第4話 行方不明

 女王は公務に赴く時には必ず夫を伴った。

 国政に関わる有事にも、夫の意見を仰いでいた。

 そんな異国の王子を盲信していた若き女王にゲオルグが、叶わぬ恋をしていたことは、言わずもがなで知っていた。

 

 女王陛下は波打つ金髪。透けるように肌理の細かい白い肌。

 長い睫毛に縁どられた、素晴らしく大きな双眸は常にきらめき、ふっくらとした唇に、この世の春を謳歌おうかする微笑みを浮かべていた。

 

 なよやかで、はかなげで、いじらしい。

 

 二十歳のゲオルグは、四歳年下の女王陛下の側近であり騎士として、誰よりも抜きん出ることでしか、愛を乞うことができずにいた。

 ノイスールの女王は、ある日忽然と姿を消した。

 ゲオルグも、夫であるテオ大公も国を挙げて捜索したものの、何の情報も得られていない。

 その行方知れずの女王がノイスールに有利になるよう、ダフネの軍港を攻めたのか。


「他に見たものは何かないか?」

「以上です」

「わかった。下がれ」


 手の甲で追い払い、ゲオルグは苦悶の表情で黙り込む。

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