第13話 異界の英雄

「アーーーリーーース!!!」



相当な面積の都市を駆け抜け港まで一直線に向かっていた。




船に乗るなら海沿いを走ってもらって探そうと思ってたら、いきなりドンピシャでアリスを発見する。




目立つ黒い霧のドームのような物の中でアリス押し倒してる男がアリスの顎を持ち口づけを迫っているように見える




なんだあの男!?

人狼族!?


狼の耳と尻尾、社交ダンスにでも行くのか?というフリルのついた白いシャツに細身の黒いパンツ

腰には細身のサーベルのような剣を携えている



金色の長髪に線の細い端正な顔立ち





イケメンである、イケメンは敵である。





「なんだ!おまえ!?」


見るからに友好的な関係には思えない。


昔からイケメンと爽やかな奴を見ると腹が立つのだが


アリスを襲うとか、ふてー野郎だ!嫌悪感と嫉妬が入り乱れ最悪の気分になる。





「タ…タカヤ……なんで…」



動けないのか苦しそうな声で俺を呼ぶアリス


「マックス、ありがとう降ろしてくれ」

「うむ」


マックスの背から降りてイケメンの前に立ちはだかる。




 



「君が…噂のタカヤ・シンドー?ミツエ村でフェンリル様の遣いを一瞬にして消し去ったという貴族…」





アリスから手を離し立ち上がり俺を凝視する男。


ルークか?ルークなのか?元彼なのか?



「アリス…知ってるのかい?この美しさの欠片も感じない男を」



初対面でなに貶してんだ!ベルサイユの〇〇が!



「最近まで一緒に行動していた変態よ」


アリスにまで貶される可哀想な僕…



「へえ…男の趣味が悪くなったんだね…アリス…」




なんか…こいつだけは…許せねー!!




「まあミツエ村も渓谷も、やったのはアリスだろう?ウラヌスの貴族ごときに、そんなサイは不可能だ」



「やったのは、その変態よ…」


確かに、渓谷ぶっ壊したのは俺の体だが…


『俺はこいつと違って変態ではないが』




「はっ!!ありえないよ!こんな貴族でありながら貧相な格好の男が」



「タカヤは異界の英雄だぞ!我輩の主を愚弄するとは許さんぞ!」


威嚇するように睨みつけるマックス




異界の英雄……なんだその痛々しい通り名は…






「人虎族の主だと!?それに異界の英雄?そんな童話の存在…それこそ、ありえない…」




「うん…なんか、お前腹立つから…ぶっ飛ばすな!!! マックスが!」


「応!!」





相手は獣族!自力で勝てるはずもない!虎の威を借りまくってやる!




返事と共に男との距離を一瞬で詰めるマックス


だが



男が操っているであろう花弁の舞う黒いドームが膨れ上がりマックスを飲み込んだ。


「ふむ…な…なんだ!体が重い!!」


マックスの足が止まり、動かない






「さすが人虎族、サイの力が弱い分【黒華園(こっかえん)】に耐えるのかい…倒れないだけ素晴らしいよ、だが身動きできまい」





まるで結界のような黒い霧のドームに入ると動きが封じられるのか…

それで、婦女暴行する外道が





「君はヒューマンだろ?黒華園はサイの力を狂わせ無力化する我が神フェンリル様が与えた祝福の力…ヒューマンは立つことすら叶わない…」





どんどん巨大化するドームに飲み込まれる、華が舞いVR空間に居るようだ




「ハーーーーッハッハ!!!どうだい?この美しい力は!身動き1つできまい!切り刻んで、この華を憎きヒューマンの血で染め上げてあげるよ♪」






「えっ?いや…べつに、なんとも無いですけど…」



ピョンピョン飛び跳ねてみる。



「なっ!!!!」



驚愕するベルサイユ



「ありえない…ありえない…」




「あたしの主にナニすんのよ!!」


狼狽えるベルサイユをマックスが根性で殴りかかる


惜しい、間一髪躱される。

だが何故オネー言葉!?





跳びながら後方に身を引きマックスと距離をとる



華が舞う中、アリスに駆け寄る


「アリス!!無事か!貞操は大丈夫か!」


「タカヤ…なんで…」


「話は後だ借りるぞ」


 

 



アリスの双剣のナタを一本鞘から抜く



重!!なんだこれ!両手持ちで構えるのが精一杯だ。



「あいつはキース……神狼会の残党よ…とにかく顔を狙って…」




そりゃ、あのキザ野郎の顔面殴って鼻血ブーにしてやりたいが……


獣族の運動能力に勝てるはずもないだろう。








うん………ハッタリだ…ハッタリで追い返すしか活路はない…



「力が弱かったか……これなら!!どうだーーー!!!!」


黒い霧の濃度が増し、華が狂ったように吹き荒れる。



笑みを浮かべていた余裕は消え失せ、血管切れんじゃねーかなって

顔のキース







だけど全く何ともありません…はい…







さすがのマックスも地面にひれ伏し身動きが取れないようだ。




「無駄だ、俺は異界から来た英雄タカヤ・シンドーだ、そんな技は児戯に等しい」




「次は俺の力を見てみるか?街ごと吹き飛ばすのは、避けたいところだが…」



掌をキースに向ける



「ぐっ」


動揺を隠せないキース、いいぞ!かっえっれ〜♪かっえっれ〜♪




「ここでアリスを逃すわけにはいかない…」



スラッと鞘から細身の剣を抜くキース…



ちょっ!待て!諦めろ馬鹿!



「剣技か…よかろう遊んでやる!」



はーーん!流れで戦うことになった!!!


両手持ちでナタを構えるが重すぎる!!


「なんだ!タカヤ・シンドーその構えは!ふざけているのかい?」



至って大真面目なんだよ!タコ!

金属バットのほうが、遥かに扱いやすいわ。



「隙だらけだよ…死ね!」


飛び込んでくるキース


何とかナタを振り上げて一刀両断!!のつもりが



「なんて遅さ…見え見え………な!!」



あまりの重さにフラフラと蹌踉めくが偶然、避けたキースにめがけて刃が当た………



キーーーーーーーーン


細身の剣でイナシながら、避け距離を取られる…




「なんだ!その太刀筋!読めない!!」



ナックルボールみたいなもんだ、振り下ろす本人も読めない



「まさか…失われた剣技!幻魔神剣!」



何やら都合の良い勘違いを…



「ほう…知っているのか……俺の世界の剣技を…」



少し掠ったのかキースの額から血が流れる


手を額に当て、血を確かめるキース



「遊びは終わりだ!次は外さない!!!」

外す未来しか見えない…



「血………」


立ち尽くして掌の血を眺めてるキース



「僕の……僕の美しい…顔に…血…」




なんか様子がおかしい




「あわあぁぁぁぁ傷!僕の顔に傷!!!!治癒を早く治癒をーーー跡が残る!!!治癒をーーー!!!」



慌てふためきながら跳び逃げていってしまった…



黒いドームが小さくなり消えていく



「う…ぬ…」


「なんで…」



アリスとマックスが蹌踉めきながら立ち上がる。



勝った……のか?

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