第8話 自称森の大賢者様に聞いてみる2

「あんな。ただ飯食らってるだけやないで」


 ラグが子猫を指さしてドヤ顔をする。


「こいつら、寝てるか飯食ってるか暴れてるか、ぐらいやけどな、集まるとアクティブディフェンススキルが発動されんねん」


「は?」


 アクティブディフェンスって。

 なにやら難しいことを言い出したぞ。


 ラグによると、子猫のうちは自然と防御結界が

 できるんだと。

 普通の結界と違うのは、攻撃された場合、

 これを無力化すること。


 これには2つあって、

 ジャミングやデコイによって相手を混乱させ、

 無力化するもの。

 攻撃されたものを検知して物理的に破壊するもの。

 

「もっとも、ゴブリン程度やな。弾けるのは。それより強い敵はムリや」


 森の生存競争は厳しい。

 子猫に限らず、生まれたての魔物は

 他の魔物の餌食になりやすい。


 ラグは子猫を見つけるとある程度まで育てて

 リリースしてきたらしい。


「(一応、同族やからな)」



 ところで、ゴブリンにしても僕は簡単に排除している。

 でも、普通の人間よりも強いらしい。

 力も強いけど、何よりも超攻撃的な性格。

 闇雲に攻撃してくる。

 人間ではこの殺気にぶるってしまうんだと。


 ゴブリンだけじゃない。

 この森の獣や怪物。

 おっそろしい奴ばかりだ。


 つい先程のこと。

 レーダーに赤点が点滅したと思ったら、

 直後に赤点が突っ込んできた。

 猛烈なスピードだ。

 まあ、結界に激突したんだけど。


 激突したのは、ツノウサギだ。

 兎の額に一本の角が生えてる。

 アルミラージとかいう別名がある。

 アルミ・ラージじゃなくて、アル・ミラージ。


 非常に獰猛な兎だ。

 昨日も僕が外でコーラ飲んでたら、

 こいつが突っ込んできた。


 兎だけど、全然可愛くない。

 まず、目が獰猛。

 血走ってマナジリが上がっている。

 眉間にシワが寄ってるし、口には牙が生えている。

 車に尋ねてみると、肉食よりの雑食性らしい。

 つまり、僕を食べようとしてたんだな。

 結界に激突してお亡くなりになったんだけど。


 ツノウサギは魔獣に分類されるらしい。

 繰り返すけど、魔素に慣れた獣っていうやつ。

 体内の魔素濃度が高く、オリジナルよりも

 身体能力が5割増し以上になっているんだと。


 魔物と違って霧散しない。

 サバけば魔石を獲得できるし、

 肉を食べることもできるというけど、

 僕にはムリ。

 サバくのも食べるのも。


 以上の情報はラグが教えてくれた。



【お風呂とトイレ】


 ところで、車がレベル4になってハイ◯ースサイズになった。

 かなり大きくなったんだけど、

 後部に独立したトイレ・シャワールームができた。


 トイレは超上位互換のウォッシュレットだ。

 排泄物はすぐに分解され霧散する。

 空気もキレイなままで異臭がしない。

 お尻も快敵だ。


 シャワールームは、服を着たまま入っただけで

 全身がキレイになる。

 毎日キレイにしないとちょっと気持ちが悪いから、

 この設備は助かる。


「(清浄魔法やな)」


「魔法?」


「(せやで。風魔法の応用やな。上級魔法や)」


 ラグに言わせると、

 非常に精緻な魔法コントロールが必要で、

 習得している者は極めて少ないという。


「車に魔法があるんだ」


 僕には一大事だ。


「(なにを今更ゆーとんねん。この車、不思議機能満載やないか)」


 確かに。

 ラグに言わせると、この車の機能のほとんどは

 魔法では説明できないという。


「(ただな、清浄魔法やゆーても本当にキレイになるわけやない。わりと表面的なところしかキレイにならん)」


 本当にキレイにしたいのなら、

 定期的にシャワーや洗濯が必要だという。


 お湯は使い放題、ハンド石鹸は非常によく落ちる。

 だから、ゴシゴシしなくても漬け置きだけで

 ものすごくキレイになるし、微かな香り付きだ。


 僕はあんまりお風呂にこだわりがない。

 小さい頃からずっとシャワーだったし。

 でも、たまに温泉に行くと本当にリラックスする。

 だから、温泉がみつからないかな、と思っている。


 あとね、子猫たちがしょっちゅう椅子をバリバリする。

 昔飼ってた猫もバリバリが大好きで、

 家中が悲惨なことになってたんだけど、

 この車は偉い。

 ほつれがあっという間に修復されていく。

 

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