第1話-3

追憶の焦点

第1章 現場復帰


1.還ってきた伝説


「この女は…」

「新聞は読んでいるな、だ」

 写真に写っている女性の名はミーシャ・ユウミ・グレースバーン。

彼女は親日国家モナクライナの皇女で、皇位継承者であった。

「確か、モナクライナのロイヤルファミリーが来日するんだったな」

「二日後にな…それで妙な情報が入ったんだ」

「何だ?」

「ミーシャ皇女の暗殺計画だよ」

 その時、新室はバーボンが入ったグラスを一旦卓上に置いた。


「僕に話す理由は?」

「ここからが重要だ、協力してほしい」

「協力?」

「うちのチームに加わってくれ、皇女の暗殺を阻止するんだ」

 藍井は真剣に話を進めていくが、新室はどうも乗り気ではなかった。

「どうして僕なんだ?」

「今回の任務は秘密厳守、既に水面下で動いているが…用心深いんでね、顔が割れていないお前が適任だ」

「………」

 新室は納得する表情を見せなかった。


「…今の公安警察は人材不足か?」

「もし、皇女に危害が及べば、我が国との友好関係に亀裂ひびが入る、何としても守らなければならない、だから経験豊富な者が必要なのさ」

に何を期待している?」

「ブランクがあるが感覚うでは鈍っていないさ、どうだ?」

 新室は自虐的な発言をして、藍井はそんな彼を説得していき…


「すぐに返事できるわけがないだろう」

「では明日の夕刻まで待つ、連絡が無かったら諦める」

 藍井はそう言って、卓上に連絡先が記された紙を置いた。そして、二人分の会計を済まして、先に店を出るのであった。そして…


 新室はバーボンをちびちびと飲んで、しばらく店から出ようとしなかった。彼の決断へんじ如何いかに…

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