【スキル操作権限:アドミニストレータ】は実は最強でした。~外れだと思っていたのに、スキルを奪ったり組み合わせたりと自由自在。これで追放してきた親父のスキルも奪い、地獄に叩き落とします~
故ク太郎
第一章 【追放された果てに】
第1話 「出来損ない」と罵られて
「マリウス! これより貴様を追放する! 兵士たちよ、即座にこの出来損ないをつまみ出せ!」
突如として父ヴィルヘルムが放った怒声は、
「なっ……、お待ちください父上! あともう少しだけ、チャンスを……」
懇願する僕に、父は容赦なく罵声を浴びせてくる。
「黙れ、スキル持たずの出来損ないが口答えするな! チャンスだと? 与えてやった期間を全て無駄にしたのは貴様だろうッ!」
「………!」
怒り、失望、
それだけに留まらず、さらに父は続ける。
「お前など、息子でなければとうに捨てておったのに……。無駄な手間ばかり煩わせおって! 儂の顔に泥を塗るようなマネはするなと、何度言ったか覚えておらんのか!?」
その言葉を聞いて、衝撃のあまり僕はその場で立ち尽くすしかなかった。
───武装国家、ガラドシア。
圧倒的な武力によって国の領土を拡大してきたこの国では、親から遺伝する『スキル』の強さで将来が決まる。
例外もあるが……実際、この国の貴族のほとんどは戦争での功績で爵位を与えられているのがいい例だろう。
故に、貴族……ましてや王族が弱いスキルを持っていることなど、許されないのだ。
そして僕は、なぜかどれだけ年齢を重ねてもスキルが発現しなかった。
つまり王族でありながら使えない人間として、これから捨てられるのだ。
「第四王子の地位も、我がガラドシア王家の姓も剥奪する! お前はもう二度と、『マリウス=フォン=ガラドシア』を名乗るな!」
だから、だろうか。
続けざまにとてつもない剣幕で怒鳴られ、ふと思った。
――どうして僕には、強いスキルが与えられなかったんだろう。
どうして僕は、兄妹たちのように父から愛されなかったのだろう。
僕だって、この人の血は流れているはずなのに。
そんな僕の疑問に答えることもなく、父は吐き捨てた。
「……役立たずのゴミクズめ。二度と儂の前に顔を見せるな!」
その言葉を聞いて、僕はどうにかなりそうだった。
もはや、家族として見られていないのだろうか。
怒りや悲しみ、それに絶望で狂ってしまいそうだった。
「兵たちよ、さっさとこやつをつまみ出せい! 抵抗できないように痛めつけよ!」
「はっ!」
しかし屈強な腕で兵士に持ち上げられ、僕はなにもできなかった。
『痛めつけよ』という無慈悲な命令によって、みぞおちに心ない一撃が突き刺さる。
「ぐふっ……!」
腹部を強く殴られたことで、胃から色んなものがせり上がってくる。
「や……やめ……」
「黙れ! これは陛下のご命令だ!」
「うッ………!」
そして、もがく僕のうなじに甲冑の重みを乗せた肘打ちが落ちる。
悲鳴を上げる間もなく、僕の意識は深い闇の底へ吞み込まれた。
「………る……た。……す」
そんな闇の中から、声がした。
*
「そらよっ!」
また声がして、体が宙に浮いた。
でも、すぐ落ちた。
「ぐえっ……!」
全身を強くうちつけられ、口から呻き声が漏れた。
まるで潰れたカエルみたいに。
「じゃあな、“元”王子サマ! 悪いが陛下のご命令なんだ! 恨むなら俺じゃなく、ヴィルヘイム様にしてくれ!」
どこからか、嘲るような兵士の声が聞こえた。
「ぶえっ……! かはぁ!」
口に入った泥を吐いて、起き上がる。
顔を上げた先には、広大な平原が広がっていた。
兵士に殴られ、気絶している間に馬車で辺境の地へと運ばれたのだろう。
辺りを見渡しても草原が広がっているだけで、誰もいなかった。
もう、王都には戻れない。
そう考えると、とても辛かった。
悔しかった。
みんなを、見返したかった。
それに、思えば不自然な点はいくつかあったことに気づく。
特に引っかかるのが、父の命令に兵士がすんなり言うことを聞いたことだ。
あの心ない命令には本来、戸惑う兵も多くいからだ。
だったら、どうして?
しばらく考えたが、理由は悲しいほどに明白だった。
「………元から、僕を追放するつもりだったのかな」
そう思った瞬間、涙があふれてきた。
「どうしてだよ……っ」
僕はどうしようもできないまま、そう呟いた。
でも、これだけは心に決めた。
「──父上を、見返してやる」
と。
僕は父だけでなく、兄妹たちからも蔑まれて生きてきた。
『お前みたいな出来損ないが、王になれる訳がない』と。
最初はそうだと思った。
けど、今は違う。
それに、僕は思う。
『人の価値を勝手に決める今の王家にこそ、人の上に立つ資格はない』って。
僕は、乱暴な父上とは違う方法で僕は王になる。
『生まれもったスキルで将来が決まる』ような、腐りきったこの国を変えるために。
僕のように、スキルのせいで苦しむ人々を助けるために。
弱きを助け、強きをくじく。
それが僕の目指す理想だ。
僕は、そんな王になりたい。
これから成り上がってやるんだ。
「……でも、今のままじゃ何もできない」
だから、まず僕は近くに誰かいないか探すことにした。
「抵抗すんじゃねえ! このバケモノが!」
「きゃあぁっ!」
が、急に罵声が聞こえた。
同時に、悲鳴も聞こえた。
「……え?」
甲高い悲鳴が耳をつんざいた直後、再び野太い声が聞こえた。
「大人しくしろ! 気色悪い声出すんじゃねえ!」
「……………!」
近くに、誰かいるのか?
……いや。
どういう状況か分からないけど、助けなきゃ。
交互に上がった声を聞くなり、僕はそう考えるよりも先に走り出していた。
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