第42話 切り裂きにゃん子

「【切り裂く】」

「ぐは……」


 また1人メアの前に倒れる。


「あ、彼奴を殺せ!!」

「殺るぞ!!」

「死にやがれ!【ランスストライク】!」

「此処よ!【ハンマーストライク】!」


【ランスストライク】種目:アクティブ MP:10

 効果:次に行うランスによる一撃の攻撃の威力をアップする。威力は、腕力に依存し、攻撃範囲なども変わる。

 クールタイム:5秒

【ハンマーストライク】種目:アクティブ MP:10

 効果:次に行うハンマーによる一撃の攻撃の威力をアップする。威力は、腕力に依存し、攻撃範囲なども変わる。

 クールタイム:5秒


 メアの胴体を貫くようにランスが一度刺さり、男は直ぐさまランスを引き抜きバックステップを取ると、それとスイッチするようにハンマーを持つ女がメアを潰さんと迫る。メアはニヤリと笑いながらその場に留まる。

 ハンマーがメアの形に凹む。


「な?!」


 メアはそのままハンマーを掴む。女はハンマーが動かない事に動揺する。


「バイバイオネエにゃん【切り裂く】にゃん!」

「うぐ……」

「くそが」


 女がハンマー事切り裂かれ、それに驚いたランス使いが後方に下がる。しかし、男の目は死んでいない。


「貫いてやる!【ランスピアス】【ランランス】!!」


【ランスピアス】種目:アクティブ MP:50

 効果:次に行うランスによる攻撃は、相手の物理防御力を無視する。

 クールタイム:20分

【ランランス】種目:アクティブ MP:10

 効果:真っ直ぐしか走れないが、敏捷が2倍になる。

 クールタイム:1分


「ふwくるにゃ!!」

「死ねぇえーーー!!!!!!」


 嘲笑うメアに男の血管がプチッとなる。頭を真っ赤にしながら猛スピードで迫る男。

 白虎の【超特急】を体験した今、メアには男が遅く見える。避けるのは簡単だろう、1歩半左右どっちかに避ければいいだろう。

 たがそれは面白くない。この男を絶望させるには受け止めてこそだと思っているメアを岩の影から激写するニャル子。そろそろニャル子アルバムが10冊目を突破しそうなニャル子は置いといて、迫るランス。動かないメア。遂にその2つがぶつかる。

 男のランスがメアの(【液状化】している)胴体を貫通した。上がった物理防御力を【ランスピアス】の効果で無効化され、一瞬ポリゴンとなるがそれはほんの一瞬。


「しゃ!あ?ゑ?」


 拳を上げようとしていた男のランスの上に無傷のメアが現れる。


「頑張ったにゃん【切り裂く】!バイニャーイ〜」

「く……そが……」


宇迦うけ煙管きせる】を吹かせ、次の獲物を狙うメア。月が雲に隠れ、慌てて灯りを出す人たち。ニャル子は直ぐに暗視レンズに変更し、カメラを構える。


 メアは【猫目】の効果で灯りを付けずとも見える。尻尾の先では【幸運を齎す死神猫の尻尾用カンテラ】の蒼炎が尻尾の揺れで左右にゆらゆらと静かに灯っている。


「どれにしようかにゃ〜あの人にするにゃ」


 メアは次の獲物に向けてゆらりゆらりと揺れながら近づいて行く。


「お、おい。あれは何だ?」

「蒼い炎だな」

「何かのお助けアイテムかも知れないわ」

「近づいてみるか」


 四神たちの強さでゲームバランスがおかしいと思っていたプレイヤーが安易に近づく。そう思わなければやって行けないほど、プレイヤーたちは追い詰められていた。

 何度も死に戻っても一向に状況が、四神たちのワンサイドゲームだったから。


「か……ご……かご……め」

「止まれ」

「何か聞こえるわ」


 一定距離を保ちながらプレイヤーの周りを走るメア。プレイヤーたちは、動き出した蒼炎を目で追いながらその場で武器を構える。そして耳を澄ます。


「かーごめかーごめうしろのしょうめんだーれにゃ」

「?!」

「【切り裂く】」

「「?!」」


 3人パーティーの1人が死んだ事で、蒼炎がお助けアイテムでも何でもないと気づいた2人の額に脂汗が浮かぶ。


「かーごめかーごめうしろのしょうめんだーれにゃ」

「?!【ストーンニードル】!!」

「【切り裂く】」

「な……」


 魔法使いの魔法スキルで地面から土の棘が胴体などに刺さるがそのまま気にせずにメアは【切り裂く】を放つ。


「く、来るなー!!!」


 無様にも尻餅をつきながら、適当に剣を振る男。メアは蔑んだ目でその男を軽蔑する。仲間がやられたのに、戦いもせず、逃げもせず、唯怯え剣を振る男。なんと哀れなのだろう。


「けっ……つまんにゃい。【切り裂く】」

「たす……」


 男がポリゴンとなって消える。何と虚しいのだろう。熱いバトルがしたくなる衝動に駆られるメア。

 まあ、それはまたの機会に。と、ため息を吐く。

 その後淡々と作業のごとくプレイヤーを【切り裂く】で切り裂いてく。何人、何十人を切り裂いた時だろうか。メアの【切り裂く】が進化した。


『条件:攻撃スキル【切り裂く】のみで人を連続で殺すを達成しました。スキル【切り裂く】が進化し、【切り裂きジャック】に進化しました』


【切り裂く】種目:アクティブ MP:10

 次に行う切り裂く攻撃の威力をアップする。

 威力は、腕力に依存し、攻撃範囲なども変わる。

 クールタイム:5秒

           ↓

【切り裂きジャック】種目:アクティブ MP:10or100

 MP:10の場合。

 次に行う切り裂く攻撃の威力をアップする。威力は、腕力に依存し、攻撃範囲なども変わる。

 クールタイム:5秒

 発声:【切り裂く】

 MP:100の場合。

 切り裂くを10連続で発動できる。敵に当てる度に威力が1.5倍ずつ上がり、与えたダメージの5%のHPを回復する。威力は、腕力に依存し、攻撃範囲なども変わる。

 クールタイム:30分

 発声:【ジャック】


「面白そうなスキルにゃん」


 メアはにやりと爪を研ぐ。そんなメアをニャル子は、少し離れたとこらから鼻血を出しながら激写していた。そんなニャル子をメアは冷めた目で見ている。


(いや、ニャルー戦えにゃ……)


「はあ、はあ。冷めた目も良い!!♡」


 多分ニャル子はもう手遅れだろう。メアは【宇迦うけ煙管きせる】を吹かす。


(ふぁ〜うみゃうみゃ)


 数多のプレイヤーの心を抉ったメアは、未だ戦いが続く戦場で1匹桜姫の串焼きの味を堪能していた。

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