる。ラナの従者であった爺も、ヒケンの密林では伝説級のトレント。急速に勢力を拡大し、精霊が次々とダンジョンの中へと流入している。


「リリカ、あれはラナ様ですわ!」


「まあ、本当ですわね。レンファ!」


「ああっ、リリカとレンファ」


 ラナとリリカ・レンファは旧知の仲であったらしく、抱き合い再開を喜んでいる。


「心配しておりましたの、こんなに大きくなられていたなんて、安心しましたわ。ねえ、リリカ」


「また、ダンジョンでご一緒出来るなんて、嬉しいですわね、レンファ」


「うん、ラナはお姉さんになったの」


 その光景で、ラナも規格外の化物級であることを、改めて思い知らされる。まだ、始まりのダンジョンに住まわす魔物も決まっていないのに……。

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