第15話
きらびやかな景色が広がる食事会の会場。人数こそ多くはないものの、そこに集められた人たちは貴族関係者や王族の人間、財界の権力者にわたり、その影響力の大きさを感じさせる。
やや緊張感さえ張り詰めるその場にあって、自由気ままな態度をとる一人の人物の姿があった…。
「お兄様!このお魚料理かなりおいしいですよ!!ほらほら食べてみてください!!」
「エレーナ…。そんなに大きな声を出さなくとも…」
両頬を料理で満載にし、にっこにこの表情を浮かべるエレーナ。ついこの間に第二王子から婚約破棄を告げられらとは思えないその姿を見て、一部の関係者たちは不気味にさえ思ったことだろう…。
そんなエレーナのもとに、彼女をここに呼び出した張本人が姿を現した。
「食事を気に入っていただけたのなら、うれしく思いますわ。元、お姉さま♪」
嫌味たらしい口調でそう言葉を発するカタリナ。その表情は、相手を前に完全に勝ち誇っている人間の見せるそれだった。
「ほんとにおいしいわこれ!!さっすがは第二王子様の手配したシェフが作っただけのことはあるわぁ♪」
しかしエレーナはカタリナの嫌味には一切乗っからず、自由気ままな態度を変える様子はない。
「……あのまま婚約破棄されずにいたなら、これよりおいしいお料理をたくさん食べられましたのに、残念でしたわねぇ~」
「うーん…。毎日食べたらそれはそれで飽きちゃいそうだし、別にいいかなぁ…」
「また負け惜しみを…。素直になった方が可愛いと思いますけれど?………っ!?」
そこまで言ったところで、カタリナはその表情を一変させる。…目の前に、自分の愛するカサル教皇が現れたためだ。
「こんにちは、カタリナ様、エレーナ様」
「カサル様!!お久しぶりでございます!こうしてお会いできること、ずっとずっと楽しみにしておりました!」
「こんにちはカサル様!つい先日ぶりですね!」
「その節はどうも♪」
「(…………はぁ??)」
自分が思っていたよりもなにやら親密そうな二人の姿が、どこかカタリナにはむずがゆく思えた様子…。
「エレーナ様、またいつでも教会にいらしてくださいませ。心よりお待ちしておりますので」
「ありがとうございます!さぁさぁ、カサル様もこちらのお料理をどうぞ!!すごくおいしいですよ!」
「おっと、これはこれは♪」
そんな二人の姿を見て、カタリナも負けじと食い下がる。
「カサル様、私も教会を訪れたく思います…。私がお伺いしてしまったら、迷惑でしょうか…?」
「い、いえいえとんでもない!!ぜひともいらしてください!」
…とは言うカサルだったものの、当然のようにその内心は複雑であった。あれほどシスターたちに嫌われている彼女を招き入れると、ただならぬ反発を生みだすということは火を見るよりも明らかなのだから……
「!!!!」
食事を進めていたエレーナの手が、一瞬のうちにフリーズする。…彼女の視線の先にはほかでもない、豪勢なお魚料理の姿があった…。
彼女は目にも止まらない速さで身なりを整えると、料理置かれた机のもとへむかって光速で駆け出していった。
「あぁ…。エレーナ様、もう少しお話したかったけれど…」
そんな彼女の背中を見て、やや残念そうな表情を浮かべるカサル。そしてさらにそんな彼の姿を見て、カタリナはその心をぞっとさせる…。
「(……え??なんで悲しそうな表情を浮かべられているの??………ま、まさかとは思うけれど、カサル様はエレーナの事を好いているなんてことは………ははは、まさかね……)」
すべてにおいて自分よりも魅力に劣るエレーナに、自分が愛するカサル教皇の心を奪えるはずなどない。彼女は必死に自分にそう言い聞かせていた。
そしてそうこうしている間に、第三の人物がカタリナの前に姿を現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます