#3・魔煙

#3・魔煙(まえん)

話の内容が変わるような改変、アドリブはご遠慮下さい。


残虐描写、暴力描写があります。

内容をご確認のうえ、上演や収録の判断をお願いいたします。


<登場人物>

・ザーグ

国家魔術士一級。基本的に敬語。

重力を操る。年齢不詳。性別不問。


・アイト

ザーグと組む国家魔術士。

身体強化魔法で筋力を強化して戦う。

ザーグより歳は若い。口調は幼め。

嗅覚過敏で魔力や感情の探知が得意。

年齢不詳。性別不問。


・ルメール

魔具(まぐ)の管理、メンテナンスをしている団員。

肉体労働と日光が苦手。

煙を操る魔術士。年齢不詳。性別不問。


・シェリー

シェリーというシスターの皮を被った魔族。

強大な魔力を持っている。女性口調。年齢不詳。

今回出番が少なめなので、ザーグかアイト役の方が兼役も可。



----お話はここから----


-教団内、魔具倉庫


ルメール:おや、アイトどうしたんだい?

飴ちゃん食うかい?


アイト:ったく、ボクのことをいつも子供扱いするのやめろよなー


ルメール:あはは(笑)アイトは入団してから変わらないねえ〜


アイト:いーや、変わったね!

昔ルメールと行ったダンジョンの時より

ボクはめちゃくちゃ強くなった!


ルメール:ダンジョン、懐かしいなぁ

僕がここを出る時は闇市へ行く時と

ダンジョンが出現した時だけだ〜


アイト:そーいえば、しばらく聞かないなあ

ダンジョンが出た!って


ルメール:そう滅多に現れるものじゃあないさ

僕らが行ったダンジョンだって、

教団内の記録じゃ前に出現したのは142年前って話しだね〜


アイト:その142年前の前はいつだ?


ルメール:そう焦らないでさ、飴ちゃん食べるかい?


アイト:だ・か・ら!飴はいらないってば!


ルメール:あはは(笑)

んーと、、、教団内の記録は142年前と僕らが行った3年前だけだね〜


アイト:マジか!


ルメール:うんうん、マジだよ、マジ


ザーグ:アイト、ここでしたか!丁度いい


ルメール:お、ザーグじゃないか


ザーグ:お久しぶりです、ルメール

今回はあなたにもご同行して頂きます


ルメール:なんで僕が?


ザーグ:王国の南にあるブラックマーケットでの調査依頼がきましてね、

あそこはあなたの庭のようなものですから


ルメール:ま、たしかにそうだ〜

あそこは僕のとっておきの買い物スポットさ


アイト:…っ、てことはもしかして?!!


-約一時間後、南国


アイト:んなわけないよなー…

闇市からのダンジョン探索ー!

とか思って期待なんかすんじゃなかったー!!

あー!腹減ったー!!


ルメール:この日光どうにかならんかね?


ザーグ:二人とも、しっかりしてください!!仕事ですよ!

この街のブラックマーケットで

魔障のある死体が大量に出ていると…

教団へ調査の依頼がきたんです


ルメール:違法な魔具の仕業かなあ…

魔具自体がもう違法みたいなもんだけどね


アイト:ぐぅ(唸る)…腹減ったー!!


ザーグ:(ため息)…仕事ですよ、二人とも!


アイト:(パンを口に突っ込まれる)…ふが!


ルメール:(マントを頭から掛けられる)

うわ、日光は無いけど何も見えない〜


ザーグ:行きますよ、全くもう!


-闇市


アイト:おいおい、まさかの顔パスかよ…


ルメール:ま、僕はこの界隈じゃ

有名人だからね!褒め称えてくれても良いのだよ!


アイト:めんどくさいな!


ルメール:僕は褒められて伸びるタイプなんだよ


アイト:いい歳の大人が何言ってんだ…


ザーグ:(アイト達を無視して)おや、珍しいですね

丁半博打ですか…


アイト:ちょーはん?チャーハンじゃなくて?


ザーグ:はあ…あなたという人は…


アイト:(再びパンを口に突っ込まれる)ふが…!


ルメール:あれは東洋の博打だよ

サイコロの出目で賭事をするんだよね〜


ザーグ:私は昔、副団長とその丁半博打で遊んだことがあります


アイト:(パンを食べながら)ほえ〜

ん?(匂いをかぐ)…

汚いオッサンらの匂いの中に少し花の匂いがする…


ルメール:汚いオッサンって酷いなあ

…僕じゃあないよね?


アイト:ここ、闇市だろ?

周り見渡せば汚いオッサンの匂いしかしないって

わざわざ意識をして匂いを嗅がなくても分かる


ルメール:まあ、たしかに?


ザーグ:花の匂い…というのが引っかかりますね

主に女型の魔族が放つ特有の香りですから…



-闇市、奥地



シェリー:ねえ、これいくらで譲ってもらえるのかしら?

…え?譲らない…なんで店に置いているのよ

あら、いつの間にか店先が混雑しているわ

あ、わかった…私を客寄せに使ったのね?

いけない店主さん…ふふふ(笑)


-奥からザーグ達が闇市奥地へ向かってくる


ルメール:闇市の最奥部、

ここも相変わらずだね〜


アイト:うっわ…

単純に汗臭さと加齢臭で鼻がイカれる…


ルメール:連日客取り合戦と競りで活気が溢れているんだ

とんでもない金と代物が飛び交っているのさ


ザーグ:私はあまり人混みが得意では無いのですが…

ルメール、あなた普段引きこもりなのに…よくここへ来れますね


ルメール:ははは(笑)

僕は好きな物の為ならこんな人混み、何も問題無いさ


アイト:うっ、気持ち悪っ…


ザーグ:アイト、大丈夫ですか?


アイト:頭痛に耳鳴りまで……

たぶん、近くに魔具がたくさんあるからだと思う…


ルメール:ほい、飴ちゃん


アイト:だから、ガキ扱いするな…(飴を無理やり押し込まれる)んぐっ!


ルメール:これは魔具になった鍋で作った飴ちゃんだよ

魔力にあてられて体調が悪くなったときに食べると楽になるんだ〜


アイト:(少しもごもごする)…なんかピリッとした味だけど、、スーッとするなこれ!


ルメール:だろう?僕のお気に入りさ


ザーグ:…鍋も魔具になるのですか?


ルメール:うん、魔具になるよ

シスター(ブラザー)レイリーのサバイバルナイフみたいに

使いに使い込まれた物が何かのきっかけで突然魔具になったのと同じだね、たぶん


ザーグ:鍋の魔具…ご家庭で長く愛用されていれば、

使い込まれて魔力が籠るのかもしれませんね


ルメール:東洋では物が神様の力を持つ現象もあってね、

それは付喪神と呼ばれているよ

あ、これは教団の副団長から聞いた話と東洋の文献から僕が得た知識だよ


ザーグ:副団長は東洋出身ですからね

それにしても、本当にあなたは博識です


ルメール:僕、好きな物には目がないのさ

他はなーんも、とくに戦闘なんか…本当にさっぱりだよ


ザーグ:またご冗談を…悪い方です


ルメール:あはは(笑)


-ザーグ達を遠目から見る女型の魔族


シェリー:(M)…あの人たち、ここへも当然現れるわよね

今日は3人…この前、オルフェが街を孤立させた時はもう一人、

仲間の魔術士がいたらしいけど…ま、人数は今回関係ないわ

でも、鼻のきくあの子がここではとくに厄介ね…


ザーグ:私はアイトの体調が良くなってから動きますね、ルメール…?


-一緒にいたはずのルメールがいなくなった


ザーグ:って、ルメールがいつの間にかいなくなってます…

まあ、この飴は袋ごと私の手にあるので

アイトの体調管理は大丈夫でしょう

私達は落ち着いたら行動しますよ


アイト:…ぐぅ(唸る)ごめん、ボクが足引っ張っちゃって…


ザーグ:アイト、あなたはまだ万全ではないので

少し休んでいてください

私もブラックマーケットがこれほどの規模とは

思っていませんでしたからね…


-地下闇市、奥地


シェリー:(M)ここにも無い…

それにしても何かを呼び寄せる魔具を取ってこいって…

情報が少な過ぎるし、漠然としすぎ

魔具が大量にあるせいで私も気分が悪くなってきたわ


ルメール:お嬢さん、気分悪いのかい?


シェリー:…っ!!

(M)背後をとられた…全然気付けなかった!


ルメール:気分が悪いのなら飴ちゃんを…

あれ?袋ごと無いや

悪いね、連れに渡してたみたいだ


シェリー:何あなた、こんな奥地で見知らぬ女性に声を掛けるなんて

…悪戯にしても悪質すぎるわ、驚いたじゃない


ルメール:ナンパ?したつもりでは無いんだけどな〜

僕はお嬢さんよりも背が低くて

メガネをかけたかわい〜い感じの女の子が好みだなあ


シェリー:…で、ご用件は?


ルメール:お嬢さんのような魔族が、

ここへ何をしに来たか…気になりましてね


シェリー:魔族?…何を言っているのか意味がわからないわ


ルメール:僕はルメール、教団の者でね

いちおう魔術も使える

あ、でも国家魔術士の資格には興味がないから

資格は無しのただのしがない魔具マニアさ


シェリー:魔具マニア…ねえ…

じゃあ何故、私に声を掛けたのかしら?

さっき女の好みを流暢に語ってたけど

女には全然興味無さそうよ、あなた


ルメール:そんな事ないけどなあ〜

ま、そう思われてしまったのなら仕方ないか


シェリー:人に魔族という疑惑まで付けて、本当に失礼な人


ルメール:疑惑じゃあない、確信をしたから

お嬢さんに魔族と言ったんだ


シェリー:確信…ですって?


ルメール:ああ、この子がイエスと言っている


-ルメールの肩には煙で出来たフクロウが乗っている


シェリー:この子?…っ!!

何よ、その煙の塊…いえ、鳥は!


ルメール:名前はモクモクオウルっていうんだ

僕の煙召喚魔法で呼び出したんだよ

ま、煙だから本物のフクロウみたいに触れないのは寂しいけど…

かわいいでしょう


シェリー:ほとんど魔力を感じなかったわ…!

なんなのよ、そのフクロウは!


ルメール:僕のモクモクオウルのことよりも先に

魔族のお嬢さんのここへ来た目的を答えてもらわないとな〜

僕、ここへは今日仕事で来ているんだ


シェリー:目的ねえ…

こんなに規模の大きいブラックマーケットですもの…

私はここにある魔具を壊しに来たのよ

魔術士に魔具を使われたら魔物も魔族も

あっという間に殺されちゃうじゃない


ルメール:ふ〜ん…


シェリー:私は目的を言ったわよ


ルメール:僕はお嬢さんがそんな理由でここに来るとは思えないんだよなあ〜なんでだろう?


シェリー:…あなたは私を魔族として見ないのね


ルメール:どんな種族であっても中身は様々、

人間で猟奇殺人を平気で行うヤツもいれば、逆も然り

仲間を守るために動く魔族もいるさ

まあ、魔族は基本群れたりしないみたいだけどさ


シェリー:あら、あなたは中身…本質を見るタイプなのね


ルメール:ああ、そうさ

僕が若い頃は人間に騙されて偽物の魔具を買わされたり

魔族へ食料として売られそうになったり散々だったからね

あとね…実は僕、魔族に命を助けられたこともあるんだ


シェリー:その魔族は相当な物好きね

私だったら見た目が好みなら魔物にするし

好みじゃなかったら食料にするわ


ルメール:へえ〜、お嬢さんも物好きだね〜


シェリー:そうかしら

…もう、時間稼ぎは終わった?


ルメール:時間稼ぎなんてしちゃいないよ

僕はただキレイなお嬢さんと、

お話がしたかっただけさ


シェリー:あなた…嘘はついて無さそうね


ルメール:僕は平和主義なんだ

戦わないで済むのならその方が良いよ


シェリー:と言うわりには、あなた…

相当場数を踏んでいる魔術士のようね


ルメール:場数を踏んでいるなんて…全然だよ

数より質を重視しないと〜

お嬢さん、まだまだ若いのかな?


シェリー:ま、この姿になるまで時間は…かけたわね!


-シェリーの爪がルメールの方へ伸びる


ルメール:っと、さっき話したばかりじゃないか

僕は平和主義だって


シェリー:生憎、私は平和主義じゃないの

あなたのお仲間に見つかる前に

私を見た人間は殺しておかないと、落ち着かないの


ルメール:へえ…

闇市にやたら人が集まってたのは

お嬢さんが人間を殺したからか〜

闇市の商人は地上では人間の法律で逮捕されちゃうから

ここで殺された人間は皆ここで土葬するんだ

お嬢さん、結構な数の人間を殺したみたいだね


シェリー:私の見た目に騙される人間の方が悪いわ


ルメール:その前に見つかるお嬢さんの方が詰めが甘いねえ


シェリー:私を挑発しているのかしら?


ルメール:これは失礼

でもこのままだと僕はお嬢さんに殺されちゃう流れだよね?


シェリー:ええ、教団の人間ならば尚更…殺してあげないとね


-ルメールが裾から笛を出し、軽く吹く


シェリー:いきなり笛を吹くなんて、何のつもり?


ルメール:あ、これね

お子様や女性が使う方が効果の高い魔具の笛さ

魔物や魔族がいるっていう警告音を出してくれる

ちなみに、この音は魔力を持つ者にしか聞こえない仕様なんだよ


シェリー:ということは…!


-闇市、奥地手前


ザーグ:この笛の音…!

ルメールがこの奥で魔物か魔族に襲われているみたいです


アイト:ったく、ブラックマーケットだから

合成獣のキメラとかいそうだもんな!

仕方ない、助けに行ってやるか〜


ザーグ:アイト、あなたはルメールが戦っているところ…

見たことはありますか?


アイト:いや、ルメールと仕事は一回一緒にした事あるけど…

あいつ魔物から逃げてばっかでさー、

結局ボクが倒したよ


ザーグ:私たちが今近くへ行くと

ルメールの邪魔になりそうです…

急がすに笛の鳴った方向へ向かいますよ


アイト:え?いいのか、それで…


ザーグ:ルメールは普段教団で魔具のメンテナンスくらいしかしてないので、

たまには肉体労働もさせましょう


アイト:ま、そうだよな


-闇市、奥地


ルメール:あれ?僕、無視されてる??


シェリー:お仲間も薄情ね、可哀想に


ルメール:酷いなあー

あの二人も、お嬢さんも…


シェリー:ふふ(微笑む)

誰かがここへ来る前にあなたを殺してしまえば、後が楽になりそう


ルメール:僕は平和主義の非戦闘員だよ

殺す価値は無いでしょう?ね?

やめよう!戦うの反対!!

 

シェリー:寝言はやめてくれる?

敵は少ない方が良いに決まってるじゃない


ルメール:僕はお嬢さんを敵とは言っていないじゃあないか


シェリー:私にとっては敵よ

だから殺すの


ルメール:ん〜…血の気の多いお嬢さんだ

さて…どうしようかね


-奥地へ向かう二人


アイト:こっちだ!


ザーグ:アイト、ここで一度止まりましょう


アイト:(匂いを嗅ぐ)…なんだ、この魔力…


ザーグ:ルメールの煙魔法です


アイト:煙魔法以外にバラの匂い…

これ、シェリーって名乗るあの魔族の匂いだ!!


ザーグ:煙で私達の元へ魔族の匂いを運んできたのですね、ルメール…

ここからは更にゆっくり進みますよ


アイト:…ああ、


-ルメールとシェリーが対峙している


ルメール:(M)…この煙の動き、ザーグたちに伝わったみたいだ

そろそろ僕は逃げようかな


シェリー:(M)少し口元が緩んだ…

あの二人が近くに来たようね


ルメール:それじゃ、僕はこれで失礼


シェリー:逃がすわけ無いでしょ?


-シェリーの腕が伸び、ルメールを掴む


シェリー:ちっ、手応えが無い!!

あの魔術士!逃げたわね!!


ルメール:煙召喚魔法、スモークリザード


-煙で出来たオオトカゲがシェリーを襲う


シェリー:(攻撃を避ける)っと、所詮は煙、大した威力は無いわ


ルメール:さて、それはどうかな?


シェリー:(M)地面が深く裂けた…!


ルメール:ほらね、ちゃんといい引っ掻き攻撃をするだろう


シェリー:くっ、また外れ…!!


ルメール:いつまで詠唱破棄でいけるかな?


シェリー:略式詠唱…しないと

私、まずいかも


-ルメールとシェリーの方へ向かう二人


ザーグ:私やアイトは普段、略式詠唱を使っていますが…

ルメールさんは略式と破棄の狭間、

半・略式詠唱を使用しています


アイト:半略式詠唱…初めて聞いた


ザーグ:略式詠唱をさらに略した詠唱です

私はルメールさんの魔力量が正直測れません

ですが実力は間違いなく国家魔術士一級よりも上です


アイト:あの変人、そんなにすごいの?!


ザーグ:しかもあの人、魔力量を隠すのが得意でして…


アイト:だからボクの鼻でも分からなかったのか!なんか納得した!


ザーグ:…!


アイト:ザーグ、どうした?


ザーグ:この気配…ちょっとまずいですね…


アイト:まずいって何が?


ザーグ:アイト、動かないでください!


アイト:うわ、煙の中に…これ、糸か?


ザーグ:私はルメールの煙召喚魔法について…少し聞いたことがあります


アイト:このモクモクの中の糸と何か関係あるのか?


ザーグ:この糸はルメールが召喚した

地獄の生物が張った蜘蛛の巣の糸です


アイト:地獄…の蜘蛛?


ザーグ:この蜘蛛の巣にかかり、食べられてしまったら…

それこそお終いです

どんなに善行をしている人間でも

地獄へ連れていかれます


アイト:マジかよ…


ザーグ:ここはルメールに任せるしかないですね…


-奥からルメールが走って近付いてくる


ルメール:おおお〜!友よ!!


アイト:ルメールお前、逃げてきたのか?!


ルメール:もちろん、僕は非戦闘員だから逃げるよ〜


アイト:おい!まだ仕事中だろ!


ルメール:あれは一人で戦っちゃいけない!

だから僕は生存本能のままに逃げる!

という選択肢をとっただけさ


ザーグ:そういえばあなた、魔力探知は

あまり得意では無いですもんね


ルメール:この最奥地にシェリーって名前の

キレイな魔族のお嬢さんがいてさ

少しからかっちゃった☆


アイト:おいおい、どうすんだよ!


ルメール:この闇市の最奥地に人間はいない、僕達も逃げるよ!


ザーグ:逃げるって、あなた!


ルメール:依頼は大量の死体諸々を調べるってことだろう?

殺害された人間には深い爪痕が痛々しく残っていた

あれはこの奥にいる魔族のお嬢さんによる殺しだよ

魔族のお嬢さん本人にも確認した

しかもこの地域、死体の火葬をしない文化があるから

…死体を埋めた場所へ急がないと!


ザーグ:土葬したはずの死者が魔物化してしまいます…ね、


アイト:だけど、あの魔族はこのままほっといていいの?!


ルメール:他の召喚生物に空間魔法で

蜘蛛の糸から出てきたら

遠くへ飛ばす魔法をかけるようにお願いしてあるから大丈夫〜!

それにこの蜘蛛の巣の真ん中でグルグル巻きだよ!


-闇市、最奥地


シェリー:あの変人魔術士!

この蜘蛛の巣で私を拘束できると本気で思ってるのかしら!

身体改造魔法、ファングラッシュ!


-シェリーに巻き付いていた糸が切れていくが、更に太い糸に巻かれていく


シェリー:くっ…!糸が出るの早い!それと更に拘束が強くなった…!!


-ザーグ達一行


ルメール:あの魔族のお嬢さん、

シェリーさんと名乗っているのかい


アイト:うん、前にボクたちが受けた依頼の元凶…

シスターシェリーの身体を奪って

魔物から魔族になったんだ…


ルメール:へぇー、そんなことがあったのかい


ザーグ:いまメディアで報道されている

グラナド社、代表取締役の逮捕のことはご存知ですか?


ルメール:もちろんさ

僕みたいな非戦闘員は、情報収集が戦い方のひとつでもある

その辺はバッチリ見てるよ


ザーグ:教団内でのみ公表されている事柄はご存知…ですよね?


ルメール:それは…魔物を作る人体実験のことかな?


ザーグ:はい…


ルメール:実はあの人体実験装置、魔族によって爆破されたんだよね


アイト:それマジか?!


ザーグ:私も今、知りました…

何故あなたはそれを知っているのですか?


ルメール:僕の魔術、モクモクオウルで

あの事件現場を監視していたんだよ

そしたら実験施設どころじゃない、

あの村を丸ごと爆破していったんだ

ちなみにその魔族ってのは、

この前君たちが倒したオルフェって魔族ね


ザーグ:…やはり、グラナド逮捕の裏には

何か大きな存在があるようですね


-蜘蛛の巣に巻かれるシェリー


シェリー:身体改造魔法、ファングラッシュ!!

…っ、やっと蜘蛛の巣から出られたわね

あの変人魔術士…ルメール…!

あいつは一番最初に殺す!殺してやる!!

…!今度は何?!

えっ…!!何よ、この魔法陣っ!!身体が…動かないっ!!


-シェリーがルメールに召喚された地獄生物による空間魔法で闇市とは真逆の北の街へ飛ばされる(間を開ける)


シェリー:……蜘蛛の巣を抜けたら

まさか、空間魔法まで仕込まれていたなんてね

今回は完全に私の負けだわ

でも、教団に地獄生物を召喚する魔術士がいることを確認出来た…

これは大きな収穫だわ

あの闇市の中で探し物をしなくて良くなったから

結果的に今回の私の仕事は終わりで良いわね、ふふ(笑)


-王国南、地下闇市


ザーグ:重力創成魔法、グラビティグレース!プラス50!


アイト:よっし!一気に叩く!!

身体強化魔法、ラピッドシュート連撃!おりゃー!!


ルメール:こりゃ、魔物化する寸前だったね


アイト:ルメール!仕事してくれよー!

数が多いな!まだ魔物化する手前とはいえ、

こんなに魔障を受けて死んだ人間が多いなんてな!!


ザーグ:グラビティ、プラス100!

アイト、一箇所にまとめたので

一気にお願いします


アイト:おう!身体強化魔法、ラピッドストリーム!!


-ザーグの魔法で一箇所に集まった死体は

アイトの一撃で灰となり、風化していく


ルメール:危なかったね〜

死体だったから魔物化が遅かった…とはいえ、この数だ

ざっと4,50人はいるかな?


ザーグ:土葬をする場所はこの一箇所のみだったのも、

不幸中の幸い…というのも不謹慎ですが

完全に魔物化してしまうと

魂は問答無用で地獄へ行ってしまいます

少しでも地獄へ行く魂が少ないことを祈ります


アイト:…なあ、ルメール


ルメール:どうしたんだい?


アイト:シェリーと名乗る魔族が何の目的でここにいたか…聞けたか?


ルメール:んー、魔具を破壊することが目的と口先では言ってたけど

あれは完全に嘘だね、うん、嘘だ


ザーグ:ブラックマーケットで何かを探していた可能性がありますね

もし魔具の破壊が本当の目的ならここを丸ごと破壊するでしょう


ルメール:そうだろうね〜

ま、魔具も種類が豊富だからさ


ザーグ:目的は魔具の武器だけじゃないですよね…

この飴を作った鍋みたいな日用品かもしれませんし


アイト:なあなあ、今拾ったこのコンパス…おかしいんだよ

嫌な魔力は感じないけど、ボクがどの位置に移動しても

針が全く動かないんだ


ルメール:一定の場所のみを示すコンパス…

もしかすると、もしかするかもしれないよ!アイト!


アイト:え?…ま、まさか!


ルメール:このコンパス、新しい物だけど魔具だね

この方角は、この街よりもっと南を指しているようだ


ザーグ:この街のもっと南には

魔力探知が困難な密林地帯があります


アイト:魔具が密林地帯を指してるってことはあれかな、

ダンジョンがあったりして!


ルメール:そりゃあ良いね!


ザーグ:二人共落ち着いてください

一度、教団へ戻って

この魔具と化したコンパスを調べた方が良さそうです

上からの指示を仰ぎましょう


ルメール:この新しい魔具は教団で管理と、

教団へ戻ったら新たな魔具の申請をしないとね〜


アイト:ぐぅ(唸る)、このままのノリで密林地帯の探索行きたかったのにー!


ザーグ:(ため息をつく)アイト、以前ダンジョンでどんな目にあいましたか?


アイト:……あ、、(声が小さくなっていく)思い出したくない…


ザーグ:ですよね


ルメール:さて、僕らの仕事は終わった

みんなで帰ろうじゃあないか


アイト:ボクはザーグを待つよ


ルメール:ん?あー、そうだね

僕も一緒に待つことにするよ


-土葬場の扉へ向き直すザーグ


ザーグ:魔の者により天へと帰られた皆様が恩寵(おんちょう)を受け、

安らかな眠りにつかれますよう、お祈りいたします

………エイメン



-#3完-

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