第37話 開拓者ランクが上がったよ

 原爆ドームダンジョンは当初の目標である中層30階層を大きく超える40階層まで到達するという快挙を達成した。

 そして、ドロップ品の売却益と所有する事にした武器や防具で約200万円の収入があった。

 流石上級ダンジョンである。まあ、半分は武器や防具の価値なんだけどね。


「わんぉ・・・」


 疾風が一本の短刀をうっとりしながら見つめている。短刀は、今回の探索でドロップしたダンジョン物の備前長船勝光の脇差だ。


「にゃんお・・・」


 チビが羽根の装飾がされた兜を大事に大事に手入れしている。

 こちらは見た目がカッコイイだけの普通の兜だが、北欧の戦乙女風なのがお気に入りのポイントらしい。チビ、女の子だもんね・・・


「ふん!ふん!ふん!」


 ペンタントちゃんが大鎌を振り回している。これも原爆ドームダンジョンで拾った武器で、鑑定したら「農夫の大鎌」という名称で、植物系モンスターへの特攻が付いていた。ただ植物系モンスターは存在自体が珍しいので需要がなく武器としても使い勝手が良くないため価値は低い。まあ本人が気に入ってるからいいんだけど。


「うん?ギルドからのメール?」


 携帯が震えてメールの着信を伝える。


「開拓者ランクアップのお知らせ?」


 メールの内容は、自分の開拓者ギルドへの貢献度が規定の数値を達成したのでFランクからEランクに昇格したというものだった。おそらく原爆ドームダンジョンでのドロップ品の売却で規定額を超えたのが理由だろう。

 ちなみに開拓者ランクが上がると、年間に使える必要経費の上限が上がる。Fランクだと100万円だけどEランクなら200万円になる。

 還付されるのはドロップ品の売却や依頼達成の報奨金から源泉徴収されている8%のダンジョン税。開拓者カードで依頼達成やドロップ品売却、提携ショップでのアイテム購入などの取引をしていれば毎年4月に開拓者カードへと自動還付される。開拓者カードで取引してない分は3月に確定申告しなければいけないが、基本的には手間はかからない。あと、所得税や市民税・県民税といったものには影響が出ないようになっている。


「意外に早かった」


 開拓者を始めた頃はポーションとスライムの魔石ぐらいしか売るものは無いと思っていたので、こんなに早く昇格ラインに到達するとは思わなかった。

 ちなみにFランクからEランクに昇格するにはギルドへの貢献度・・・1000ポイントほどの依頼達成やドロップ品やポーションを売却することだ。

 特に上級ダンジョンのドロップ品は貢献度が高い。


「開拓者ランクが上がったらしい」


「おめでとうございます?」


「ありがとう。おかげでペンタントちゃんの防具も更新出来るよ」


 使える経費が倍だからね。早速ダンジョンホームセンター大亀に出発だ。



 店の前で疾風、チビ、ペンタントちゃんを召喚し、店のスキル阻害の腕輪を装着し2階の売り場に向かう。


 ペンタントちゃんは槍術を習得しているので大鎌が扱えるけど、今は魔法使いのジョブに着いているので、防具は金属部品を使用していない堅い革鎧ハードレザーまで。

 え?ローブじゃないのかって?堅い革鎧ハードレザーは鉄は使ってないしコーティング技術も進化している。必要な筋力があればローブである必要はない。あとスーツもあるしね。


「奮発して、ファイアリザード素材の革スーツまで認めるよ」


 まあこれ以上の防具は買えないんだけどね。

 そして吟味した結果、ファイアリザード素材の革のジャケットと肘当て、肩パットにダンジョンリザードの革のズボンに落ち着いたよ。なんだか世紀末救世主みたいなコスプレ感満載だけど、本人も気に入ったようなのでよしとする。

 あと、せっかくの大鎌持ちなのでボロボロのローブも着せておく。外見だけなら死神になったよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る