第11話 ダンジョンコア?

「レヴィン、第6ダンジョンが健在なのは分かったわ。でも肝心なのは、私達の第13ダンジョンのコアでしょ」


「ああっ、分かってるって」


 俺は何も言ってないが、マリクは既にキーボードを操作している。普段はお調子者でサボることばかり考えているが、いざ仕事モードに入れば、そこは俺の右腕となる存在。

 俺の視線や僅かな表情の変化だけで全てを察知し、先読みして行動出来る男。喋らなければの話だが。


「先輩っ、これって」


 マリクがモニターに映し出した監視カメラの映像。そこには、黄色の光を放つ、ヒトの頭ほどの輝石。第6ダンジョンのコアがあるはずだった。


 しかし、今その場所に鎮座しているのは全く別物の輝石。


 第6ダンジョンの輝石の黄色い光は、土属性を強く示している。だが今は、月光のような優しい光を放ち、ハロの輪を纏う神秘的な輝石となっている。


 それは、ブランシュの持っていた小指の先程の大きさの欠片とも全く異なる。でも、ダンジョンコアが何個もあるはずがない。


「ブランシュ、これで合ってるよな?」


「映像だけでは分からないわ。あまりにも姿が違い過ぎるし、急激に進化したコアなんて、過去の記録にも文献にも残ってないわ」


「先輩っ、少しマズいかも?」


「何がマズいんだ? いつも報告は明確にしろって言ってるだろ」


「いや、その、計器の確認は必要だと思うんすけど、ダンジョンの魔力が増え続けてます」


「魔力が多いにこしたことはないだろ。消費してる魔力だって少ないんだ。増えて当たり前だろ」


「いや、獲得する魔力そのものが増えてるんっす。このままだと、ダンジョンのパンクは時間の問題っすよ」


 ダンジョンから得られる魔力の7割は神々に搾取され、残りの3割がダンジョン運営にまわされる。パソコンなどの機器や、魔物の糧となる魔力・ドロップアイテムの生産、全てのものに魔力が消費される。


 消費魔力が供給魔力を上回ることはあっても、その逆になることなんてあり得なかった。


「そんな馬鹿な。第6ダンジョンの半分は壊滅。機能していないんだぞ」


「だから、確認するしかないって言ったじゃないっすか」


 モニターの映像だけでは分からない。ダンジョンコアのある深層部へと移動する。コアの間へと続く扉を開ければ、濃い魔力が流れ出してくる。


「なんて濃い魔力なんだ。質も全く違う」


「そうね、天界でもこんな上質な魔力は見たことがないわ」


 ブランシュが近付くと、共鳴するようにコアの輝きが増す。それが、このコアが第13ダンジョンのコアであることを証明している。


「コアの形は、第6ダンジョンのコアと変わっていない。でも、中身は別物か」


「そうね、2つの輝石が融合したのかしら、それとも……」


 しかし、その先を俺もブランシュも口にすることは出来ない。


「先輩っ、計器にも異常ないっす。依然として、ダンジョン内の魔力濃度は上昇してます」


「ダンジョンの全てのものを稼働させろ。少しでも魔力を消費するんだ」


「もうやってます。でも、これ以上は無理っすよ」


「それで、どれくらい持ちこたえれる」


「どんなに計器に、空調・設備を全開にしても、持って3ヶ月」


「よし、それまでに人手を集める。手段は選ばない。ブランシュは天界に求人を! マリクは、大至急カシュー達を呼び戻せ!」


「それだけじゃ、消費出来ないっすよ」


「分かってる。俺は、ザキさんにお願いする」


「ちょっと待つドラ。オイラがもっと進化して、魔力を消費してみせれば、問題ないドラ」


「ちょっと待ってよ、レヴィン。ザキさんて誰なの? 地竜が怯む相手って?」


 この世界の最強種の魔物の一つが竜種。その中でも頂点に君臨するのが8体の古代竜。その内の1体が、ヒケンの森の北にあるゴセキ山脈に棲んでいるザキーサ。


「古代竜のザキーサ。エンシェントドラゴンってやつだよ」


「えっ、そんな相手と繋がりあるなんて聞いてないわよ!」

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