第2話 怪物襲来~車のレベルアップ

 困惑しているその時だ。


『ピピピピ。敵襲。敵襲』


「えっ?」


 僕は窓の外を見た。

 すると、醜悪な物体が大騒ぎしているぞ。


「怪物!?」


『エマージャンシーモードに入ります。銃座ユニットをインストールしますか?』


「銃座?武器?いかん、考えている暇なんてない!」


 僕はボイスボタンを長押しして


「YES」


 すると、ゴゴゴという低い音とともに、

 ダッシュボードに映像が映る。


「こいつか!」


 剣らしき武器を振り回している怪物が映っていた。

 緑色の醜悪な顔。

 尖った耳。

 腰みのだけの服装。

 出っ張った腹。

 背格好は子供ぐらいか。


 僕の記憶で該当するのは。


「まさか、ゴブリン?」


 いよいよ現実味がない。

 怪物は大騒ぎしている。

 が、一定以上は車に近寄れないようだ。

 結界のおかげだろうか。



 画面を見ると、武器の使い方説明が。


「何々…ハンドルのボタンでコントロールして…」


 ボタンの一つを押して見ると


『自動照準にしますか』


「YES」


 ダッシュボードの画面に+マークが現れ、

 怪物の顔に重なる。


『攻撃する場合は点滅するボタンをおしてください』


 ハンドルのボタンの一つが点滅している。

 

「プッシュ!」「ダン!」


 怪物の額にヒットしたのだろう、

 小さな穴が開き、直後に怪物は霧散した。


『パンパカパーン。ゴブリン1体を討伐しました』


 場にそぐわないお気楽ファンファーレが鳴る。


「やっぱりゴブリン?霧となって消えたぞ?」



 気を緩めた瞬間だ。


「ギャギャギャ!」


 森の中から数体の怪物が飛び出してきた。

 最初のと同じ容姿だ。

 これらもゴブリンか。


「よし、要領はわかったぞ。武器もボイスコントロールできるはずだから…」


 僕はボタンを長押しして


「自動標準」


「発射」


『ゴブリン4体を討伐しました』


 FPSのお気楽イージーモードだな。

 FPSというのはゲームの一つで

 自分視点によるシューティングゲームだ。



『探索機能をインストールしますか?』


 おお、便利そうな新機能が!


「YES」


 すると、ダッシュボード横のカーナビに

 レーダ画面のような画面が浮かび上がった。

 縦軸横軸に30mの目盛りがある。


「なるほど。半径30m程度の探索力があるということか?」


 それには近寄ってくる赤い点が5つ。


「こいつらも殲滅しろと」


 森から奴らが現れた。

 僕はすぐに攻撃した。


『ゴブリン5体を討伐しました』


 僕はしばらくカーナビ画面を注視していた。

 が、もうゴブリンは現れない。



「警戒をといてもいいかな?あれ?」


 レーダー画面に白い点滅が光っている。

 画面の下の方には、


『魔石が10個ドロップしました』


 という表示が。

 ああ、これは回収しなくちゃ。

 だが、外は魔素濃度が濃くて出られない。


「うーむ。息を止めてればいけるかも」


 僕は結界を解き、息を止めて窓を開けてみた。


『魔素濃度があがります』


 警告画面になるが、先程のような不快感はない。


「息を止めてれば行けるな。よし!」


 僕は結界を張り巡らすと、結界に手を当ててみた。


「すりぬけられる!」


 結界除外登録をしているからな。

 僕は猛ダッシュした。

 地面に落ちている丸い玉を拾い、車内に急いで戻った。



『魔石をダッシュパネルに投入してください』


 車内に戻ると、そんなメッセージが画面に広がる。

 

「投入?」


 僕は魔石の一つをパネルに押し当ててみた。

 すると、魔石がパネルに吸収されるではないか。

 僕は急いで残りも投入する。


『魔石が10個投入されました。レベルアップしますか?』


「こりゃ、本当にゲームだな。『YES』」


『パンパカパーン!レベル2になりました!乗員は車の外に出てください』


 再びお気楽ファンファーレがなると同時に、

 そんなメッセージが。


 僕は慌てて車の外に出た。

 直後に、


「ゴゴゴ」


 車が大きくなっていく。


「これって、ト◯タのタ◯ンエースだよなぁ」


 うーむ。

 進化する車?


 突然現れた見知らぬ風景。

 不自然な車の新機能。

 ゴブリン。

 そして、車の変形。


「まさかとは思うが、どこかの世界に転移したのか?」


 夢とは思えないリアルすぎる世界。

 ゴブリン。

 ファンタジー世界だ。


 その前に、僕は遭難状態じゃないか?


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