第4話
やられた。体が全く動かん!
ジジイ……やってくれたなぁ!(自業自得)
まぁそんなことは置いておき、体が動かせない時でも可能な鍛錬に励もう
地球ではなかった魔力。それは空気中や体内に存在している。知覚・操作を主に行って鍛錬しているため、体を動かす必要がない。
「確かウシュティアの魔術適性は炎だが……『ラスボスだから大抵の魔術使える』か……。チートだな!」
ベッドの上で寝大仏のようになりながら高笑いをした。
ゲーム上ではこの炎の適正と特殊な体質を組み合わせて中々厄介なキャラだったが、それが自分になったためイラつきはしない。逆に高揚感がある。
まぁあれだ。ボスを倒したあと仲間になったが、弱体化されずに済んだみたいな感じだな。
――コンコンッ。
考え事をしながら魔力を体内で練り練りしていると、ドアがノックされた。
「いるぞー」
「失礼しますお嬢様。今夜のお食事でございます」
「…………ん?」
メイドが夜ご飯を運んできたのだが、俺の頭の上には疑問符が浮かんでいる。
確かこの屋敷にはみんなで食事することが可能なくらい広い部屋があったはずだが……。あー、そうか。ウシュティアが引き篭もり絶対ジャスティスな奴だったな。
「メイド、料理は広間の机に置いてくれ。あとみんなが食べる分もできたらもっかい呼んでくれ〜」
「え、あ、はい。わかりました……」
ご飯はみんなで囲んで食べるものだ。一人で食べるよりみんなで食べた方が美味しい。多分古事記にでも書いてあんだろ。
こんな紙と革しかない空間で一人で食べるのは気が滅入りそうなので、みんなで食べることにした。
数分後、夜ご飯ができたらしいが、身動きが取れなかったためジジイにおんぶしてもらって広間へと向かう。
「おぉー! 流石は貴族、豪勢な料理だなぁ……」
「お嬢様?」
「なんでもねぇぞ! んじゃあいただきm……あぇ……。うごごご……手がプルプル震えて食えねぇ!!!」
フォークとナイフを使おうとしても腕が痙攣し、思ったように動かない。
目の前に飯があって腹もペコペコだといのに! ここは地獄か!?
「あ、あの……よろしければ私がお嬢様に……」
「いいのか! この歳になってあーんされるのは恥ずかしいが、背に腹は変えられないか。背と腹がひっつきそうだし……」
「で、では……」
隣に控えていたメイドが飯を切り分け、ビクビクと怯えながらも俺の口に料理を運んだ。
そこまて怯えなくてもと思いながらもそれを頬張り、咀嚼する。だが、思わず唸り声をあげた。
「ゔっ!!? だ、誰がこの料理を作った……!!」
「あ、あばば……。わた、私、です。おお、お口に合わなかっ」
「めちゃ美味い! ヤベェぞ!!!」
「は、はぇ……?」
これは生焼け……ってかレア肉って言うのか? 前世では貧乏すぎて焼肉なんかそんな食えてなかったからなぁ……。世にはこんなに美味い料理があるのか! 弟や妹たちにも食わせたいな……。
青い眼をキラキラと輝かせ、満面の笑みを浮かべながらそのメイドに向かってお礼を告げた。
「めっちゃ美味いなぁ〜。うへへ、ありがとな!」
「は、はぅっ」
「ん?」
トスッという音という幻聴と、胸に謎の矢が刺さった幻覚が見えた気がするが……。あれ、なんかメイドの目がハートに……?
「わ、私もこの料理作りましたの!」
「是非食べてくださいお嬢様!」
「私も私も!」
「あーんさせてくださいませ!」
「み、皆様方落ち着いてください!!!」
な、なんなんだ……。いきなりメイドらが催眠にでもかかったかのようにあーんしようとしてくる……。
そういえばウシュティアは幼い頃から自立して、大人の助けをほぼ必要としない完璧な令嬢だったな。メイドたちは頼られることが嬉しいのだろうか? まぁ俺だって弟たちから頼りにれたら嬉しいしな……。
「お嬢様♡」
「はい、あーん♪」
「こ、こちらもどうぞ……!」
「献上す」
「……う、うん……。みんなありがとな……」
その後、散々あーんされて腹がめちゃくちゃ膨れるのであった。
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