◇Phase 11◇

【戦場】


響く雷鳴と剣戟の音。

カルミアが剣を手に立ち尽くしている。


カルミア:ここにも、ドライアン。……貴様はいないのだな。

グレモリア:(悪魔A)冷酷の天使! この悪魔リュカデン・ドラミーが貴様のその首もらい受けるぅぅぅぅ!!!!

カルミア:……つまらん。


カルミアが悪魔Aの攻撃を躱す。


グレモリア:(悪魔A)何だと!

カルミア:遅い!


カルミア、剣を振る。


グレモリア:(悪魔A)ぐああああっ!

ウル:(悪魔B)よくもリュカをぉぉぉぉ!

カルミア:散れ。

ウル:(悪魔B)あぁぁぁ! 嘘だ! こんな筈じゃぁ!

カルミア:ふ。ふふふ。ふふふふふふ。ふふふふふふふふふふ。

ウル:(悪魔B)これが……天使カルミ、ア。

ドライアン:(悪魔C)ひ、ひけぇ! 俺達じゃ無理だ!


レリア:逃がさないよ。

ドライアン:(悪魔C)ぎゃあああ!

レリア:とんだ腰抜けだね。

ドライアン:(悪魔C)う、あああ、許してくれ、命だけは!

レリア:許す? おかしなことを。君は悪魔だろ? 天使に許しをうな。君達は生きてるだけで罪なんだよ。そして僕らは、生きている限り殺すだけさ。

ドライアン:(悪魔C)ひぎゃぁぁ!

レリア:……そんなに叫ばれるといくら僕でも気が滅入めいる。

レリア:姉さん! こっちは片付きましたよ!

カルミア:……レリア。

レリア:流石姉さん。見事な技です。

カルミア:私はただ剣を振っただけだ。ここの悪魔は弱い。

レリア:そうですね。前線も練度の低い雑魚ばかりになってきました。ひどいものです。しかしこの戦いもそろそろ終わりが見えてきたということでしょうか。

カルミア:それはどうだろうな。我々が雑魚ばかりを相手させられておるということは、手強い悪魔が温存されておる可能性もある。

レリア:悪魔にそんな智恵が?

カルミア:非力だが計略に特化した悪魔もおるようだ。侮ると足下をすくわれるぞ。

レリア:ならば、僕達はその温存されているという強敵や司令塔――魔王と呼ばれる悪魔を叩くべきでは?

カルミア:上からの命令はこの場の死守だ。幾らこの戦場が雑魚ばかりとはいえ、我々が抜ければ、すぐに崩壊することも確かだ。

レリア:しかし……。

カルミア:レリア。我々は矛では無く、盾としての役割を求められている。分かるな?

レリア:はい、姉さん。

カルミア:とはいえ、こうも刈り残しておったのではどんな小言を言われるか分からん。半分ほど刈り取ろう。いけるか、レリア。

レリア:もちろんです、姉さん! ……でも、

カルミア:何だ?

レリア:姉さんは大丈夫なのですか?

カルミア:この通り私は無傷だ。問題ない。

レリア:いえ、そうでは無くて、……ここのところ、姉さんはずっと辛そうなお顔をされております。少し休まれては……。

カルミア:そんなことか、レリア。私は強い、心配するな。お前こそ私のために随分無理をしているだろう? いつもありがとう。

レリア:そんな、姉さんの為なら僕は何でもします……!

カルミア:ならば生きろ、レリア。私のために生きてくれ。

レリア:カルミア姉さん……。

カルミア:……さぁ、行くぞ。敵は待ってくれん。

レリア:はい!


カルミア、懐の『爪』をそっと撫でる。


カルミア:……幾多の戦場を巡った。この手に握る白き剣を悪魔の血肉に埋める度、私の剣は研ぎ澄まされていくのに、この腕はどうしようもなく鈍くなる。私は誰に負けること無く、傷一つ負っていないというのに、貴様と引き分けた時のように何かを感じることが無い。

カルミア:なぁ、ドライアン。貴様は今、どこに居る? 私を守ってくれるのだろう?

カルミア:私は貴様にまた――

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