第25話 第一印象 皆さん清楚で紳士です

 中国には神仙と呼ばれている方々が居る。もともと協力者としてほかの星から地球に来られていた。その“力”に驚異をおぼえた人間の中には同じようになりたいと弟子を志願する者がいた。長く厳しい修行を積んで難解な仙術を会得し第一段階の仙人として認められ、さらに上をめざして至高の“境地”に達した者だけが神仙として認められるようになった。もはやそれまで昇りつめた仙人は“神”に近い能力を身につけている。だから“神仙”と呼ばれる由縁がそこにあるのだ。

 初めてその神仙のEさんと出会った時、妻の耳元にどんな服装か聞いたのだが、まさに“絵で見たことのある着物”であったので、「絵を描いた人物は想像ではなく、ちゃんと見て描いていたのだなぁ…」とつくづく感心した。彼は神仙界において唯一無二の能力を持つ…あらゆる動物はもちろん、あらゆる植物とも会話が出来るのだ。初めてそれを知った時は衝撃を受けた。空想のドクター・ドリトルや、飼い主に応酬話法を使って信じさせる“テレパシーで動物の気持ちが分かります”商法とはレベルが違う“本物”なのである。物事をはっきりとした口調で話す、一見怖そうなご老人だが、根が優しい方である。年齢は人間の比ではない。“皆忙しいのだから神事と関係のない話は極力してはならない”ということを神様から常日頃注意されているのだが、どうしても気になっていた植物のことを伺いたかったので聞いたら、すぐに教えて下さった…「縦じゃなくて横に伸びたいと言っている!」、そうだったのか、だから元気がなかったのか…「助かりました。ありがとうございます!!」その後言われた通りに枝を倒して横に誘引しところ、たくさんの芽を出してくれた。

 日本で有名なのはなんといっても“E小角”またの名を“E行者”である。“修験者”にとって鏡のような存在であるが、もはや彼の場合はその領域を超越していた。現在、日本一高いF山は観光登山者のあまりの多さとマナーの悪さで“汚れてしまった”が、昔は“神聖な霊山”として誰もが崇拝していた。彼はそこがとても気に入っていたのだが今はとても残念がっている。

 さて、仙人と呼ばれるものは人間にとって不思議なのだが、もうひとつ“天狗”と呼ばれるものの存在…人間の文献では“昔、大陸から渡来した鼻が高くて体の大きい外人”のことを指したとよくいわれている。確かに例えが上手で納得してしまうかも知れないが、間違いである。天狗もまたほかの惑星から来られた協力者なのだ。

 天狗には“大天狗”、“小天狗”がおり、日本の中で何ブロックかに分かれているのだが、そのひとつでK平野管轄のグループと知り合うことが出来た。親方である大天狗のB前坊、小天狗筆頭のKヶ原のK太郎、Tk山のH印丸、H城址のD国丸、H山のS泉、Tn山のK五郎以上6名で、K平野に外部からの侵害に対応している。

大天狗と小天狗の実話を紹介しよう。この話は世界中どこを探しても無い話である。

 『鴆の毒(ちんのどく)』という実話。

 ある時、小天狗を訪ねて来た行者に「誰も持っていない綺麗な羽でウチワを作りたければ手に入れてこよう」と“鴆(ちん)”という鳥の羽の話を聞かされた。それを聞いた小天狗は喜んで頼んだ。

数日たったある日、行者は包んだそれをひもで結び、自分の杖の先のほうに吊るして持ってきた。そして早く取れとばかりに渡されたのが気にはなっていたが、受け取ると羽についての詳しい説明をすることなくそそくさと帰っていった。

 厳重に包装されたその羽…実は甘いその匂いを嗅ぐことはもちろん、触ることも絶対にしてはならない猛毒なのだ。何も知らずに封を開けた途端、小天狗は口から泡を吹き3日間ほど気絶。正気に戻った際に初めてその羽には毒があると気づいた。薬草などを用いれば何とか毒が取れるだろうと、薬草をいろいろと塗りたくり、誰も手にしたことのない美しいウチワを作ろうと挑戦すること5,6回。その度に口から泡を吹き気絶を繰り返した。

 ある日、訪ねてきた親方の大天狗に倒れているところを助けられ、正気に戻った後、その事情を話したところ「そんな危険な羽は処分すべきだ、出来ないならわしが預かり燃やして処分する」と持って帰った。

 後日用事があって親方の元へ訪ねて行ったところ、なんと今度は親方が口から泡を吹いて倒れているではないか。大天狗もその美しい羽に魅せられて処分に悩んだすえ、なんとかしてウチワを作れないかと挑んだらしい。

 小天狗が一生懸命看病し、無事親方は正気に戻ることが出来た。そしてお互い顔を見合わせるなり「やはりこんな危険な羽は処分しないといかん」となり、匂いを嗅がないよう息を止め、触らないようにそっと火をつけて燃やしたのだが、今度は二人でその煙を吸ってしまい、口から泡を吹いて気絶。季節は過ぎ、正気に戻った時には二人とも枯葉に埋もれていたとのこと。

笑ってはいけないのだが、やはり笑ってしまう…



 

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